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T細胞シグナル伝達と免疫表現型検査

Tリンパ球の発生

T細胞は細胞性免疫の中心的な役割を担う細胞であり、骨髄の造血幹細胞に由来するリンパ球前駆細胞から発生します。

T細胞はCD3の発現を指標に特定することができ、胸腺 (Thymus、T細胞という名前の由来) 内で多様なサブタイプが発生します。T細胞は胸腺で成熟し、細胞表面に抗原を認識する受容体 (TCR:T細胞受容体) を発現するようになります。成熟の過程で自己抗原に強い親和性をもつ細胞は除去され、非自己抗原を高度かつ選択的に認識する細胞が残ります。成熟したT細胞は血流に放出され、以下のようなクラスのT細胞になります。

  • ヘルパーT細胞 (CD4+):ヘルパーT細胞はMHCクラスIIに提示された抗原ペプチドを認識し、多様なサイトカインを放出します。
  • 細胞傷害性T細胞 (CD8+):細胞傷害性T細胞 (キラーT細胞) はウイルスに感染した細胞や腫瘍細胞を認識して傷害します。
  • 制御性T細胞:制御性T細胞 (Tregs) の主な仕事は、自己抗原への寛容性を維持し、エフェクターT細胞の機能と増殖を制限することです。
  • ナチュラルキラーT細胞:NK細胞はT細胞マーカーを持たない細胞傷害性リンパ球の一種であり、第3のリンパ球と言われています。細胞傷害性T細胞と同様にグランザイムとパーフォリンを含む微小顆粒を放出します。パーフォリンは標的細胞表面に孔を形成し、グランザイムはこの孔を通じて標的細胞に侵入します。グランザイムは細胞内タンパク質を分解してアポトーシスを誘導し、ウイルスに感染した細胞や腫瘍細胞を傷害します。NKT細胞はT細胞のうちNK細胞のマーカーを発現する細胞で、第4のリンパ球と言われています。

T細胞の活性化とT細胞受容体 (TCR) シグナル伝達

T細胞は細胞表面のTCRに病原性抗原が結合することで活性化します。各々の細胞のTCRは異なる抗原に親和性を持っており、T細胞1つ1つが対処できる抗原は高度に専門化されています。

TCRに抗原が結合すると、一連の細胞内シグナル伝達経路が活性化され、T細胞の活性化が起こります。TCRを発現するT細胞は、このように抗原を認識することで初めて自己増殖します (したがって、同一抗原を認識するT細胞の数が増えます)。こうして感染した細菌や寄生生物など有害な抗原に対処が可能な細胞のプールを拡大します。

CSTは、WB、IF/IHC、IP、細胞外/細胞内フローサイトメトリーでT細胞集団を正確かつ再現性よく区別できるよう、専門的に検証した抗体を豊富に取り揃えています。

T細胞の免疫表現型解析

特異的な抗体を用いることで、不均一な免疫細胞の集団からT細胞の個々のサブタイプを区別することができます。このようにして免疫細胞のサブタイプを区別する手法は、免疫表現型解析と呼ばれています。

T細胞は細胞表面に特異的な受容体を発現し、特有のサイトカイン発現プロファイル、特有のタンパク質リン酸化プロファイルを持っているため、これらを特異的抗体で認識することで区別します。特異的な抗体で認識したこれらのマーカーは、酵素や蛍光色素で標識することができます。免疫表現型解析の最初のアプローチとして、IHCでCD3の発現を検出することでT細胞を他の細胞と区別して観察することができます。T細胞はさらに、サブクラスに特異的なマーカーを認識する抗体を用いて詳細に解析することが可能です。

CD3 85061 ヒト乳がん

CD3ε (D7A6E) XP® Rabbit mAb #85061: パラフィン包埋ヒト乳がん組織をIHCで染色し解析しました。​​#85061を用いてCD3を検出することで、腫瘍組織に浸潤したT細胞を観察しました。