注目情報はこちら >>

神経伝達物質と受容体、トランスポーター

神経伝達とは

ニューロンは中枢神経系 (CSN) を構成する細胞の1つであり、神経伝達と呼ばれるプロセスで電気化学シグナルの授受を担っています。ニューロンは他のニューロンからのシグナルを受け取り、別のニューロンに受け渡す特別な構造を持ちます。すなわち、樹状突起で他のニューロンからのシグナルを受け取り、軸索から別のニューロンにシグナルを送ります。

ニューロンは、放出するシグナルのタイプによって興奮性ニューロンと抑制性ニューロンに分類されます。これらのシグナルはそれぞれ、標的ニューロンを脱分極、過分極させます。ニューロンはこのほか、極性、形態、解剖学的な部位、タンパク質の発現プロファイル、情報の流れる方向などをもとに分類されます。

神経伝達物質とその機能

ニューロンからニューロンへの神経伝達システムは、電気シグナルの伝播を媒介する細胞内イベントを介して進められます。情報の授受を行うニューロン同士はシナプスと呼ばれる接触構造を形成し、シグナルを送る細胞をシナプス前細胞、受け取る細胞をシナプス後細胞と呼びます。神経伝達物質は、シナプス後膜に脱分極あるいは過分極を発生させるシグナル伝達分子であり、これによって活動電位の伝播や抑制を担っています。

神経伝達物質は、低分子と神経ペプチドに分類することができます。低分子神経伝達物質は局所性に、すなわち軸索末端で合成されるのに対し、神経ペプチドは低分子よりかなり大きな分子であり、細胞本体で合成された後、軸索に輸送されます。

アミノ酸

  • グルタミン酸:CNS内で最も多い神経伝達物質です。脳で広く発現し、基本的に興奮性で、記憶と学習に主要な役割を果たします。
  • GABA (γアミノ酪酸):抑制性の神経伝達物質で、不安の調節など幅広い機能を持っています。
  • アスパラギン酸:興奮性の神経伝達物質で、腹側脊髄に発現します。
網膜GAD1免疫蛍光染色

GAD1 (A9A5X) Rabbit mAb (緑) を用いたラット網膜の共焦点免疫蛍光染色解析。アクチンフィラメントは、DyLight 554 Phalloidin #13054 (赤) で染色しました。DRAQ5 #4084 (蛍光DNA色素) は、青の疑似カラーで示しています。

PSD95免疫蛍光染色ラット脳

PSD95 (D27E11) XP® Rabbit mAb (赤)、Neurofilament-L (DA2) Mouse mAb #2835 (緑) を用いたラット小脳の共焦点免疫蛍光染色解析。DRAQ5 #4084 (蛍光DNA色素) は、青の疑似カラーで示しています。

モノアミン

  • ドーパミン:神経調節性の神経伝達物質で、気分と中毒における役割が知られていますが、姿勢や動きの制御にも大きな役割を果たします。脳内のドーパミン発現低下は、パーキンソン病における筋肉の機能障害に関連付けられています。
  • セロトニン:抑制性の神経伝達物質で、気分を安定させ、また睡眠サイクルを調節することが知られています。
  • ノルエピネフリン:興奮性神経伝達物質で、副腎から放出され、注意力を高める作用があります。高レベルのノルエピネフリンは不安にリンクしています。
  • エピネフリン (アドレナリン):興奮性神経伝達物質で、心拍数と血圧を上昇させることにより、体による「闘争か逃走か反応」を刺激します。
  • ヒスタミン:興奮性神経伝達物質で、炎症反応と血管拡張に関与します。
チロシンヒドロキシナーゼ免疫蛍光染色

Tyrosine Hydroxylase (A8Y7R) Rabbit mAb (緑) とNeurofilament-L (DA2) Mouse mAb #2835 (赤) を用いたラット黒質の低倍率の共焦点免疫蛍光染色解析。DRAQ5 #4084 (蛍光DNA色素) は、青の疑似カラーで示しています。

ペプチド

  • ニューロペプチドY:抑制性神経伝達物質で、脂肪生成、満腹感、血管収縮に関与しています。
  • ソマトスタチン:抑制性神経伝達物質で、消化器系や視床下部で産生され、インスリンとグルカゴンの分泌を抑制します。

その他神経伝達物質

  • ATP:シナプス後シグナル伝達のスピードを上げることにより、ニューロンとグリア細胞シグナル伝達を媒介する重要な役割を果たしています。
  • アデノシン:ATPの分解産物で、アセチルコリンの放出とcAMPの増加を阻害します。低酸素症、虚血、神経炎症において神経保護作用があります。
  • アセチルコリン:興奮性神経伝達物質で、筋機能に重要な役割を果たします。
  • 一酸化窒素:血管拡張性のある酸化的ラジカルで、アセチルコリン、カテコールアミンおよびその他神経伝達物質の放出を誘導する作用があります。

神経伝達のプロセス

神経伝達物質の放出は、細胞内電位の変化に依存しており、この制御にはシナプス前細胞のリガンド依存性イオンチャネルが関与しています。細胞が脱分極すると、活動部位が軸索全体を伝播します。シナプス前終末でカルシウムの流入が起こることで、シナプス小胞から神経伝達物質の放出が起こります。

神経伝達物質はシナプス間隙を横断して樹状突起上のシナプス後受容体に結合し、興奮性または抑制性刺激を伝えます。

活動電位が発生した後、シナプス前細胞では、イオンチャネルやATP依存性トランスポーターの作用で再分極が起こります。シグナルを伝えたシナプス間隙の神経伝達物質は、酵素の作用で分解され、放出した細胞に再輸送されて再利用されるか、トランスポーターを介してアストロサイトに取り込まれます。