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可溶性因子のEMTへの寄与

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可溶性因子のEMTへの寄与

パスウェイの説明:

いくつかのサイトカインや増殖因子は、がん細胞に上皮間葉転換 (EMT) を誘導することができます。この中にはがん細胞自身が分泌するものもあれば、がんの微小環境内にある間質細胞が分泌するものもあります。これら可溶性のリガンドは、対応する受容体 (受容体型チロシンキナーゼ (RTK) やTGF-β受容体など) に結合して細胞内シグナル伝達経路を活性化します。これによってZn-finger型転写因子 (SNAI1、SLUG、ZEB1、ZEB2など) やbHLH型転写因子 (TWIST1など) の発現を誘導し、EMTを促進します。

TGF-βシグナル伝達経路は、一部の状況下ではがんに抑制的に機能するにも関わらず、EMT誘導のプロセスに強く関与しています。古典的なTGF-β/BMPシグナル伝達では、リガンド (TGF-β1、TGF-β2、BMPなど) が対応するI型とII型キナーゼ受容体に結合し、リガンド-受容体のヘテロ三量体を形成すると、II型受容体がI型受容体を活性化します。するとリガンド/受容体に特異的なSMAD (R-SMAD) がリン酸化されます。リン酸化したR-SMAD (BMPシグナル伝達の場合はSMAD1/5/8、TGF-βシグナル伝達の場合はSMAD2/3) は、共通のメディエーターであるco-SMAD (SMAD4) と結合し核へ移行します。SMAD複合体は、核でEMTに関与する標的遺伝子 (SNAIL、SLUGなど) の転写を促進します。この経路を促進または抑制する細胞内タンパク質も知られており、促進するものにはSARAなどがあります。一方、抑制するものの代表例としては抑制型SMAD (I-SMAD:SMAD6/7) が挙げられます。これらはR-SMADのリン酸化を抑制し、EMTの誘導に抑制的に機能します。SMURFタンパク質 (SMURF1/2) は、SMAD7を細胞膜にリクルートすることによってI-SMADの機能を促進します。I-SMADは受容体との結合を競合することによって、R-SMADの活性化を抑制すると考えられています。

TGF-βはSMAD非依存的にPI3K/AKT経路やMAPK経路を活性化することも知られており (非古典的TGF-βシグナル伝達経路)、これらもEMTの誘導に寄与している可能性があります。例えば、がん遺伝子型のRTKによるPI3K経路やRas/Raf経路の活性化は、TGF-β経路と協調的にがん細胞のEMTを促進すると考えられてきました。Ras/Raf経路はEMTを促進する主要な遺伝子の転写を活性化することが知られています。一方、PI3K経路はGSK3βによるβ-Cateninのリン酸化を抑制して、β-CateninによるEMT関連遺伝子の転写を促進します。また、TGF受容体はp38 MAPKの活性化も誘導し、これによってEMT関連転写因子FOXC2が活性化します。

EMTの大きな特徴の1つにE-Cadherinの発現低下が挙げられます。E-Cadherinは接着結合を構成する中心的なタンパク質で、上皮の完全性の維持に寄与する分子です。EMT関連転写因子 (SNAILなど) はE-Cadherin遺伝子の転写を抑制するとともに、マトリクスメタロプロテアーゼ (MMP) の発現を誘導します。MMPは上皮E-Cadherinを分解し、上皮の完全性が失われていきます。β-CateninはE-Cadherinの裏打ちタンパク質で、E-Cadherinが分解されることで接着結合から解離します。核に移行したβ-Cateninは転写因子として機能し、Wntシグナルの標的遺伝子を活性化します。

Wntシグナル伝達の異常は、大腸がんなど、いくつかのがんにみられる特徴で、その90%でβ-Cateninが過剰発現しています。Wntシグナル伝達が不活性な状態では、細胞質のβ-Cateninはユビキチンリガーゼ複合体 (SCF/βTrCP) によって速やかにユビキチン化され、プロテアソームによる分解を受けます。このβ-Cateninの分解にはGSK3βによるリン酸化が必要ですが、WntがFrizzled受容体に結合し、Wntシグナル伝達が活性化されるとGSK3βが阻害され、β-Cateninの分解は抑制されます。こうして蓄積したβ-Cateninが核に移行して転写因子TCF/LEFに結合し、これが転写抑制複合体Groucho/HDACと置き換わってEMTエフェクター (SNAIL、N-Cadherinなど) の転写を活性化します (古典的Wntシグナル伝達経路)。骨肉腫、胃がん、前立腺がんなどで、Wnt/β-Cateninを介したEMTが起こることが分かっています。LEF1はこれらのエフェクターに加えてEMTの促進に関与するmiRNAの発現にも寄与します。このほかにWnt/β-Catenin/LEF経路を制御する分子として、SRY-Box 10 (SOX 10) などが知られています。SOX 10はβ-CateninとTCF/LEFの結合に競合することでEMTエフェクターの転写を阻害します。

Wnt5aとWnt5bは、転移性の肝がん、肺がん、大腸がん、乳がんの細胞株や、悪性度の高い臨床がん検体で高発現することが知られています。これらはFrizzled2 (Fxd2) 受容体に結合し、 β-Catenin非依存的にSTAT経路やMEK/ERK経路を活性化させ (非古典的Wntシグナル経路)、EMTを誘導します。Wnt5A/Frizzledはこのほか、膵臓がんでJNK経路、黒色種でPKC経路といった、非古典的Wntシグナル伝達を介してEMTを誘導することが報告されており、いずれの場合もWnt5aの発現が細胞の運動性を増加させます。Wnt5aによるPKCの活性化は、黒色腫細胞株でFilamin Aの発現とプロセシングを促進し、アクチン骨格のリモデリングとストレスファイバーの形成を誘導します。これは細胞の運動性に必要なプロセスで、運動性の増加とよく一致する知見です。一方、古典的Wntシグナル経路とは対照的に、Wnt5aはほとんどの大腸がん細胞株や臨床検体では発現が低く抑えられており、EMTマーカーの発現と逆相関します。一方、Wnt5aの発現が高いがんに注目すると、細胞内カルシウム濃度と非古典的Wntシグナルが亢進しており、EMTや運動性、浸潤能が低下しています。Wnt5aの基底レベルの低い大腸がん細胞株にこれを過剰発現させると、カルシウムイオンレベルが上昇し、EMTマーカーの発現や細胞の運動性、細胞増殖が阻害されます。このときPKCやCaMKIIは活性化されますが、β-Cateninの核局在化が妨げられ、EMTエフェクター (TWISTやZEB1など) の発現は誘導されません。

Notchシグナル伝達は、接触分泌によるシグナル伝達経路で、隣接する細胞の表面に発現するリガンド (Jagged 1/2、DLL1/3/4) がNOTCH受容体 (NOTCH1-4) にシグナルを伝えます。リガンドが結合することで、ADAM/TACEプロテアーゼによってNotcnの切断、γ-セクレターゼの切断が起こり、NOTCHの細胞内領域 (NICD) が放出されます。NICDは核に移行し、下流標的遺伝子の転写を調節します。核内でNICDは、核で転写因子複合体からの転写抑制因子であるKDM5Aを取り除き、EMTを促進する遺伝子の発現を誘導します。Notchシグナル伝達はT細胞の腫瘍 (T-ALLなど) への関与が最もよく知られていますが、前立腺がんや膵臓がんといった一部の上皮がんでもEMTプロセスに寄与することが報告されています。

参考文献:

本パスウェイ図の作成にご協力いただいたレノックス・ヒル病院Northwell Health、Friedman Diabetes Institute所長のDimiter Avtanski博士に感謝いたします。

作成日:2018年9月
アセチル化酵素
アセチル化酵素
代謝酵素
代謝酵素
アダプター
アダプター
メチルトランスフェラーゼあるいはGタンパク質
メチルトランスフェラーゼあるいはGタンパク質
アダプター
アポトーシス/オートファジー調節因子
ホスファターゼ
ホスファターゼ
細胞周期の調節因子
細胞周期の調節因子
タンパク質複合体
タンパク質複合体
脱アセチル化酵素あるいは細胞骨格タンパク質
脱アセチル化酵素あるいは細胞骨格タンパク質
ユビキチン/SUMOリガーゼあるいは脱ユビキチン化酵素
ユビキチン/SUMOリガーゼあるいは脱ユビキチン化酵素
成長因子/サイトカイン/発生調節タンパク質
成長因子/サイトカイン/発生調節タンパク質
転写因子あるいは翻訳因子
転写因子あるいは翻訳因子
GTPase/GAP/GEF
GTPase/GAP/GEF
受容体
受容体
キナーゼ
キナーゼ
その他
その他
 
直接的プロセス
直接的プロセス
一時的なプロセス
一時的なプロセス
転座プロセス
転座プロセス
刺激型修飾
刺激型修飾
阻害型修飾
阻害型修飾
転写修飾
転写修飾
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