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Histone H3のエピジェネティックライターとイレイサー

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Histone H3のエピジェネティックライターとイレイサー

図の詳細:

エピジェネティックな制御タンパク質は、DNAの複製、転写、DNA修復、組換え、染色体分離などの制御機構へDNA配列が移行していく経路をコントロールし、遺伝子発現の制御に重要な役割を果たします。エピジェネティック制御の一つに、ヒストンタンパク質のアミノ酸残基に起こる翻訳後修飾 (PTM) があり、それらは様々なクラスの酵素 (ライター・イレイサータンパク質と呼ばれる) によって引き起こされます。ここでは、クロマチン構造と遺伝子発現の制御に重要な役割を果たすHistone H3のPTMに注目してみましょう。Histone H3は、アセチル化、メチル化、およびリン酸化を含む多くのPTMによって修飾されます。これらのPTMはHistone H3上の異なるアミノ酸残基で起こり、核の構造化、クロマチン構造化、およびクロマチン結合タンパク質 (リーダータンパク質と呼ばれる) のリクルートなどの多様なプロセスを調節します。

リジン残基のアセチル化は、Hisone lysine acetyltransferase (HAT) によって媒介され、Histone deacetylase (HDAC) によって取り除かれます。Histone H3のアセチル化されたリジン残基には、Lys4、9、14、18、23、27、36、56​などがあります。アセチル化によりHistone H3の正電荷は中和され、DNA結合タンパク質がDNAにアクセスしやすくなり、結果として遺伝子発現が活性化されます。さらに、アセチル化されたリジン残基は、ブロモドメインおよびYEATSドメインを含むリーダータンパク質の結合ドメインを生成します。

ヒストンのリジンのメチル化は、Lysine methyltransferase (KMT) によって媒介され、Lysine demethylase (KDM) により取り除かれます。Histone H3のメチル化されたリジン残基には、Lys4、9、27、36、79​などがあります。各リジン残基は、モノメチル化、ジメチル化、またはトリメチル化され、各メチル化状態は異なる機能を有すると考えられます。メチル化はヒストンの電荷には影響を与えません。代わりに、リーダータンパク質やその関連タンパク質複合体の結合を制御します。例えば、Polycomb repressor complex2​ (PRC2) によるHistone H3のLys27のトリメチル化 (H3K27me3) は、PRC1複合体の結合部位を形成し、いずれも転写を抑制する凝集したクロマチンの形成に寄与します。他方、H3K4me3は、転写の活性化に寄与する複数のリーダータンパク質が結合する修飾です。メチル化されたリジン残基は、クロモドメイン、MBTドメイン、WD40ドメインおよびPHDフィンガーを含むリーダータンパク質の結合ドメインになります。

Arg2、17、26などのアルギニン残基は、Protein arginine methyltransferase (PRMT) によりモノメチル化またはジメチル化 (対称性または非対称性) され、これにより遺伝子は活性化または抑制されます。さらに、メチル化アルギニン残基は、Protein arginine deaminase (PADI) タンパク質によってシトルリンに変換されます。メチル化されたアルギニン残基は、Tudorドメイン、PHDフィンガー、およびWD40ドメインを含むリーダータンパク質の結合部位を生成します。

最後に、Histone H3は、キナーゼによってセリン、スレオニン、およびチロシン残基がリン酸化され、ホスファターゼによって脱リン酸化されます。リン酸化されたアミノ酸残基はHistone H3のN末端テール部分に集中する傾向があり、アセチル化のようにヒストンの正電荷を減少させます。さらに、リン酸化されたアミノ酸残基は、14-3-3ドメインを含むリーダータンパク質の結合部位を生成するか、または他のリーダータンパク質の結合部位をマスクする作用があります。例えば、HP1クロモドメインタンパク質のH3K9me3への結合は、H3S10Phosによって阻害されます。Histone H3のSer10のリン酸化は、Thr3、Thr11およびSer28とともに、主に有糸分裂や減数分裂中の染色体凝縮と関連しています。特に、Ser10のリン酸化は、有糸分裂期の細胞のマーカーとして頻繁に使用されます。しかし、Ser10およびSer28のリン酸化は、前初期遺伝子の転写活性化においてもマイナーな役割を果たします。

参考文献:

本パスウェイをレビューして下さった、ハーバード大学医学大学院、マサチューセッツ総合病院のJonathan Whetstine博士に感謝いたします。

作成日:2018年3月

アセチル化酵素
アセチル化酵素
代謝酵素
代謝酵素
アダプター
アダプター
メチルトランスフェラーゼあるいはGタンパク質
メチルトランスフェラーゼあるいはGタンパク質
アダプター
アポトーシス/オートファジー調節因子
ホスファターゼ
ホスファターゼ
細胞周期の調節因子
細胞周期の調節因子
タンパク質複合体
タンパク質複合体
脱アセチル化酵素あるいは細胞骨格タンパク質
脱アセチル化酵素あるいは細胞骨格タンパク質
ユビキチン/SUMOリガーゼあるいは脱ユビキチン化酵素
ユビキチン/SUMOリガーゼあるいは脱ユビキチン化酵素
成長因子/サイトカイン/発生調節タンパク質
成長因子/サイトカイン/発生調節タンパク質
転写因子あるいは翻訳因子
転写因子あるいは翻訳因子
GTPase/GAP/GEF
GTPase/GAP/GEF
受容体
受容体
キナーゼ
キナーゼ
その他
その他
 
直接的プロセス
直接的プロセス
一時的なプロセス
一時的なプロセス
転座プロセス
転座プロセス
刺激型修飾
刺激型修飾
阻害型修飾
阻害型修飾
転写修飾
転写修飾