次の製品の専用プロトコールです: SimpleChIP® Enzymatic Chromatin IP Kit (Agarose Beads) #9002.
キットに含まれている試薬:
キットに含まれない試薬:
! | この ! マークは、免疫沈降 (IP prep) のサンプル数に応じて量の変更する重要ステップであることを意味します。免疫沈降1回分 (1 IP prep) は、4 x 106個の培養細胞に相当します。 |
!! | この !! マークは、操作を進める前にバッファーを希釈する重要なステップであることを意味します。 |
SAFE STOP | これは、実験操作を中断する必要がある場合に、プロトコールを安全に中断できるポイントを示します。 |
最適なChIPの結果を得るため、各免疫沈降に対し約4 x 106個の細胞を使用します。ポジティブコントロールとネガティブコントロールを含めると、少なくとも12 x 106個の細胞が必要です。HeLa細胞の場合、免疫沈降1回分は増殖培地20 mLで90%コンフルエントに培養した15 cmディッシュの半分量に相当します。また、クロマチン断片化と濃度の分析 (セクションIII) のために、1サンプルを追加で用意する必要があります。さらに、細胞種ごとに培養ディッシュを1枚余分に用意し、血球計算盤またはセルカウンターを用いて細胞数を計測することを推奨します。クロマチンの断片化条件の最適化 (Appendix A) が必要な場合は、追加で5本のクロマチンサンプルを用意してください。
(!) 全てのバッファーの量は、使用する15 cmの組織培養ディッシュ (または20 mLの浮遊細胞) の枚数に応じて、比例的に増やす必要があります。
(!) すべてのバッファーの量は、免疫沈降 (IP prep) のサンプル数に応じて比例的に増やす必要があります。
(!!) 重要: 一旦溶液にした1M DTTは、-20℃で保存してください。
注意:最適なChIPの結果を得るためには、クロマチンのサイズと濃度を適切にすることが非常に重要です。クロマチンを断片化しすぎると、定量PCRのシグナルが消失する可能性があります。一方で、クロマチンの断片化が不十分な場合、バックグラウンドシグナルが上昇し分解能が低下します。また、免疫沈降に用いるクロマチン量が少なすぎると、定量PCRのシグナルが低下する原因になります。クロマチンの断片化を最適化するためのプロトコールは、Appendix Aに記載されています。
最適なChIPの結果を得るため、免疫沈降1回あたり約5 - 10 μgの断片化されたクロスリンククロマチン (セクションIIIに記載) を使用してください。これは、概ね4 x 106個の培養細胞から調製されたIP prep 100 μLに相当します。一般的には、抗体を加える前にクロマチンサンプル100 μLを1X ChIP Buffer 400 μLで希釈しますが、免疫沈降1回あたり100 μL以上必要な場合は下記のようにクロマチンサンプルを希釈する必要はありません。希釈しない場合も、クロマチンサンプルに直接抗体を加えることでクロマチン複合体の免疫沈降ができます。
(!) すべてのバッファーの量は、免疫沈降の回数に応じて比例的に増やす必要があります。
注意:Cell Signaling Technologyのほとんどの抗体は、免疫沈降1回あたり1-2 μgを使用することで適切にワークします。濃度の異なる複数の抗体がある場合は、最も高い抗体濃度にネガティブコントロールNormal Rabbit IgG #2729の濃度を合わせて使用することをお勧めします。
注意:ChIP-Grade Protein G Agarose Beadsは、ソニケーション処理したサケ精子DNAでブロッキングされているため、ChIP-Seqでは使用できません。
(!) すべてのバッファーの量は、免疫沈降の回数に応じて比例的に増やす必要があります。
プライマーの長さ: | 24塩基 |
Tm: | 60°C |
GC: | 50% |
アンプリコンのサイズ: | 150-200 bp (通常のPCR) |
80-160 bp (定量的リアルタイムPCR) |
試薬 | PCR反応1回分の分量 (18 μL) |
---|---|
Nuclease-free H2O | 12.5 µL |
10X PCR Buffer | 2.0 µL |
4 mM dNTP Mix | 1.0 µL |
5 µM RPL30 プライマー | 2.0 µL |
Taq DNA Polymerase | 0.5 µL |
a. | 初期変性 | 95℃ | 5分間 |
b. | 変性 | 95℃ | 30 秒間 |
c. | アニーリング | 62℃ | 30 秒間 |
d. | 伸長反応 | 72℃ | 30 秒間 |
e. | ステップb-dを繰り返し、計34サイクル反応させてください。 | ||
f. | 最終伸長反応 | 72℃ | 5分間 |
試薬 | PCR反応1回分の分量 (18 μL) |
---|---|
Nuclease-free H2O | 6 µL |
5 µM RPL30 プライマー | 2 µL |
SimpleChIP® Universal qPCR Master Mix #88989 | 10 µL |
a. | 初期変性 | 95℃ 3分間 |
b. | 変性 | 95℃ 15秒間 |
c. | アニーリングおよび伸長: | 60℃ 60秒間 |
d. | ステップb - cの繰り返し (合計40サイクル) |
Percent Input = 2% x 2(C[T] 2%Input Sample - C[T] IP Sample)
C[T] = CT= PCR反応の閾値となるサイクル
クロスリンクしたクロマチンDNAを150-900 bpの長さに断片化する場合の最適条件は、断片化に用いる細胞数に対するMicrococcal Nucleaseの比率に大きく依存します。使用予定の細胞タイプで断片化の最適条件を決定するためのプロトコールを以下に示します。
問題 | 考えられる原因 | 推奨される対処法 |
---|---|---|
1. 断片化されたクロマチンの濃度が低すぎる。 |
細胞数が不十分、あるいは断片化後の細胞核の破砕が不完全。 |
クロマチンサンプルのDNA濃度が50 μg/mLに近い場合は、1回の免疫沈降あたり少なくとも5 μgとなるようにクロマチン調製液を追加して、プロトコールに従って実験を続けてください。 |
クロスリンクの前に、カウント用に別に用意したディッシュで細胞数を計測し、正確な細胞数を確認してください。さらに、顕微鏡下でソニケーション前後の細胞核を観察し、核の完全な破砕を確認してください。 |
||
2. クロマチンの断片化が不十分で、断片が大きすぎる (900 bpを超える)。 |
細胞のクロスリンクが過剰。10分間以上クロスリンクを行うと、クロマチンの断片化を阻害する可能性がある。 |
ホルムアルデヒド濃度を一定にして、時間経過に伴う変化を確認してください。クロスリンク時間を10分以下に短縮してください。 |
細胞数が多すぎる、またはMicrococcal Nuclease量が足りない。 |
クロスリンクの前に別に用意したプレートを用いて正確な細胞数を計測してください。そして、APPENDIX Aを参照してクロマチン断片化の最適化を行ってください。 |
|
3. クロマチンが過剰に断片化され、DNA断片のサイズが小さすぎる (150 bpのモノヌクレオソーム1個分の断片ばかりが検出される)。ヌクレオソーム1個分のDNAの長さになるまでクロマチンを完全に断片化すると、特に長さが150 bp以上のアンプリコンの場合、PCRでシグナルが減弱する可能性がある。 |
クロマチン断片化に加えた細胞数が不十分、またはMicrococcal Nuclease量が多すぎる。 |
クロスリンクの前に別に用意したプレートを用いて正確な細胞数を計測してください。そして、APPENDIX Aを参照してクロマチン断片化の最適化を行ってください。 |
4. インプットDNAのPCR反応で産物が得られない、または得られる量が非常に少ない。 |
PCR反応に使用したDNA量が十分でない、またはPCR条件が最適でない。 |
PCR反応により多くのDNAを使用するか、サイクル数を増加させてください。 |
PCRの増幅領域が、ヌクレオソームフリー領域に及んでいる。 |
クロスリンク後に断片化したクロマチンから精製したDNAを用いて、プライマーセットに対する最適なPCR条件を検討してください。アンプリコンの長さが150 bp以下になるように、別のプライマーセットを設計してください (セクションVIIのプライマー設計に関する推奨事項を参照してください)。 |
|
IPに加えたクロマチンが十分でない、またはクロマチンの断片化が過剰。 |
最適なChIP結果を得るために、免疫沈降1回あたりクロマチン5-10 μgを加えてください。上記1、3の対応策も参照してください。 |
|
5. ポジティブコントロールであるHistone H3抗体の免疫沈降サンプルとRPL30プライマーを用いたPCR反応で増幅が起こらない。 |
免疫沈降に加えたクロマチンまたは抗体が十分でない、または免疫沈降のインキュベーション時間が短すぎる。 |
各免疫沈降反応にクロマチン5-10 μgと抗体10 μLを加えたことを確認して一晩インキュベートし、Protein G Beadsを加えてさらに2時間インキュベートしてください |
Protein G Beadsからのクロマチンの溶出が不十分である。 |
Protein G Beadsからのクロマチンの溶出には65℃が最適です。頻繁に撹拌してBeadsの懸濁状態を保ってください。 |
|
6. ネガティブコントロールのRabbit IgGの免疫沈降産物と、ポジティブコントロールのHistone H3抗体の免疫沈降産物で、PCRでの増幅が同程度になる。 |
免疫沈降に使用したクロマチン量が過剰、または十分でない。あるいは、免疫沈降に抗体を加えすぎている。 |
各免疫沈降反応に対して加える量は、クロマチン15 μg、Histone H3 antibody 10 μLを上限としてください。Normal rabbit IgG量を一回のIPあたり1 μLまで減らしてください。 |
PCR反応に加えたDNAが多すぎる、またはサイクル数が多すぎる。 |
PCR反応に加えるDNAを減らすか、PCRのサイクル数を減らしてください。PCRの線形増幅領域内でPCR産物を解析することが非常に重要です。そうしなければ、増幅前のDNA量の差が正確に測定できません。 |
|
7. 解析したいターゲットの抗体の免疫沈降産物で、PCR反応による増幅が起こらない。 |
PCR反応に加えたDNA量が十分でない。 |
PCR反応により多くのDNAを使用するか、サイクル数を増加させてください。 |
免疫沈降に使用した抗体量が十分でない。 |
通常は抗体1-5 μgを免疫沈降に加えます。しかし、実際に必要な量は抗体によって大きく異なります。免疫沈降反応液に加える抗体の量を増やしてください。 |
|
免疫沈降ではワークしない抗体である。 |
別の抗体を検討してください。 |
更新:2008年3月
改訂日:2018年6月