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CSTの科学者がリン酸化プロテオミクス研究の結果を発表

Cell Signaling Technologyの科学者が、がん細胞株におけるAkt-RSK-S6キナーゼシグナル伝達ネットワークを解析し、Science Signaling誌で報告しました

Cell Signaling Technology (CST) のSite Discoveryグループの科学者たちは、最近Science Signaling誌 (Moritz, A. et al. 2010. Sci Signal. 3, ra64) に論文を発表しました。この研究は、次のような細胞生物学における最も基本的な疑問に答えることを目的としていますー何ががん細胞の増殖と生存を駆動するのか?そして、標的の阻害剤を使用することで、その増殖を止めることができるか?この研究の成果により、肺がんに見られる異常なシグナル伝達機構についての重要な情報が明らかとなり、治療薬の標的候補が同定されました。これは、この疾患の患者に対する治療法の予測に役立つ可能性があります。

受容体型チロシンキナーゼ (RTK) は、多くの形態のがんにおいて、増殖や生存を促進し得るシグナル分子群の1つであり、発がんドライバーとしても知られています。RTKの下流には、一般的にがんの増殖や生存を担うと考えられているいくつかのコアシグナル伝達経路が存在します。これらには、PI3K/Akt、MAPK、mTORパスウェイが含まれます。これらの経路はすべてAkt、RSK、p70 S6などといったAGCキナーゼファミリーを活性化します。これらの基質タンパク質は、RxRxxS/Tモチーフ上にリン酸化を受けます。これまで、これらのセリン/スレオニンキナーゼの大規模なリン酸化プロテオーム解析は、アルギニンリッチなモチーフシーケンスに特異的な技術的問題のため行われていませんでした。

Science SignalingのPodcastで、シニアオーサーのMichael Comb博士が、この論文の成果について話しているインタビューをお聞きください。

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この研究では、3つのすでに特性が明らかにされている非小細胞肺がん (NSCLC) 細胞株を使用しており、これらの細胞株ではがん細胞の増殖と生存は次の3つの異なるRTKによって駆動されます:EGFR、c-Met、またはPDGFR。PhosphoScan®​などの実験的アプローチは、翻訳後修飾の定量的プロファイリングのため、タンデム質量分析と抗体ベースのペプチド濃縮を組み合わせたCST独自の方法論です。重要なステップの一つは、RxRxxS/Tモチーフ抗体の開発でした。これはその後、Akt、RSK、およびp70 S6キナーゼのリン酸化された基質を選択的に免疫沈降させる親和性試薬として使用されました。様々なRTK阻害剤をPI3K、mTOR、MEKに特異的な阻害剤とともに用いることで、これらのRTKの下流にあるシグナル伝達ネットワークのマッピングが可能になりました。この解析で、複合体の足場の形成、タンパク質の安定性、代謝、輸送、運動性に関与するタンパク質を含む、300以上もの既知および新規の基質が同定されました (下図参照)。

Akt-RSK-S6キナーゼシグナル伝達経路

詳細情報は、PhosphoSitePlus® (CST​が編集した翻訳後修飾に関するリソース) www.phosphosite.orgにてご覧ください。こちらでは、この研究で観察された基質リン酸化に関するすべての情報をご利用いただけます。