クロマチン免疫沈降
次の製品の専用プロトコールです: SimpleChIP® Plus Enzymatic Chromatin IP Kit (Agarose Beads) #9004
必要な試薬
キットに含まれている試薬:
- Glycine Solution (10X) #7005
- Buffer A (4X) #7006
- Buffer B (4X) #7007
- ChIP Buffer (10X) #7008
- ChIP Elution Buffer (2X) #7009
- 5 M NaCl #7010
- 0.5 M EDTA #7011
- ChIP-Grade Protein G Agarose Beads #9007 (BSAとソニケーション処理したサケ精子由来DNAでブロッキング済み)
- DNA Binding Buffer #10007
- DNA Wash Buffer #10008 (4倍量のエタノールを使用前に加えてください)
- DNA Elution Buffer #10009
- DNA Spin Columns and Collection Tubes #10010
- Protease Inhibitor Cocktail (200X) #7012
- RNAse A (10 mg/ml) #7013
- Micrococcal Nuclease #10011
- Proteinase K (20 mg/ml) #10012
- SimpleChIP® Human RPL30 Exon 3 Primers 1 #7014
- SimpleChIP® Mouse RPL30 Intron 2 Primers 1 #7015
- Histone H3 (D2B12) XP® Rabbit mAb (ChIP Formulated) #4620
- Normal Rabbit IgG #2729
- DTT (Dithiothreitol) #7016
キットに含まれない試薬:
- 1X PBS #9872
- Nuclease Free Water #12931
- エタノール (96 - 100%)
- ホルムアルデヒド (37%ストック溶液)
- SimpleChIP® Universal qPCR Master Mix #88989
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この ! マークは、免疫沈降 (IP prep) のサンプル数に応じて量の変更する重要ステップであることを意味します。免疫沈降1回分 (1 IP prep) は、4 x 106個の組織培養細胞、または25 mgの破砕した組織に相当します。 |
!! |
この !! マークは、操作を進める前にバッファーを希釈する重要なステップであることを意味します。 |
SAFE STOP |
これは、実験操作を中断する必要がある場合に、プロトコールを安全に中断できるポイントを示します。 |
I. 組織のクロスリンクおよびサンプル調製
組織を採取する際、脂肪や壊死組織などの不要な部分を取り除きます。組織サンプルはすぐに使用して直ちにクロスリンクするか、次に使用するまでドライアイスで凍結して-80℃で保存してください。最適なクロマチン収量とChIP結果を得るため、各免疫沈降あたり25 mgの組織を使用します。クロマチン収量は組織の種類により異なるため、一部の組織では各免疫沈降あたり25 mgを超える量が必要となります。組織ごとに予測されるクロマチン収量については、Appendix Aを参照してください。クロマチンの断片化および濃度の解析 (セクションIV) のためにクロマチンサンプルを1本余分に用意してください。必要に応じて5本のクロマチンサンプルを追加で用意し、クロマチン断片化の最適化 (Appendix B) で使用します。
実験開始前の準備:
(!) すべてのバッファーの量は、免疫沈降 (IP prep) のサンプル数に応じて比例的に増やす必要があります。
- 200X Protease Inhibitor Cocktail (PIC) #7012と10X Glycine Solution #7005を取り出し、室温に戻してください。PICが完全に溶けていることを必ず確認してください。
- 25 mgの組織に対して、Phosphate Buffered Saline (PBS) 3 mL + 200X PIC 15 μLの混合液を調製して、氷上に置いてください。
- 25 mgの組織に対して、37%ホルムアルデヒド45 μLを用意し、室温に置いてください。使用期限内の新しいホルムアルデヒドを使用してください。
A. クロスリンク
- 新鮮組織または凍結組織サンプルを計量してください。免疫沈降1回あたり、25 mgの組織を使用します (ポジティブおよびネガティブコントロールも含めると、1回の実験で少なくとも75 mgの組織が必要です)。
- 組織サンプルを60 mmまたは100 mmのディッシュに置き、清潔な解剖用メスまたは剃刀の刃で細かく切り刻んでください。シャーレは氷上に置いてください。タンパク質分解を防ぐため、組織をよく冷やす必要があります。
- ミンスした組織を、15 mLのコニカルチューブに移してください。
- 25 mgの組織に対し、PBS + PIC混合液1 mLを加えてください。
- タンパク質をDNAにクロスリンクするため、PBS + PIC混合液1 mLに対し、37%のホルムアルデヒド 45 μLを加え、室温で20分間振盪させてください。ホルムアルデヒドの終濃度は1.5%です。
- PBS + PIC混合液1 mLに対して10X Glycine 100 μLを加えてクロスリンクを止め、5分間室温で混和してください。
- 組織をベンチトップ遠心分離機を用いて、4℃、500 x gで5分間遠心分離してください。
- 上清を取り除き、25 mgの組織に対しPBS + PIC混合液1 mLで一度洗ってください。
- ベンチトップ遠心分離機を用いて、4℃、500 x gで5分間、再度遠心分離してください。
- 上清を取り除き、25 mgの組織に対しPBS + PIC混合液1 mLで再懸濁し、氷上に置いてください。Medimachine (B) あるいはDounce Homogenizer (C) を用いて組織をバラバラにし、単細胞懸濁液を調製してください。(SAFE STOP) もしくは、破砕する前のサンプルを-80℃で3ヵ月まで保存することができます。
B. Medimachine (BD Biosciences:part #340587) を用いた組織破砕
- 1000 μLピペットチップの先を切って穴を広げ、組織の塊が通るようにしてください。
- PBS + PIC混合液1 mLに再懸濁した組織サンプルを、50 mm Medicone (part #340592) の上部チャンバーに移してください。
- メーカーの推奨手順に従い、組織を2分間すり潰してください。
- 1 mLのシリンジと先の鈍い18ゲージの注射針を用いて、Mediconeの一番下のチャンバーから細胞懸濁液を集めてください。細胞懸濁液を15 mLのコニカルチューブに移し、氷上に置いてください。
- 組織全体がすり潰されて均質な懸濁液になるまで、ステップ2-4を繰り返してください。
- さらにすり潰す必要がある場合、組織サンプルにPBS + PIC混合液を追加してください。組織全体がすり潰されて均質な懸濁液になるまで、ステップ2-5を繰り返してください。
- 顕微鏡で単細胞懸濁液であることを確認してください (オプション)。
- ベンチトップ遠心分離機を用いて、細胞を4℃、2,000 x gで5分間遠心分離してください。
- 上清を取り除き、続けて細胞核の調製とクロマチン断片化 (セクションIII) に進んでください。
C. Dounce Homogenizerを用いた組織破砕
- PBS + PIC混合液に再懸濁した組織をDounce Homogenizerに移してください。
- 20-25回ストロークで組織を破砕します。顕微鏡で単細胞懸濁液であることを確認してください (オプション)。
- 細胞懸濁液を15 mLのコニカルチューブに移し、ベンチトップ遠心分離機を用いて4℃、2,000 x gで5分間遠心分離してください。
- 上清を取り除き、続けて細胞核の調製とクロマチン断片化 (セクションIII) に進んでください。
II. 培養細胞のクロスリンクおよびサンプル調製
最適なChIPの結果を得るため、各免疫沈降に対し約4 x 106個の細胞を使用します。ポジティブコントロールとネガティブコントロールを含めると、少なくとも12 x 106個の細胞が必要です。HeLa細胞の場合、免疫沈降1回分は増殖培地20 mLで90%コンフルエントに培養した15 cmディッシュの半分量に相当します。クロマチンサンプルを1本余分に用意し、クロマチンの断片化および濃度についての解析に使用します (セクションIV)。さらに、細胞種ごとに培養ディッシュを1枚余分に用意し、血球計算盤またはセルカウンターを用いて細胞数を計測することを推奨します。
実験開始前の準備:
(!) 全てのバッファーの量は、使用する15 cmの組織培養ディッシュ (または20 mLの浮遊細胞) の枚数に応じて、比例的に増やす必要があります。
- 200X Protease Inhibitor Cocktail (PIC) #7012と10X Glycine Solution #7005を取り出し、室温に戻してください。PICが完全に溶けていることを必ず確認してください。
- 15 cmディッシュ1枚 (または浮遊細胞20 mL) あたり、リン酸緩衝生理食塩水 (PBS) 2 mL + 200X PIC 10 μLを調製して、氷上に保持してください。
- 15 cmディッシュ1枚 (または浮遊細胞20 mL) あたり、PBS 40 mLを調製し、氷上に保持してください。
- 15 cmディッシュ1枚 (または20 mLの浮遊細胞) あたり、37%ホルムアルデヒド540 µLを調製し、室温に保持してください。使用期限内の新しいホルムアルデヒドを使用してください。
- タンパク質をDNAにクロスリンクするために、20 mLの培地を入れた15 cm培養ディッシュに対して、37%ホルムアルデヒド540 μLを加えてください。浮遊細胞の場合は、37%ホルムアルデヒド540 μLを20 mLの培地に懸濁した細胞に加えてください (浮遊細胞を適切にクロスリンクするため、細胞密度は0.5 x 106細胞/mL未満に調整してください)。手早くディッシュを傾けて混ぜ合わせ、室温で10分間インキュベートしてください。最終的なホルムアルデヒド濃度は1%です。ホルムアルデヒドを加えると、培地の色が変化することがあります。
- 10X Glycine Solution 2 mLを、培地が20 mL入ったそれぞれの15 cmディッシュに加え、手早く回して混ぜ合わせ、室温で5分間インキュベートしてください。glycineを加えると、培地の色が変化することがあります。
- 浮遊細胞の場合は、細胞を50 mLのコニカルチューブに移し、4℃で500 x g、5分間遠心分離し、ペレットを氷冷したPBS 20 mLで2度洗ってください。上清を取り除き、直ちに核の調製とクロマチンの断片化 (セクションII) に進んでください。
- 接着細胞の場合は、培地を取り除き、細胞を氷冷した1X PBS 20 mLで2回洗ってください。毎回、洗いの液を完全に取り除いてください。
- 氷冷したPBS + PIC混合液2 mLを、それぞれの15 cmのディッシュに加えてください。細胞を掻き取り、バッファーに懸濁してください。すべてのディッシュから集めた細胞をコニカルチューブ (15 mL) 1本に集めてください。
- ベンチトップ遠心分離機を用いて、細胞を2,000 x gで5分間、4℃で遠心分離してください。上清を取り除き、続けて細胞核の調製とクロマチン断片化 (セクションIII) に進んでください。(SAFE STOP) この状態で、サンプルを-80℃で3ヵ月まで保存できます。
III. 核の調製とクロマチンの断片化
実験開始前の準備:
(!) すべてのバッファーの量は、免疫沈降 (IP prep) のサンプル数に応じて比例的に増やす必要があります。
- 細胞を、氷冷した1X Buffer A + DTT + PIC混合液1 mL (IP prepにつき) に再懸濁してください。氷上で10分間インキュベートしてください。3分ごとに、チューブを転倒混和してください。
- ベンチトップ遠心分離機を用いて2,000 x gで5分間、4℃で遠心分離し、細胞核を沈殿させてください。上清を取り除き、氷冷した1X Buffer B + DTT混合液1 mL (IP prepにつき) でペレットを再懸濁してください。再度遠心分離して上清を取り除き、ペレットを1X Buffer B + DTT混合液100 µL (IP prepにつき) に再懸濁してください。1.5 mLの微量遠心分離用チューブに移してください (チューブ1本あたり最大1 mLまで)。
- IP prepにつき、Micrococcal Nuclease #10011 0.5 μLを加え、数回転倒混和してください。37℃で20分間頻繁に混和しながらインキュベートし、約150-900 bpの長さにDNAを断片化してください。3-5分ごとに転倒混和してください。DNAを最適なサイズに断片化するために必要なMicrococcal Nucleaseの量は、各組織および細胞株の検討結果に基づいて決定しなければならない場合があります (Appendix B参照)。HeLaの細胞核の場合、4 x 106個の細胞につきMicrococcal Nuclease 0.5 μL、マウス肝臓の場合、25 mgの組織につきMicrococcal Nuclease 0.5 μLを処理すると、適切なサイズのDNA断片に断片化できます。
- IP prepにつき、0.5 M EDTA #7011 10 µLを加えて断片化を停止し、1-2分間氷上に置いてください。
- 16,000 x gで1分間、4℃で遠心分離して細胞核を沈殿させ、上清を除去してください。
- 核ペレットを、IP prepにつき1X ChIP Buffer + PIC混合液100 μLで再懸濁し、氷上で10分間インキュベートしてください。
- 1.5 mLの遠心分離用チューブに、1本あたり最大500 μLまでのライセートを入れ、2、3回ソニケーション処理を行うことで核膜を壊してください。ソニケーション処理の合間に、サンプルを30秒間氷水に浸してください。細胞核を完全に溶解するために必要な最適条件は、ソニケーション処理の前後に細胞核を光学顕微鏡で観察することで決定できます。VirTis Virsonic 100 Ultrasonic Homogenizer/Sonicator (1/8-inch probe) の場合、6に設定し、20秒間のソニケーション処理を3セット行うことで、HeLa細胞の核は完全に破砕されます。代わりに、Dounce Homogenizerで20回ホモジェナイズしても細胞核を破砕できますが、破砕が不完全になる可能性があります。
- 9,400 x gで10分間、4°Cで遠心分離して、ライセートを清澄化してください。
- 上清を新しいチューブに移してください。(SAFE STOP) これがクロスリンクしたクロマチン調製液です。使用するまで‐80℃で保存してください。50 μLのクロマチン調製液を、クロマチンの断片化および濃度の解析 (セクションIV) に使用します。このサンプル50 µLは-20℃で一晩保存しても構いません。
IV. クロマチンの断片化および濃度の解析 (推奨ステップ)
- クロマチンサンプル 50 μL (セクションIIIのステップ9) に、Nuclease-free water 100 μL、5 M NaCl #7010 6 μL、およびRNAse A #7013 2 μLを加えてください。ボルテックスで混和し、37℃で30分間インキュベートしてください。
- RNAse Aを処理した各サンプルに、#10012 Proteinase K 2 μLを加えてください。ボルテックスにより混和し、65℃で2時間インキュベートしてください。
- セクションVIIに記載されているとおり、DNA精製用スピンカラムを用いてDNAをサンプルから精製してください。(SAFE STOP) DNAは-20℃で6ヵ月まで保存することができます。
- DNA精製後、各サンプル10 μLを、100 bpのDNAマーカーとともに1%アガロースゲルで電気泳動し、DNA断片のサイズを測定してください。DNAが約150-900 bp (1-5個のヌクレオソーム、図1参照) のサイズに断片化されているはずです。
- DNA濃度を測定するため、精製したDNA 2 μLをNuclease-free Water 98 μLに入れて50倍で希釈し、OD260を測定してください。原液のDNA濃度 (μg/mL) は、OD260 x 2,500となります。理想的なDNA濃度は50-200 μg/mLです。
注意:最適なChIPの結果を得るためには、クロマチンのサイズと濃度を適切にすることが非常に重要です。クロマチンを断片化しすぎると、定量PCRのシグナルが消失する可能性があります。一方で、クロマチンの断片化が不十分な場合、バックグラウンドシグナルが上昇し分解能が低下します。また、免疫沈降に用いるクロマチン量が少なすぎると、定量PCRのシグナルが低下する原因になります。クロマチンの断片化を最適化するためのプロトコルは、Appendix Bに記載されています。
V. クロマチン免疫沈降 (ChIP)
最適なChIPの結果を得るため、免疫沈降1回あたり約5-10 μgの断片化されたクロスリンククロマチン (セクションIVに記載) を使用してください。これは、25 mgの破砕した組織あるいは4 x 106個の培養細胞から調製された免疫沈降サンプル100 μL分に概ね相当します。一般的には、抗体を加える前にクロマチンサンプル100 μLを1X ChIP Buffer 400 μLで希釈しますが、免疫沈降1回あたり100 μL以上必要な場合は下記のようにクロマチンサンプルを希釈する必要はありません。希釈しない場合も、クロマチンサンプルに直接抗体を加えることでクロマチン複合体の免疫沈降ができます。
実験開始前の準備:
(!) すべてのバッファーの量は、免疫沈降の回数に応じて比例的に増やす必要があります。
- 200X Protease Inhibitor Cocktail (PIC) #7012を取り出し、室温に戻してください。PICが完全に溶けていることを必ず確認してください。
- 10X ChIP Buffer #7008を取り出して室温に戻し、SDSが完全に溶解していることを確かめてください。
- 断片化したクロマチン調製液 (セクションIIIのステップ9から) を解凍し、氷上で解凍します。
- low salt washの調製:免疫沈降1回あたり、1X ChIP Buffer 3 mL (10X ChIP Buffer #7008 300 μL + 水2.7 mL) を調製し、使用するまで室温で保持してください。
- high salt washの調製:免疫沈降1回あたり、1X ChIP Buffer 1 mL (10X ChIP Buffer #7008 100 μL + 水900 μL) + 5M NaCl #7010 70 μLの混合液を調製し、使用するまで室温で保持してください。
注意:ChIP-Grade Protein G Agarose Beadsは、ソニケーション処理したサケ精子DNAでブロッキングされているため、ChIP-Seqでは使用できません。
- 1本のチューブに、免疫沈降の予定回数分に十分な1X ChIPバッファー + PIC混合液を用意してください。免疫沈降1回あたり、1X ChIP Buffer 400 μL (10X ChIP Buffer 40 μL + 水360 μL) + 200X PIC 2 μLの混合液を調製してください。免疫沈降のサンプル数を決定する時には、ポジティブコントロールのHistone H3 (D2B12) XP® Rabbit mAb #4620およびネガティブコントロールのNormal Rabbit IgG Antibody #2729のサンプルを数に含めてください。調製したチューブを氷上に保持してください。
- 調製した1X ChIP Bufferへ、断片化とクロスリンクをしたクロマチン調製液 (セクションIIIのステップ9) を免疫沈降1回あたり100 μL (5-10 μgのクロマチンに相当する量) 加えます。例えば、10回分の免疫沈降では、1X ChIP Buffer 4 mL (10X ChIP Buffer 400 μL + 水3.6 mL) + 200X PIC 20 μL + 断片化したクロマチン調製液1 mLを入れたチューブを1本調製してください。
- 希釈したクロマチン10 μLを遠心分離用チューブに移してください。これが2%インプットサンプルです。使用するまで-20℃で保存してください (セクションVIのステップ1で使用します)。
- 免疫沈降ごとに、断片化したクロマチン500 μLを1.5 mLの遠心分離用チューブに分注し、免疫沈降用抗体を加えてください。必要な抗体量は免疫沈降ごとに異なりますので、お客様ご自身で決定する必要があります。ポジティブコントロールのHistone H3 (D2B12) XP®Rabbit mAb #4620については、10 μLを免疫沈降サンプルに加えてください。ネガティブコントロールのNormal Rabbit IgG #2729については、1-2 μL (1-2 μg) を免疫沈降サンプルに加えます*。CST抗体を用いる場合は、データシートまたは製品のウェブページに記載されている希釈率を参照し、対照比較のためにCST抗体の濃度に基づいてネガティブコントロールのIgG抗体の量 (μg) を算出してください。ローテーターを用いて、免疫沈降サンプルを4℃で4時間から一晩インキュベートしてください。
注意:Cell Signaling Technologyのほとんどの抗体は、免疫沈降1回あたり1-2 μgを使用することで適切にワークします。濃度の異なる複数の抗体がある場合は、最も高い抗体濃度にネガティブコントロールNormal Rabbit IgG #2729の濃度を合わせて使用することをお勧めします。
- ChIP-Grade Protein G Agarose Beads #9007を軽くボルテックスし、再懸濁してください。直ちにChIP-Grade Protein G Agarose Beads 30 μLをそれぞれの免疫沈降反応液に加え、ローテーターを用いて、4℃で2時間インキュベートしてください。
- 微量遠心分離機を用いて、3,400 x gで短く1分間遠心分離してProtein G Agarose Beadsを沈殿させてください。
- low salt wash 1 mLをBeadsに加えてChIP-Grade Protein G Agarose Beadsを洗い、4℃で5分間ローテーターを用いてインキュベートしてください。ステップ6と7を更に2回繰り返し、計3回low salt washで洗ってください。
- high salt wash 1 mLをBeadsに加え、4℃で5分間ローテーターを用いてインキュベートしてください。
- 微量遠心分離機を用いて、3,400 x gで短く1分間遠心分離してProtein G Agarose Beadsを沈殿させてください。直ちにセクションVIに進んでください。
VI. 抗体/Protein G Agarose Beadsからのクロマチンの溶出および脱クロスリンク
実験開始前の準備:
(!) すべてのバッファーの量は、免疫沈降の回数に応じて比例的に増やす必要があります。
- 37℃のウォーターバスで2X ChIP Elution Buffer #7009を温め、SDSが完全に溶解していることを確認してください。
- 水浴またはサーモミキサーを65℃に設定してください。
- 各免疫沈降サンプルおよび2%インプットサンプルごとに、1X ChIP Elution Buffer 150 μL (2X ChIP Elution Buffer #7009 75 μL+ 水75 μL) を用意してください。
- 1X ChIP Elution Buffer 150 μLを、2%インプットサンプル入りのチューブに加え、ステップ6で使用するまで室温に置いておきます。
- 1X ChIP Elution Buffer 150 μLを、それぞれの免疫沈降サンプルに加えてください。
- 穏やかにボルテックス (1,200 rpm) しながら、65℃で30分間処理し、抗体/Protein G Agarose Beads複合体からクロマチンを溶出してください。本ステップには、サーモミキサーの使用をお勧めします。代わりにローテーターを用いて室温で溶出することもできますが、完全に溶出されない可能性があります。
- 微量遠心分離機を用いて、3,400 x gで短く1分間遠心分離してProtein G Agarose Beadsを沈殿させてください。
- 溶出されたクロマチンを含む上清を、注意深く新しいチューブに移してください。
- ステップ1で調製した2%インプットサンプルを含むすべてのチューブに、5M NaCl 6 μLおよびProteinase K #10012 2 μLを加えて65℃で2時間インキュベートし、脱クロスリンクしてください。インキュベーションは一晩まで延長することができます。
- 直ちにセクションVIIに進んでください。(SAFE sTOP) もしくは、サンプルは-20℃で4日間まで保存できます。ただし、沈殿物の形成を防ぐために、DNA Binding Buffer #10007を加える前に (セクションVIIのステップ1)、必ずサンプルを室温に戻してください。
VII. スピンカラムを用いたDNAの精製
実験開始前の準備:
- (!!) 使用前に、エタノール (96 - 100%) 24 mLをDNA Wash Buffer #10008に加えてください。このステップは、DNA精製の最初のセッティングの前に1度だけ実施してください。
- セクションVで得られた各DNAサンプルに対し、DNA Purification collection tube #10010を一つずつ用意してください。
- DNA Binding Buffer #10007 750 μLを各DNAサンプルに加え、軽くボルテックスしてください。
- 1サンプルあたり5倍量のDNA Binding Bufferを使用します。
- ステップ1のサンプル450 μLを、コレクションチューブにセットしたDNAスピンカラムに移してください。
- 18,500 x gで30秒間遠心分離してください。
- コレクションチューブからスピンカラムを取り外し、液体を廃棄してください。スピンカラムをコレクションチューブに再セットしてください。
- ステップ1で残った各サンプル450 μLを、コレクションチューブにセットしたスピンカラムに移してください。ステップ3と4を繰り返してください。
- DNA Wash Buffer #10008 750 μLを、コレクションチューブにセットしたスピンカラムに加えてください。
- 18,500 x gで30秒間遠心分離してください。
- コレクションチューブからスピンカラムを取り外し、液体を廃棄してください。スピンカラムをコレクションチューブに再セットしてください。
- 18,500 x gで30秒間遠心分離してください。
- コレクションチューブと液体を廃棄してください。スピンカラムは廃棄しないでください。
- DNA Elution Buffer #10009 50 μLを各スピンカラムに加え、新しい1.5 mLの遠心分離用チューブにセットしてください。
- 18,500 x gで30秒間遠心分離して、DNAを溶出してください。
- DNAスピンカラムを取り外し、廃棄してください。得られた溶出液が精製されたDNAです。(SAFE STOP) サンプルは-20℃で保存することができます。
VIII. PCRによるDNAの定量
推奨事項:
- コンタミネーションを防ぐため、ピペットチップはフィルター付きのものを使用してください。
- キットに含まれているコントロールプライマーは、ヒトとマウスのRPL30遺伝子 (#7014と#7015) に特異的で、通常のPCRまたは定量的リアルタイムPCRのどちらにも使用することができます。他の動物種でChIPを実施する場合は、その種で使用可能な適切なプライマーを設計し、最適なPCR条件を決定してください。
- 非特異的なPCR産物の増幅を防ぐため、ホットスタート用Taqポリメラーゼの使用を推奨します。
- プライマーの設定は非常に重要です。以下の条件に近いプライマーを設計してください:
プライマーの長さ: |
24塩基 |
Tm: |
60°C |
GC: |
50% |
アンプリコンのサイズ: |
150-200 bp (通常のPCR) |
|
80-160 bp (定量的リアルタイムPCR) |
通常のPCR:
- 0.2 mLのPCRチューブに適切な番号をラベルしてください。2%インプットサンプル、ポジティブコントロールのHistone H3サンプル、ネガティブコントロールのNormal Rabbit IgGサンプル、およびDNAコンタミネーションに対するコントロールとしてDNAなしのチューブを用意してください。
- 各チューブにDNAサンプル2 μLを分注してください。
- 分量不足を防ぐために、実際のチューブの本数に2本追加した量を全体量として、マスターミックスを下記の通りに調製してください。各反応用チューブにマスターミックス18 μLを加えてください。
試薬 |
PCR反応1回分の分量 (18 μL) |
Nuclease-free H2O |
12.5 µL |
10X PCR Buffer |
2.0 µL |
4 mM dNTP Mix |
1.0 µL |
5 µM RPL30 プライマー |
2.0 µL |
Taq DNA Polymerase |
0.5 µL |
- 以下のプログラムでPCRを開始してください:
a. |
初期変性 |
95℃ |
5分間 |
b. |
変性 |
95℃ |
30 秒間 |
c. |
アニーリング |
62℃ |
30 秒間 |
d. |
伸長反応 |
72℃ |
30 秒間 |
e. |
ステップb-dを繰り返し、計34サイクル反応させてください。 |
f. |
最終伸長反応 |
72℃ |
5分間 |
- 反応終了後、100 bpのDNAマーカーとともに、各PCR産物10 μLを2%アガロースゲルまたは10%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動してください。予想されるPCR産物のサイズは、Human RPL30 #7014では161 bp、Mouse RPL30 #7015では159 bpです。
定量的リアルタイムPCR:
- 使用するPCR装置のモデルに対応するPCRチューブあるいはPCRプレートに、適切なサンプル番号を記載してください。PCR反応には、ポジティブコントロールのHistone H3サンプル、ネガティブコントロールのNormal Rabbit IgGサンプル、DNAコンタミネーション確認用のコントロールとしてDNAを含まないチューブ、および標準曲線の作成と増幅効率の決定のため2%インプットクロマチンDNAの段階希釈サンプル (希釈なし、1:5、1:25、1:125) を用意してください。
- PCRチューブあるいはPCRプレートのウェルに、適切なDNAサンプル2 μLを加えてください。
- 以下のように、マスターミックスを調製してください。分量不足を考慮して、実際のチューブの本数に2本追加した量を全体量として、調製してください。各PCRチューブあるいは各ウェルにマスターミックス18 μLを加えてください。(SAFE STOP) 必要に応じて、遮光のためアルミホイルでプレートを覆い、4℃の場合は4時間まで、また-20℃の場合は一晩、装置が使用できるようになるまで保存してください。
試薬 |
PCR反応1回分の分量 (18 μL) |
Nuclease-free H2O |
6 µL |
5 µM RPL30 プライマー |
2 µL |
SimpleChIP® Universal qPCR Master Mix #88989 |
10 µL |
- PCR反応を以下のプログラムで開始してください:
a. |
初期変性 |
95℃ 3分間 |
b. |
変性 |
95℃ 15秒間 |
c. |
アニーリングおよび伸長: |
60℃ 60秒間 |
d. |
ステップb - cの繰り返し (合計40サイクル) |
- リアルタイムPCR装置に付属のソフトウェアを使用して、定量結果を解析してください。代替法として、Percent Input法により下記の公式を用いて、免疫沈降の効率を算出することもできます。この方法では、各免疫沈降で回収されたシグナルを、インプットクロマチン総量の割合 (%) で示します。
Percent Input = 2% x 2(C[T] 2%Input Sample - C[T] IP Sample)
C[T] = CT= PCR反応の閾値となるサイクル
参考:予想されるクロマチン収量
組織サンプルからクロスリンククロマチンを調製する場合、組織の種類によってクロマチン収量が大きく異なります。右の表には、4 x 106個のHeLa細胞の場合と比較しながら、25 mgの組織から調製した場合に予想されるクロマチン収量と、予想されるDNA濃度を示しています。これらは、プロトコールのセクションIVに記載した方法で決定しています。各組織において、Medimachine (BD Biosciences) またはDounce Homogenizerのどちらを用いてホモジナイズした場合もクロマチン収量はほぼ同じでした。ただし、多くの場合、Medimachineを用いて破砕した組織から得たクロマチンは、Dounce Homogenizerを用いた場合よりも免疫沈降効率が高くなりました。脳組織サンプルに関しては、Medimachineでは単細胞懸濁液になるまで十分に破砕することができないため、Dounce Homogenizerを使用してください。最適なChIPの結果を得るためには、免疫沈降1回あたり5-10 µgの断片化したクロスリンククロマチンの使用をお勧めします。組織によっては、免疫沈降1回に必要な組織量が25 mgを超えることがあります。
組織/細胞 |
総クロマチン収量 |
予想されるDNA濃度 |
脾臓 |
25 mgの組織に対し20-30 µg |
200 - 300 µg/mL |
肝臓 |
25 mgの組織に対し10-15 µg |
100 - 150 µg/mL |
腎臓 |
25 mgの組織に対し8-10 µg |
80 - 100 µg/mL |
脳 |
25 mgの組織に対し2-5 µg |
20 - 50 µg/mL |
心臓 |
25 mgの組織に対し2-5 µg |
20 - 50 µg/mL |
HeLa |
4 x 106個の細胞に対し10-15 µg |
100 - 150 µg/mL |
APPENDIX B:クロマチン断片化の最適化
クロスリンクしたクロマチンDNAを150-900 bpの長さに断片化する場合の最適条件は、断片化に用いる組織量または細胞数に対するMicrococcal Nucleaseの比率に大きく依存します。特定の組織または細胞タイプで、クロマチンの断片化の至適条件を決定するプロトコールを以下に示します。
- プロトコールのセクションI、II、IIIに記載の通り、125 mgの組織または2 × 107個の細胞 (5回分の免疫沈降に相当) を用いて、クロスリンクした細胞核を調製してください。セクションIIIのステップ2を行った後、下記に進んでください。
- 細胞核サンプルを100 μLずつ1.5 mLの遠心分離用チューブ5本に分注し、氷上に置いてください。
- Micrococcal Nuclease 3 μLを1X Buffer B + DTT混合液27 μLに加えてください (酵素を10倍に希釈します)。
- 希釈したMicrococcal Nuclease 0 μL、2.5 μL、5 μL、7.5 μL、10 μLを、ステップ2で用意した5本の各チューブに加え、チューブを数回転倒混和し、頻繁に撹拌しながら37℃で20分間インキュベートしてください。
- 10 M EDTA 0.5 μLを加えることで断片化を停止し、チューブを氷上に置いてください。
- 16,000 x gで1分間、4℃で遠心分離して細胞核を沈殿させ、上清を除去してください。
- 細胞核を1X ChIP Buffer + PIC混合液200 μLに再懸濁してください。氷上で10分間インキュベートしてください。
- ライセートを数回ソニケーション処理し、核膜を破砕してください。ソニケーション処理の合間に、サンプルを30秒間氷水に浸してインキュベートしてください。細胞核を完全に溶解するために必要な最適条件は、ソニケーション処理の前後に細胞核を光学顕微鏡で観察することで決定できます。VirTis Virsonic 100 Ultrasonic Homogenizer/Sonicator (1/8-inch probe) を6に設定し、20秒間のソニケーション処理を3回行うことで、HeLa細胞核は完全に溶解されます。代わりに、Dounce Homogenizerで20回ホモジェナイズしても細胞核を破砕できますが、破砕が不完全になる可能性があります。
- 9,4000 x gで10分間、4°Cで遠心分離して、ライセートを清澄化してください。
- ソニケーション処理した各ライセート50 μLを新しい遠心分離用チューブに移してください。
- 各サンプル50 μLに、ヌクレアーゼフリー水100 μL、5M NaCl 6 μL、RNase A 2 μLを加え、ボルテックスにより混和し、37℃で30分間インキュベートしてください。
- RNase Aで処理した各サンプルに、Proteinase K 2 μLを加え、ボルテックスにより混和し、65℃で2時間インキュベートしてください。
- 各サンプル20 μLを、100 bp DNAマーカーとともに1%アガロースゲルで電気泳動し、DNA断片のサイズを確認してください。
- 得られたDNAが150-900 bp (1-5個のヌクレオソームに相当) の範囲になる断片化条件を確認してください。この最適化プロトコールを用いて検討した目的サイズのDNA断片を生じる希釈したMicrococcal Nucleaseの量は、目的サイズのDNA断片を生じる1回分の免疫沈降サンプル (破砕した組織25 mgまたは4 x 106個の培養細胞) に加えられるMicrococcal Nuclease原液の10倍量に相当します。例えば、本プロトコールで希釈したMicrococcal Nuclease 5 μLにより150-900 bpのDNA断片が生じた場合、セクションIIでクロマチンを断片化する際には1回のIP prepにつき0.5 μLのMicrococcal Nuclease原液を加えることになります。
- 目的サイズのDNAが得られなかった場合は、サンプル毎にMicrococcal Nuclease量を調整しながら、本最適化プロトコールを繰り返してください。もしくは、断片化時間を調整することでDNA断片化のサイズを最適化することができます。
APPENDIX C:トラブルシューティングガイド
問題 |
考えられる原因 |
推奨される対処法 |
1. 断片化されたクロマチンの濃度が低すぎる。 |
細胞数が不十分、あるいは断片化後の細胞核の破砕が不完全。 |
クロマチンサンプルのDNA濃度が50 μg/mLに近い場合は、1回の免疫沈降あたり少なくとも5 μgとなるようにクロマチン調製液を追加して、プロトコールに従って実験を続けてください。
クロスリンクの前に、カウント用に別に用意したディッシュで細胞数を計測し、正確な細胞数を確認してください。さらに、顕微鏡下でソニケーション前後の細胞核を観察し、核の完全な破砕を確認してください。
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2. クロマチンの断片化が不十分で、断片が大きすぎる (900 bpを超える)。 |
細胞のクロスリンクが過剰。10分間以上クロスリンクを行うと、クロマチンの断片化を阻害する可能性がある。
細胞数が多すぎる、またはMicrococcal Nuclease量が足りない。
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ホルムアルデヒド濃度を一定にして、時間経過に伴う変化を確認してください。クロスリンク時間を10分以下に短縮してください。
クロスリンクの前に別に用意したプレートの細胞数を計測し、Appendix Bを参照してクロマチンの断片化条件を最適化します。
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3. クロマチンが過剰に断片化され、DNA断片のサイズが小さすぎる (150 bpのモノヌクレオソーム1個分の断片ばかりが検出される)。ヌクレオソーム1個分のDNAの長さになるまでクロマチンを完全に断片化すると、特に長さが150 bp以上のアンプリコンの場合、PCRでシグナルが減弱する可能性がある。 |
クロマチン断片化に加えた細胞数が不十分、またはMicrococcal Nuclease量が多すぎる。 |
クロスリンクの前に別に用意したプレートの細胞数を計測し、Appendix Bを参照してクロマチンの断片化条件を最適化します。 |
4. インプットDNAのPCR反応で産物が得られない、または得られる量が非常に少ない。 |
PCR反応に使用したDNA量が十分でない、またはPCR条件が最適でない。
PCRの増幅領域が、ヌクレオソームフリー領域に及んでいる。
IPに加えたクロマチンが十分でない、またはクロマチンの断片化が過剰。
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PCR反応により多くのDNAを使用するか、サイクル数を増加させてください。
クロスリンク後に断片化したクロマチンから精製したDNAを用いて、プライマーセットに対する最適なPCR条件を検討してください。
アンプリコンの長さが150 bp以下になるように、別のプライマーセットを設計してください (セクションIIIのプライマー設計に関する推奨事項を参照してください)。最適なChIP結果を得るために、免疫沈降1回あたりクロマチン5-10 μgを加えてください。上記1、3の対応策も参照してください。
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5. ポジティブコントロールであるHistone H3抗体の免疫沈降サンプルとRPL30プライマーを用いたPCR反応で増幅が起こらない。 |
免疫沈降に加えたクロマチンまたは抗体が十分でない、または免疫沈降のインキュベーション時間が短すぎる。
Protein G Beadsからのクロマチンの溶出が不十分である。
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各免疫沈降反応にクロマチン5-10 μgと抗体10 μLを加えたことを確認して一晩インキュベートし、Protein G Beadsを加えてさらに2時間インキュベートしてください
Protein G Beadsからのクロマチンの溶出には65℃が最適です。頻繁に撹拌してBeadsの懸濁状態を保ってください。
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6. ネガティブコントロールのRabbit IgGの免疫沈降産物と、ポジティブコントロールのHistone H3抗体の免疫沈降産物で、PCRでの増幅が同程度になる。 |
免疫沈降に使用したクロマチン量が過剰、または十分でない。あるいは、免疫沈降に抗体を加えすぎている。
PCR反応に加えたDNAが多すぎる、またはサイクル数が多すぎる。
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各免疫沈降反応に対して加える量は、クロマチン15 μg、Histone H3 antibody 10 μLを上限としてください。Normal rabbit IgG量を一回のIPあたり1 μLまで減らしてください。
PCR反応に加えるDNAを減らすか、PCRのサイクル数を減らしてください。PCRの線形増幅領域内でPCR産物を解析することが非常に重要です。そうしなければ、増幅前のDNA量の差が正確に測定できません。
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7. 解析したいターゲットの抗体の免疫沈降産物で、PCR反応による増幅が起こらない。 |
PCR反応に加えたDNA量が十分でない。
免疫沈降に使用した抗体量が十分でない。
免疫沈降ではワークしない抗体である。
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PCR反応により多くのDNAを使用するか、サイクル数を増加させてください。
通常は抗体1-5 μgを免疫沈降に加えます。しかし、実際に必要な量は抗体によって大きく異なります。免疫沈降反応液に加える抗体の量を増やしてください。
別の抗体を検討してください。
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