代謝には主に3つの目的があります。すなわち、食物をエネルギーに変換すること、栄養素をタンパク質、炭水化物、脂質、核酸に変換すること、窒素系廃棄物を除去することです。代謝の変化や機能不全と、神経変性疾患の間には強い相関があります。特に、耐糖能の異常やインスリン抵抗性は、多くの神経変性状態で見られます。代謝の変化が原因なのか結果なのかは明らかではありませんが、このような変化はすべての神経変性疾患と相関しており、疾患の進行における代謝の変化が果たす役割を解明することは重要です。
AKTはグルコース代謝、細胞の生存、増殖、遊走などの細胞プロセスにて重要な役割を担っています。AKTはインスリンに応答してSer473がリン酸化されることで活性化され、グルコースの輸送を制御します。AKTはアルツハイマー病に関連していますが、実際の役割はよく理解されていません。Tauの高リン酸化を促進することから、その重要性が認識されています。また、AKTはパーキンソン病にも関与すると考えられています。
mTOR (mammalian target of rapamycin) はATPやアミノ酸のセンサーとして機能し、栄養の供給量と細胞増殖のバランスをとる役割を果たします。インスリンシグナル伝達経路およびPI3Kシグナル伝達経路の一部であり、mTOR複合体の核となる構成成分です。mTORはハンチントン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患に関与しています。
AMPKαは代謝の中心的な制御因子で、ATPレベルの低下に応答してリン酸化されます。活性化されたAMPKαは下流のイベントを開始し、グルコース代謝や脂質代謝に影響を及ぼします。AMPKαの調節不全はアルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症に関与します。
S6 Ribosomal Proteinは、一般的に神経活性のマーカーやmTORC1活性の指標に利用されています。そのリン酸化は、ハンチントン病やアルツハイマー病で変化します。
アポリポタンパク質は、脂質やコレステロールのトランスポーターです。ApoE4は肝臓や脳で産生され、神経の可塑性とシナプス形成に関与しています。APOE4アリルを持つ人はアルツハイマー病の発症リスクが高くなりますが、アルツハイマー病の病因としてのApoE4の正確な機能は明らかにされていません。APOE4アリルは、パーキンソン病の早期発症にも関与しています。