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Hedgehogシグナル伝達

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Hedgehogシグナル伝達

パスウェイの説明:

Hedgehog (Hh) 経路は、正常な胚発生に不可欠な進化的によく保存された経路であり、成体組織の維持、再生、再分化において重要な役割を担っています。分泌されたHhタンパク質は濃度依存的および時間依存的に作用しすることで、生存、細胞増殖から、細胞運命決定ならびに分化までの一連の細胞応答を誘導します。

適切なレベルでHhシグナル伝達を行うには、Hhリガンドの産生、プロセシング、分泌および輸送の制御が必要です。哺乳類のHhリガンドには、Sonic (Shh)、Indian (Ihh)、Desert (Dhh) などがあります。全てのHhリガンドは前駆体タンパク質として生成され、自己触媒的な切断と、カルボキシル末端でのコレステロール修飾および、アミノ末端でのパルミトイル化が同時に進行し、脂質が二重に付加されたタンパク質として分泌されます。HhリガンドはDispatchedとScube2の協働によって細胞表面から放出され、細胞表面タンパク質LRP2およびヘパラン硫酸プロテオグリカンであるGlypicanファミリー (GPC1-6) との相互作用を介して、複数の細胞間を移動します。

Hhタンパク質は、標準的な受容体であるPatched (PTCH1) と、共受容体であるGAS1、CDON、BOCへの結合を介してシグナル伝達を開始します。HhがPTCH1に結合することによって、GPCR様タンパク質のSmoothened (SMO) が抑制解除され、それによって繊毛内へSMOが蓄積し、細胞質側の末端がリン酸化されます。SMOは下流のシグナル変換を媒介します。この経路内ではキネシンファミリータンパク質であるKif7、および細胞内Hh経路の重要な制御因子であるSUFUからGLIタンパク質 (Hh経路の転写エフェクター) の離脱などが起こります。

GLIタンパク質は繊毛を通じても移動します。Hhがない場合は、SUFUとKif7によって隔離されることでPKA、GSK3β、およびCK1によるGLIのリン酸化が可能となり、プロセシングを受け、(カルボキシ末端の切断を通じて) 転写抑制因子となるか、(E3ユビキチンリガーゼのβ-TrCPに媒介されて) 分解の標的となります。Hhシグナル伝達の活性化に応答して、GLIタンパク質は様々にリン酸化され、プロセシングを受けて転写共役因子となり、Hh標的遺伝子の発現を誘導します。発現したタンパク質の多くはこの経路の構成タンパク質 (PTCH1、GLI1など) です。フィードバック機構には、Hhリガンドの機能を妨げるHh経路アンタゴニスト (PTCH1、PTCH2、Hhip1) の誘導や、E3ユビキチンリガーゼのアダプタータンパク質SPOPによるGLIの分解などがあります。

正常な胚発生過程および成体組織の恒常性における重要な役割に加えて、Hhシグナル伝達の異常は、古くから基底細胞がん、髄芽細胞腫、横紋筋肉腫などのがん細胞の増殖に関与しています。また最近では、過剰に活性化されたHhシグナル伝達が、膵臓がん、肺がん、前立腺がん、子宮がん、乳がんにも関与することがわかっています。したがって、Hh経路の制御メカニズムを理解することは、数多くのHh依存的な病態に対する新たな治療法の開発につながります。

参考文献:

この図をレビューして下さった、Brigham and Women’s Hospital、ハーバード大学医学大学院 (マサチューセッツ州、ボストン) のHans Widlund教授に感謝いたします。

作成日:2006年6月

改訂日:2014年7月

アセチル化酵素
アセチル化酵素
代謝酵素
代謝酵素
アダプター
アダプター
メチルトランスフェラーゼあるいはGタンパク質
メチルトランスフェラーゼあるいはGタンパク質
アダプター
アポトーシス/オートファジー調節因子
ホスファターゼ
ホスファターゼ
細胞周期の調節因子
細胞周期の調節因子
タンパク質複合体
タンパク質複合体
脱アセチル化酵素あるいは細胞骨格タンパク質
脱アセチル化酵素あるいは細胞骨格タンパク質
ユビキチン/SUMOリガーゼあるいは脱ユビキチン化酵素
ユビキチン/SUMOリガーゼあるいは脱ユビキチン化酵素
成長因子/サイトカイン/発生調節タンパク質
成長因子/サイトカイン/発生調節タンパク質
転写因子あるいは翻訳因子
転写因子あるいは翻訳因子
GTPase/GAP/GEF
GTPase/GAP/GEF
受容体
受容体
キナーゼ
キナーゼ
その他
その他
 
直接的プロセス
直接的プロセス
一時的なプロセス
一時的なプロセス
転座プロセス
転座プロセス
刺激型修飾
刺激型修飾
阻害型修飾
阻害型修飾
転写修飾
転写修飾