CSTのシグナル伝達パスウェイ図で個々のタンパク質名をクリックすると、それに関連した研究リソースや製品情報を検索することができます。さらに、教育・研究のために、パスウェイ図をダウンロードすることも可能です。
グルコースは体のほとんどの細胞の主要なエネルギー源です。グルコース代謝についての研究は、細胞の増殖、成長、生存、そして最近では腫瘍増悪に関する研究の中核をなします。グルコースの恒常性の維持は、ホルモンによって調節される重要な生理学的プロセスです。食事中に血中グルコース濃度が上昇すると、グルコースセンシング経路を介した膵β細胞からのインスリン放出が促進されます。インスリンは、インスリン受容体 (IR) を介するシグナル伝達カスケードにより、血中から骨格筋と脂肪組織へのグルコースの取り込みを促進します。インスリンがIRに結合することにより、Insulin Receptor Substrate (IRS) タンパク質およびそれに続くPI3K/Akt経路とErk1/2経路のシグナル伝達が活性化されます。さらに、Glut4小胞の移行、グルコースの取り込み、細胞増殖、および細胞生存が引き起こされます。インスリンシグナル伝達の異常は、糖尿病、肥満、そしておそらくアテローム性動脈硬化症、さらに神経変性疾患をもたらす可能性もあります。
細胞内ATP濃度が低下したグルコース欠乏の状態においては、セリン/スレオニンキナーゼであるAMPKが活性化されます。AMPKはエネルギーセンサーで、低グルコース、ヒートショック、低酸素、および虚血などの細胞ストレスや環境ストレスにより、AMP/ATP比が上昇することで活性化されます。AMPKが活性化されると、細胞内のATP供給を補充するシグナル伝達経路が正に調節されます。例えば、AMPKの活性化は、Glut4の転写および移行の両方が促進され、インスリン刺激によるグルコースの取り込みが増加します。さらに、AMPKの活性化はACCの阻害やPFK2の活性化を介して、脂肪酸酸化および解糖などの異化プロセスを刺激します。AMPKは、mTORC2、グリコーゲン合成酵素、SREBP-1、TSC2などのATP消費プロセスの中核となるタンパク質群を負に調節することによって、糖新生、グリコーゲン合成、脂質合成、およびタンパク質合成を負に制御します。
この分野では最近、がん代謝に注目が集まっています。1920年代、Otto Warburg氏は、通常酸素欠乏下でのみ観察される解糖および乳酸産生の上昇が、腫瘍細胞では酸素存在下でも頻繁に見られることを確認しました。この現象は、のちにワールブルク効果と名付けられました。Akt、Erk1/2、およびAMPKのようないくつかのシグナル伝達経路は、鍵となる解糖酵素PFKおよびPKM2に収束し、ATP合成活性や直接的なATP産生を制御します。転写因子であるc-Mycおよびp53もまた、グルタミン代謝、脂質代謝およびペントースリン酸経路を制御することにより、このプロセスに重要な役割を果たします。それにより、腫瘍細胞の急速な増殖をサポート・維持するために必要な細胞成分 (核酸、脂質、タンパク質、クレブス回路中間体) を供給します。