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GPCR、カルシウム、cAMP

GPCR、カルシウム、cAMP

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カルシウム、cAMP、および脂質

プロテインキナーゼC (PKC) ファミリーメンバーは、分泌、遺伝子発現、細胞増殖、炎症応答など、きわめて多くの細胞応答を制御します。基本的なタンパク質構造としては、カルボキシ末端のキナーゼドメインとアミノ末端の制御領域がヒンジ領域で結合した構造をしています。PKC酵素は自己抑制的な偽基質ドメインを含み、これが触媒ドメイン配列に結合してキナーゼ活性を阻害しています。セカンドメッセンジャー活性化因子が結合すると、PKC酵素が細胞膜に局在化し、そこでアロステリック変化により触媒配列から擬基質配列が放出されます。PKC制御領域の差異によって、様々なセカンドメッセンジャーの結合が可能になり、この差に基づいてPKCファミリーは3つに大別されます。従来型 (conventional) PKC酵素 (cPKC:アイソフォームPKCα、PKCβ、PKCγ) には、機能性のC1およびC2の調節ドメインが含まれています。cPKCの酵素活性には、C1ドメインへのdiacylglycerol (DAG) とリン脂質の結合、およびC2ドメインへのCa2+の結合が必要です。新規の (novel) PKC酵素 (nPKC:アイソフォームPKCδ、PKCε、PKCη、PKCθ) もまた、その活性化にDAGの結合を必要としますが、Ca2+センサーとしては機能しない新規のC2ドメインを有しています。遠縁に関係するプロテインキナーゼDタンパク質は、新規のPKCがDAGには反応するもののCa2+刺激には反応しないため、新規のPKCとよく会合します。非定型 (atypical) PKC酵素 (aPKC:アイソフォームPKCζ、PKCι/λ) には、非機能性のC1ドメインがありますが、C2ドメインはありません。すなわち、aPKCの活性化にはセカンドメッセンジャーを必要としません。

PKC酵素の活性化には、一連のリン酸化イベントと、さらなるタンパク質との会合、およびアロステリック変化が必要です。すべてのアイソフォームは、触媒ドメインの活性ループおよびターンモチーフ内の保存されたサイトのリン酸化を必要とします。ただし、従来型と新規のPKC酵素は、触媒領域の疎水性モチーフ内のサイトをさらにリン酸化する必要があります。翻訳後、新生PKCは細胞膜に局在し、そこでHsp90およびCdc37と会合します。これらのコシャペロンのキナーゼドメインへの結合は、PDK1による活性ループ部位のリン酸化より先に起こります。セカンドメッセンジャーは、細胞質内酵素を細胞膜にリクルートすることによってPKCを活性化し、これによりアロステリック変化により擬基質ドメインが触媒ドメイン配列から放出されます。

さらなるリン酸化イベントにより、タンパク質相互作用、安定性、および局在化をコントロールすることでPKC活性が制御されます。例えば、PKCδの刺激特異的なリン酸化は、PKCδの分解、切断、または活性化を引き起こします。PKCδは、DNA損傷および酸化的ストレスに応答して、p53経路の活性化や、Akt、Cdk1、およびCyclin D1といった生存促進性タンパク質の阻害によってアポトーシスを促進します。TNF経路を介したシグナル伝達では、PKCδがAkt、NF-κB、およびMEK経路を活性化するため、生存促進性の細胞応答が促進されます。

参考文献:

  1. Newton AC (2010) Protein kinase C: poised to signal. Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 298(3), E395–402.
  2. Newton PM, Messing RO (2010) The substrates and binding partners of protein kinase C epsilon. Biochem. J. 427(2), 189–96.
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  4. Basu A, Pal D (2010) Two faces of protein kinase Cδ: the contrasting roles of PKCδ in cell survival and cell death. ScientificWorldJournal 10, 2272–84.
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