注目情報はこちら >>

チラミドによるシグナル増幅を利用した蛍光マルチプレックス免疫組織化学染色 (mIHC/Paraffin)

A. 溶液、試薬、キット

  1. キシレン
  2. エタノール、無水変性、病理学グレード (100%および95%)
  3. 脱イオン水 (dH2O)
  4. 抗原賦活化溶液:
    1. クエン酸: 10 mM クエン酸ナトリウム、pH 6.0

      1X クエン酸賦活化溶液を500 mL用意する場合:SignalStain® Citrate Unmasking Solution (10X) #14746 50 mLを精製水 (dH2O) 450 mLに加えてください。

    2. EDTA: 1 mM EDTA、pH 8.0

      1X EDTA賦活化溶液500 mLを用意する場合:SignalStain® EDTA Unmasking Solution (10X) #14747 50 mLを精製水 (dH2O) 450 mLに加えてください。

  5. 3%過酸化水素:
    1. 3% H2O2 を500 mL用意する場合:30% H2O2 50 mLを精製水 (dH2O) 450 mLに加えます。
  6. SignalStain® Antibody Diluent (#8112)
  7. 洗浄バッファー:1X Tris Buffered Saline with Tween 20 (TBST)
    1. 1X TBST 1L を用意する場合:10X TBST #9997 100 mLを精製水 (dH2O) 900 mLに加えてください。
  8. SignalStain® Boost IHC Detection Reagent (HRP rabbit #8114;HRP mouse #8125)
  9. TSA Plus Fluorescein kit (Akoya Biosciences, NEL741001KT)
  10. TSA Plus Cyanine 5 kit (Akoya Biosciences, NEL745001KT)
  11. TSA Plus Cyanine 3 kit (Akoya Biosciences, NEL744001KT)
  12. ストリッピング溶液: 10 mM クエン酸ナトリウム、pH 6.0
    1. 10 mMクエン酸溶液500 mLを用意する場合は:SignalStain® Citrate Unmasking Solution (10X) #14746 50 mLを精製水 (dH2O) 450 mLに加えてください。
  13. ProLong Gold Antifade Reagent with DAPI #8961

B. プロトコールの概要

チラミドシグナル増幅 (TSA) を含む蛍光mIHC法は、1つの組織切片で複数の標的タンパク質の同時検出を可能にする方法です。これは、シグナル増幅を促進するための一次抗体と二次抗体を使用した、間接的な免疫蛍光染色法による検出に基づいています。

下記に記載されたプロトコールでは、HRP標識二次抗体は、興味のある標的/抗原に特異的な非標識一次抗体に結合します。最終的には、HRP用の基質として機能する、蛍光標識チラミド分子を検出します。活性化されたチラミドは、標的タンパク質上または近隣のチロシン残基と共有結合を形成し、抗原の部位に恒久的に沈着します。これにより、抗原部位に沈着した蛍光シグナルを保持しながら、一次/二次抗体ペアの段階的なストリッピングを可能にします。そしてこのプロセスにより、連続した複数ラウンドの染色が可能になります。この方法の主なメリットの1つは、同じ免疫動物の複数の一次抗体を、クロストークを懸念することなく使用できることです。これにより、複数抗体を組み合わせたマルチプレックスパネルのデザインが簡単になり、選択の幅も広がります。

C. 重要なヒント

チラミドを使用する蛍光マルチプレックスIHC実験の成功を左右する検討事項がいくつかあります。

一次抗体の濃度: マルチプレックスパネル内の各一次抗体の最適希釈率は、検討結果に基づいて決定してください。チラミド沈着による蛍光シグナルの増幅により、メーカーが推奨する希釈率とはしばしば大きく異なることがあります。適切な強度を持つ蛍光色素を使用して各抗体の力価測定を行い、マルチプレックスで用いるの個々の抗体で最適化を行うことを強くお勧めします。

順番の最適化: マルチプレックスパネル内の抗体を組織切片に反応させる順番を最適化し、複数回の加熱処理により標的エピトープの完全性が損なわれないようにすることが重要です。蛍光シグナルがパネル内の他の標的の染色に影響を受けないように、適切な強度の蛍光色素を使用して、マルチプレックスで用いるそれぞれの一次抗体の最適化を実施することをお勧めします。

抗体と蛍光色素分子の組み合わせ: 一般的には、最も発現の低い標的を検出する抗体には、最も明るい蛍光色素分子を使用することが推奨されます。最良のシグナル強度とS/N比をパネルの各標的で得るためには、最適化された一次抗体とそれぞれに使用可能な各蛍光色素の組み合わせを検証することをお勧めします。

D. プロトコール

  1. スライドのベーキング (オプション)
    1. スライドを水平に保ったまま、60°Cで1.5時間インキュベートしてください。
    2. スライドを水平から垂直に再配置し、60°Cで30分間さらにインキュベートしてください。

    注意:このステップで、パラフィンワックスを融解させます。

  2. 脱パラフィン/水和
    1. キシレンで切片を各5分間、3回インキュベートしてください。
    2. 100%エタノールで切片を各10分間、2回インキュベートしてください。
    3. 95%エタノールで切片を各10分間、2回インキュベートしてください。
    4. 精製水 (dH2O) で切片を各5分間、2回洗浄してください。

    注意:すべての洗いの操作は、室温で穏やかな振盪をしながら実施してください。

  3. 抗原賦活化

    注意:マルチプレックスパネルでの各一次抗体に使用する最適な賦活化溶液は、製品データシートに推奨されていますのでご確認ください。EDTA賦活化溶液の使用が推奨されている抗体を含むマルチプレックスパネルの場合は、賦活化溶液としてEDTAを使用してください。

    クエン酸の場合:

    1. 電子レンジで、スライドを10 mMのクエン酸ナトリウムバッファーpH 6.0中で沸騰させてください。
    2. 沸点前温度で10分間維持してください。
    3. 実験台でスライドを室温で30分間冷却してください。

    EDTAの場合:

    1. 電子レンジで、スライドを1 mMのEDTA pH 8.0中で沸騰させてください。
    2. 沸点前温度で15分間維持してください。その後の冷却は必要ありません。
  4. クエンチング
    1. 精製水 (dH2O) で切片を各5分間、3回洗浄してください。
    2. 3%過酸化水素で切片を10分間インキュベートしてください。
    3. 精製水 (dH2O) で切片を各5分間、2回洗浄してください。
    4. 切片を1X TBSTで5分間洗ってください。
  5. 抗体染色

    注意:組織切片をあらかじめブロッキングをすることもできます (必ずしも必要ではありません)。一次抗体の最適な希釈率は、条件検討により決定する必要があります。

    1. 一次抗体をSignalStain® Antibody Diluent #8112で希釈してください。
    2. 100-400 μLを各切片に加えて、加湿チャンバー内で室温で60分間インキュベートしてください。
    3. 一次抗体とインキュベート中、SignalStain® Boost Detection Reagent (HRP rabbit、#8114あるいはHRP mouse、#8125) を室温に戻してください。
    4. 抗体液を除去し、1X TBSTで切片を各3分間、3回洗ってください。
    5. 組織切片を、その一次抗体の動物種に合わせたSignalStain® Boost IHC detection Reagent (HRP rabbit #8114あるいはHRP mouse #8125) 数滴 (100-400 μL) で覆ってください。
    6. 加湿チャンバー内で、暗所、室温で30分間インキュベートしてください。
    7. スライドを1X TBSTで、穏やかに振盪しながら、暗所で3分間の洗いを2回繰り返してください。
  6. チラミドシグナル増幅 (TSA)

    注意:適切な蛍光標識TSA Plus amplification reagentを選ぶためには、標的の発現レベルと蛍光色素の蛍光強度を考慮することが重要です。一次抗体と蛍光色素の最適な組み合わせを予め決めておく必要があります (上記の重要なヒントをご覧ください)。

    1. 蛍光標識されたTSA Plus amplification reagentをメーカーの指示に従って希釈してください。
    2. スライドあたり100-400 μLアプライし、加湿チャンバー内で、暗所、室温で10分間インキュベートしてください。
    3. スライドを1X TBSTで、穏やかに振盪しながら、暗所で3分間の洗いを2回繰り返してください。
  7. 連続染色
    1. 2つ以上の標的を検出する多重染色を行う場合:
      1. ストリッピング (ステップ8) へと進んでください。
    2. マルチプレックスパネルの全ての染色を完了済みの場合、あるいは単一標的を検出する単色アッセイの場合:
      1. 封入 (ステップ9) へと進んでください。
  8. ストリッピング
    1. 電子レンジで、スライドを10 mMのクエン酸ナトリウムバッファーpH 6.0中で沸騰させてください。
    2. 沸点前温度で10分間維持してください。
    3. 実験台でスライドを室温で30分間冷却してください。

      異なるチラミド蛍光標識を使用した抗体染色 (ステップ5) へと進んでください。

  9. 封入

    切片にProLong Gold Antifade Reagent with DAPI #8961を加えて、カバーガラスで封入してください。

    注意:スライドをスペクトルライブラリーの作成目的で使用する場合は、ProLong Gold Antifade Reagent #9071を使用する必要があります。

更新:2016年4月