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酵素ベースのクロマチン断片化の利点

Cell Signaling Technology (CST) の新しいSimpleChIP® Enzymatic Chromatin IPキットは、CSTとNEBの科学者によって共同開発されたもので、最高品質の研究試薬が含まれています。このキットには、アガロースビーズを用いる製品と、磁気ビーズを用いる製品があり、30回までのChIPアッセイに必要なバッファーと試薬がすべて含まれています。このキットの試薬は、CST社内でChIP​による検証がなされた製品で、お客様が行う最適化の行程を短縮することができます。このキットは、CSTのどのChIP検証済み抗体とも使用可能で、内在性レベルのタンパク質DNA相互作用や哺乳類細胞におけるヒストン修飾を検出することができます。プロテインGアガロースビーズとプロテインG磁気ビーズは、個別にご購入いただくこともできます。

MNase酵素消化による断片化の主な利点 (ソニケーションとの比較):

  • 酵素消化はソニケーションと比較すると穏やかな方法で、クロマチンや抗体エピトープの完全性がより保たれます。これにより、IP効率が上がります。
  • 標的タンパク質のIP効率が良くなるため、タンパク質と結合したDNA座の検出能が高まります。
  • 標的DNAの検出効率が高まれば、必要なインプットクロマチン量を少量に押さえられるため、貴重な時間と試薬を節約することができます。
  • 酵素消化は、より低いバックグラウンドと高い感度を実現します。これは、DNA結合性の転写因子や転写コファクターを検出するためには、特に重要なポイントです。
SimpleChIP Enzymatic Chromatin IP Kit (Magnetic Beads) #9003

酵素ベース、ソニケーションベースのChIPキットのどちらを使用した場合も、ほぼ同じサイズの断片が調製できます。 SimpleChIP® Enzymatic Chromatin IP Kit (Magnetic Beads) #9003、または他社製品 (ソニケーションベースのChIPキット) を用いて、HCT116ヒト結腸直腸がん細胞 (4X 107細胞) からクロマチンサンプルを調製しました。各クロマチンサンプルからDNA精製後、1%アガロースゲルで電気泳動することで、DNA断片のサイズを測定しました。SimpleChIP®キット (レーン1) で酵素消化した場合、他社製品でソニケーションした場合 (レーン2) の両方で、150から700 bpの範囲 (1から5ヌクレオソームの長さに相当する) のクロマチン断片が確認できました。

例A: 転写が活性化しているGAPDHとc-MYC遺伝子、転写が不活化しているMYT-1遺伝子にそれぞれ特異的なPCRプライマーで解析しました。

例A:CSTと競合他社のトリメチルヒストン、アセチルメチルヒストン、Rbp1、Normal Rabbit IgGを比較した棒グラフ。

例B: CAMK2Dとc-MYC遺伝子上の既知TCF4結合部位、、MYT-1遺伝子のTCF4結合部位を含まない領域にそれぞれ特異的なPCRプライマーで解析しました。

例B:CSTと競合他社のTCF4、βカテニン、Normal Rabbit IgGを比較した棒グラフ。

SimpleChIP®で酵素消化したクロマチンでは、ソニケーションで断片化したクロマチンに比べ、ChIPで高い回収率がみられます。SimpleChIP® Enzymatic Chromatin IP Kit (Magnetic Beads) #9003、または他社製品 (ソニケーションベースのChIPキット) を用いて、HCT116細胞から調製したクロマチンサンプルを調製しました。図中に記載した抗体を用いてクロマチンサンプル10 μgからクロマチン免疫沈降を行い、回収されたDNAをqPCRで定量しました。各サンプルの、免疫沈降で回収されたDNA量を、インプットクロマチンに対する相対値で示しました。検討した各標的で、酵素消化したクロマチンでは、ソニケーション処理をしたクロマチンより高い回収率がみられます。