神経伝達は非常に連続したプロセスです。ニューロン間の情報伝達はシナプスで起こり、そこでは、神経情報が活動電位から神経化学的シグナルに変換されています。シナプスは、シナプス前末端の活性帯 (シナプス前細胞膜上のカルシウムチャンネルと小胞融合部位のクラスター)、 シナプス間隙、シナプス後肥厚部から構成されます。シナプス後肥厚部は、シナプス後ニューロンの電子密度の高いドメインで、シナプスのシグナルの受信と統合に特化しています。神経伝達物質 (NT) を含む細胞内小胞は、速やかにシナプス前膜に融合し、活動電位が到着するとすぐにNTをシナプス間隙に放出します。これは同期性放出と称される神経伝達の一種です。これらの小胞のドッキング、プライミング、および融合は、小胞およびシナプス前細胞膜の双方の膜上に存在するSNAREファミリー、および他のシャペロンタンパク質により行われます。シナプス小胞は、小胞のRab3 (またはRab27) とRIMとの相互作用を介して、活性帯の特定部位とドッキングします。また、RIMは、直接またはRIM-BPを介してカルシウムチャンネルに結合できます (A)。非神経細胞を用いた研究からSNAREタンパク質もドッキングに寄与する可能性がありますが、哺乳類のニューロンではまだ決定的な証拠はありません。小胞SNAREタンパク質、VAMP (Synaptobrevinとも呼ばれる) は、細胞膜上のSNAREタンパク質であるSyntaxin 1およびSNAP25に結合し、融合のために小胞をプライミングします (B)。Munc18-1は、SNARE複合体と同様に単量体のSyntaxin 1に結合し、複合体の集合を助けます。コシャペロンタンパク質であるComplexinおよびカルシウム結合タンパク質Synaptotagmin 1 (SYT1) は、SNAREタンパク質に会合して、タイトな複合体を形成し、脂質膜と結合させます (C)。シナプス前ニューロンでは、活動電位によって電位開口型カルシウムチャネルが開かれる時に、カルシウムがSYT1に結合します。これにより、SYT1がSNARE複合体や細胞膜と相互作用することが可能になり、膜融合およびNTのシナプス間隙への放出が起こります (D)。活動電位への素早い反応は、一部にはRIM、RIM-BP、Munc13に働きによります。これらのタンパク質は、小胞、細胞膜、およびカルシウム・チャンネルの間に物理的に相互作用して、この必要な3つを密に集合させます。放出されたNTは、EAAT (グルタミン酸の再取り込み) 等の特異的なトランスポーター、SERT (セロトニンの再取り込み) またはDAT (ドーパミンの再取り込み) のようなモノアミントランスポーターによりリサイクルされ、神経細胞の細胞質へ戻されます。
スタンフォード大学医学大学院 (カリフォルニア州、パロアルト) のTaulant Bacaj氏に図をレビューしていただいたことを感謝いたします。
作成日:2016年12月