AMP-activated protein kinase (AMPK) は、細胞エネルギーの恒常性維持における主要な制御因子として重要な役割を担っています。AMPKは、低血糖や低酸素状態、虚血、熱ショックなど、細胞へのATP供給を枯渇させるストレスに応答して活性化されます。触媒作用を持つαサブユニットと、制御作用を持つβおよびγサブユニットから成る、ヘテロ三量体として存在します。AMPがγサブユニットへ結合するとアロステリックに複合体が活性化され、αサブユニットの活性化ループにおいて、上流の主要なキナーゼLKB1からAMPK (Thr172) へのリン酸化を受けやすくなります。AMPKのThr172は、AdiponectinやLeptinなどといった代謝ホルモンの刺激によって細胞内カルシウム濃度が変化すると、それに反応してCAMKK2によって直接リン酸化されることもあります。
低ATPレベルに反応する細胞のエネルギーセンサーとして、AMPKの活性化は、脂肪酸酸化やオートファジーなど、細胞のATP供給を補充するシグナル伝達経路を正に制御します。また、糖新生、脂質およびタンパク質合成など、ATPを消費する生合成プロセスは負に制御します。AMPKは、これらのプロセスに直接関与する多数の酵素の直接的なリン酸化によって制御しています。また、転写因子、転写コアクチベーター、転写コリプレッサーをリン酸化することで、代謝の転写制御も実行します。
AMPKは、脂質およびグルコース代謝の両方で、中心的な制御因子としての役割を担うことから、II型糖尿病や肥満、がんの治療における治療標的となる可能性があります。AMPKはまた、mTORやSirtuinとの相互作用を介して、様々な生物種で老化の重要な制御因子として関連づけられています。
この図をレビューして下さった、ソーク研究所 (カリフォルニア州、ラホヤ) のReuben Shaw教授に感謝いたします。
作成日:2006年4月
改訂日:2019年2月