質量分析技術は、サンプルに含まれるペプチドの、翻訳後修飾 (PTM) 解析に利用することができます。ただし、PTMペプチドの存在量が非常に少なく、質量分析による解析が困難な場合がしばしばあります。
Cell Signaling Technology (CST™) は、PTM含有ペプチドを抗体で濃縮して液体クロマトグラフィー質量分析 (LC-MS/MS) で解析する、独自のプロテオミクス法、PTMScan®技術を開発し、この問題に対処しています。PTMScan技術は、微量サンプルから何百、何千ものペプチドを同定・定量することができ、他のペプチド濃縮法 (IMACなど) に比べ、より集中的なアプローチが可能です。
PTMScan技術は以下に使用することができます:
PTM含有ペプチドの濃縮に用いられる抗体が、PTMScan成功の鍵となります。PTMScanに用いる抗体には、次のような特徴があります:
以下の表は、PTMScan®技術で用いられる3種類の抗体の概要です。
抗体の種類 | 抗体のターゲット | 具体例 | |
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標準的な部位特異的PTM抗体 | 修飾を受けたアミノ酸と、その周辺のアミノ酸配列 | Phospho-Akt1 (Ser473) のCST™抗体は、リン酸化された473番目のセリン残基とその周辺のアミノ酸のみを認識します。 | ![]() |
モチーフ抗体 | 特定のモチーフに修飾を受けたアミノ酸 | Akt基質モチーフ抗体は、モチーフ内のセリン残基がリン酸化された場合のみ、あらゆるタンパク質のRXRXXS*配列を認識します (Xは任意のアミノ酸)。 | ![]() |
PTM特異的抗体 (PTM抗体) | 解析対象のPTMを持つあらゆるペプチド | アセチル化リジン抗体は、隣接しているアミノ酸部位に関係なく、すべてのアセチル化部位を認識します。 | ![]() |
PTMScan® Discovery (PTM/モチーフベースの濃縮) | PTMScan® Direct (質量分析ベースの抗体アレイ) | |
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解析したいパスウェイが決まっているか? | ✗ | ✔ |
抗体濃縮を行うか? | ✔ | ✔ |
LC-MS/MS解析を実施するか? | ✔ | ✔ |
どのような抗体を用いるか? | PTM抗体またはモチーフ抗体 (標的タンパク質は限定されない) | 目的のパスウェイに含まれる標的タンパク質の部位特異的抗体 |
免疫沈降用ビーズに固定化されているのはどのような抗体か? | 1種類のPTMもしくはモチーフを認識する抗体 | 複数の標的タンパク質に対する抗体 (ビーズベースのマルチプレックスアッセイ) |
使用可能な生物種は? | ヒト、マウス、ラット、ショウジョウバエ、シロイヌナズナなど、様々な生物種由来のサンプルで使用可能 | ヒトおよびマウスについては検証済み (その他の生物種への交差性については弊社にご確認ください) |
研究事例 | 「新規の抗アセチル‐リジン抗体および最適化されたプロテオーム解析のワークフローを用いた、大規模な、定量的アセチローム」 Svinkina, T., et al (2015) Mol. Cell. Proteomics. 14(9):2429–40. | 「PTMScan Direct:イムノアフィニティによる濃縮とLC-MS/MSを組み合わせた、重要なシグナル伝達タンパク質の同定と定量」 Stokes, M., et al (2012) Mol Cell Proteomics. 11(5):187–201 |
要約 | 新規のPTMの同定や定量的解析に、PTMScan Discoveryをご利用ください | 既知のパスウェイの構成タンパク質の活性を、細胞株間や薬物処理間で比較定量する場合は、PTMScan Directをご利用ください |