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既存の血管から新しい血管が形成されることを、血管新生と呼びます。血管新生は、発生段階、創傷の治癒、雌性生殖、および腫瘍成長において、新生血管や毛細血管の成長に重要です。血管新生が刺激されると、VEGF、PDGF、FGF、およびTGF等の血管新生促進性の成長因子が放出されます。これらの成長因子は、既存血管内の内皮細胞 (EC) 上の、同族の受容体にそれぞれ結合します。続いて活性化されたシグナル伝達カスケードによって、PI3K/Akt、Erk1/2、Smad、Notch等の複数のシグナル伝達経路が活性化され、ECの増殖および遊走が可能になります。ECは、Matrix metalloprotease (MMP) やインテグリンの働きで細胞外マトリックスを消化していきます。伸長して管を形成する新しい領域中にECが遊走していくことで、新生血管が形成されます。
周皮細胞は新たに形成された血管を構造的に支える支持細胞であり、内皮細胞の生存を促進し、出芽した血管を導き、さらに血管の収縮・拡張を制御します。これは、相互のシグナル伝達メカニズムを介して制御されます。すなわち、内皮細胞によりマトリックスへ分泌されたPDGF-BBが、周皮細胞膜上に表出したPDGFR-βに対するリガンドとして作用します。これに応答して、周皮細胞はVEGFを産生・分泌し、内皮細胞のVEGF受容体を介してシグナルを伝達します。
腫瘍における血管新生は、がん細胞が腫瘍に酸素および栄養をもたらすために新しい血管成長を刺激して引き起こされます。腫瘍の大きさが増大するにつれて、塊の中心部においては、拡散では細胞への酸素の取り込みが十分でなくなり、低酸素状態になります。低酸素状態によって、酸素レベルの変化に応答する転写因子であるHIF-1αの発現が安定化されます。低酸素条件下では、HIF-1αはHIF-1βに結合して、血管新生促進遺伝子の転写を活性化します。がん細胞は様々な成長因子およびサイトカインを分泌し、古典的な血管新生のシグナル伝達経路や細胞外マトリックスのリモデリング、および新規の血管形成を導く炎症性反応をも引き起こします。血液の供給は、腫瘍の成長および生存に極めて重要なため、これを絶って癌と戦う抗血管新生治療についての広範な研究が続けられています。