elF2翻訳開始複合体は、様々なストレス関連シグナルを統合して、全般的な翻訳と、特定のmRNAに特異的な翻訳の両方を制御します。許容環境下では、eIF2はGTPおよびMet-tRNAiと結合してTernary complex (TC) を形成します。その後、40Sリボソームサブユニット、eIF1、eIF1A、eIF5、eIF3と結合して43S pre-initiation complex (PIC) を形成します。43S PICはmRNAのUTRをスキャンしてAUG開始コドンを探します。AUGが認識されると、eIF2はGTPase活性化タンパク質であるeIF5の助けを得てGTPをGDPに加水分解し、mRNAから解離します。これによって60Sリボソームサブユニットの結合とポリペプチド鎖の伸長が可能になります。eIF2はGDIとして作用するeIF5の存在下でGDPとの結合を維持します。次の翻訳を開始するには、eIF2BがGDI displacement factor (GDF)、およびGuanine exchange factor (GEF) の両方の機能を有し、eIF2でのGDPとGTPの交換を可能にする必要があります。このステップは厳密に調節されたステップで、eIF2αのリン酸化は、eIF2Bを隔離するためにeIF2をドミナントネガティブ複合体として機能させることで、ヌクレオチド交換を阻害します。このeIF2αのリン酸化は4つのストレス活性化型キナーゼ、すなわちPKR (dsRNA)、PERK (ERストレス)、GCN2 (アミノ酸飢餓)、およびHRI (ヘム欠乏) といった多種多様なファミリーによって誘導されます。その結果、eIF2α-GDPが増加して、TCの利用が制限され、全体的なタンパク質合成量が低下し、一方で転写因子であるATF-4やCHOPなどといった、ストレス特異的なmRNA転写産物の翻訳が促進されます。
本パスウェイ図を監修していただいたRachel Wolfson博士に深く感謝致します。
作成日:2002年1月
改訂日:2014年6月