mechanistic target of rapamycin (mTOR) は、2種類の複合体に存在する、非定型のセリン/スレオニンキナーゼです。1つ目の複合体であるmTOR complex 1 (mTORC1) は、mTOR、Raptor、GβL、およびDEPTORから成り、Rapamycinによって阻害されます。mTORC1は主要な増殖制御因子で、成長因子、エネルギーレベル、細胞ストレス、およびアミノ酸などの、様々な栄養要因や環境要因を感知して統合します。mTORC1はこれらのシグナルを受けて、mRNAの翻訳や脂質の合成などの同化プロセスを増強する基質をリン酸化したり、オートファジーなどの異化プロセスを制限したりすることで細胞増殖を促進します。低分子GTPaseのRhebは、GTPとの結合状態ではmTORC1のキナーゼ活性に必要な強力な刺激因子であり、GAPであるTuberous sclerosis (TSC) のヘテロ二量体TSC1/2によって負に制御されます。上流での刺激の多くはAktとTSC1/2を介して伝わり、Rhebのヌクレオチド積載状態を制御します。対照的に、アミノ酸はPI3K/Akt経路から独立してmTORC1へシグナルを伝えます。すなわち、アミノ酸によってmTORC1のリソソーム表面への移行が促進され、そこでmTORC1はRhebと結合することで活性化されます。このプロセスは、複数の複合体 (主にv-ATPase、Ragulator、Rag GTPase、GATOR1/2) が協働することによって制御されます。2つめの複合体であるmTOR complex 2 (mTORC2) は、mTOR、Rictor、GβL、Sin1、PRR5/Protor-1、およびDEPTORから構成されます。 mTORC2は、Aktを活性化することで細胞生存を促進し、PKCαの活性化を介して細胞骨格動態を制御し、さらに、SGK1のリン酸化を介してイオン輸送および増殖を制御します。mTORのシグナル伝達異常は、がんや心血管疾患、糖尿病など、多くの病態に関与します。
本パスウェイ図を監修していただいたRachel Wolfson博士ならびにLynne Chantranupong博士に深く感謝致します。
作成日:2008年9月
改訂日:2014年6月