細胞が生存するためには積極的にアポトーシスを抑制することが必要であり、アポトーシス促進因子の発現を阻害すると同時に、抗アポトーシス因子の発現を促進しています。PI3K経路は多くの生存因子によって活性化され、これによって細胞生存のシグナル伝達において重要な役割を担うAktが活性化されます。PTENはPI3K/Akt経路を負に制御します。活性化したAktはアポトーシス促進因子であるBcl-2ファミリーに属するBad、Bax、Caspase-9、GSK-3、FoxO1をリン酸化し、阻害します。多くの成長因子およびサイトカインは抗アポトーシス因子であるBcl-2ファミリーの発現を誘導します。JakとSrcはStat3をリン酸化することで活性化し、さらに活性化Stat3はBcl-xLとBcl-2の発現を誘導します。Erk1/2とPKCがp90RSKを活性化することによってCREBが活性化され、この経路もBcl-xLとBcl-2の発現を誘導します。これらBcl-2ファミリーのメンバーは、ミトコンドリアの完全性を保ち、シトクロムcの放出や、それに続くCaspase-9の活性化を防ぎます。TNF-αはアポトーシス促進経路、および抗アポトーシス経路の両方を活性化する可能性があります。すなわち、TNF-αはCaspase-8およびCaspase-10を活性化することでアポトーシスを誘導しますが、NF-κBを介してアポトーシスを阻害することもできます。NF-κBは、Bcl-2などの抗アポトーシス遺伝子の発現を誘導します。cIAP1/2は、TRAF2に結合することでTNF-αシグナルを阻害します。FLIPはCaspase-8の活性化を阻害します。
この図をレビューして下さった、ハーバード大学医学大学院 (マサチューセッツ州、ボストン) のJunying Yuan教授に感謝いたします。
作成日:2008年9月
改訂日:2012年11月