ErbB/HERシグナル伝達
各シグナル伝達経路に関連する製品が記載されたダウンロード可能なパスウェイ図の全リストはこちら
2026 © Cell Signaling Technology. All Rights Reserved
ErbB受容体チロシンキナーゼファミリーは、4つの細胞表面受容体:ErbB1/EGFR/HER1、ErbB2/HER2、ErbB3/HER3、およびErbB4/HER4、から成ります。ErbB受容体は、典型的な細胞膜受容体型チロシンキナーゼで、リガンドの結合と受容体の二量体化によって活性化されます。リガンドには受容体への特異性を示すもの (例:EGF、TGF-α、AR、Epigen結合型EGFR) と、1つまたは複数の関連受容体へ結合するものがあります (例:Neuregulins 1-4はErbB3とErbB4に結合し、HB-EGF、Epiregulin、β-cellulinは、EGFRとErbB4を活性化します)。ErbB2のリガンドはまだ1つも明らかになっていません。しかし、最近の構造研究から、ErbB2の構造は、ある種のリガンドの活性化状態と類似しており、二量体化が起こりやすいことが示唆されています。
ErbB受容体はAktやMAPK、その他多くの経路を介してシグナルを伝達し、細胞の増殖、遊走、分化、アポトーシス、ならびに運動性を制御しています。ErbBファミリーおよびそのリガンドの一部は、様々な種類のがんにおいて、しばしば過剰発現、増幅、変異しているため、重要な治療標的となっています。例えば、EGFRの増幅や変異は神経膠腫やNSCLCにおいて認められ、ErbB2の増幅は乳がん、卵巣がん、膀胱がん、NSCLC、その他の様々な腫瘍において認められています。前臨床試験および臨床試験では、2つのErbB受容体をターゲットにすると、単一ターゲットよりも優れた有効性を示すことが明らかとなっています。
ErbBファミリータンパク質は、細胞表面における受容体としての機能に加えて、核内にも存在して、キナーゼおよび転写制御因子として作用します。例えば、EGFRは核内に輸送されてチロシンキナーゼとして機能し、PCNAをリン酸化し安定化します。同様に、膜結合型ErbB2はImportin β1およびNup358と相互作用し、エンドサイトーシス小胞によって核内に移行します。核内では、COX-2など、下流にある複数の遺伝子の転写を制御します。加えて、NRGやTPA刺激はγ-セクレターゼによってErbB4の切断が促進されると、80 kDaの細胞内ドメインが放出され、それが核内に移行して細胞の分化やアポトーシスを誘導します。活性化と切断が起こると、ErbB4はTAB2およびN-CoRと複合体を形成し、遺伝子の発現を抑制します。
ErbBネットワークを通じたシグナル伝達は、正・負のフィードバックおよびフィードフォワードループを密に繰り返すことによって制御されます。これには転写依存型の初期ループ、新たに合成されたタンパク質およびmiRNAを介する後期ループなどがあります。例えば、活性化した受容体は、脱リン酸化、受容体のユビキチン化、またはエンドソームによる選別とリソソームによる分解を介して活性受容体を細胞表面から除去することで、スイッチを「オフ」状態にできます。
参考文献:
- Arteaga CL, Engelman JA (2014) ERBB receptors: from oncogene discovery to basic science to mechanism-based cancer therapeutics. Cancer Cell 25(3), 282–303.
- Avraham R, Yarden Y (2011) Feedback regulation of EGFR signalling: decision making by early and delayed loops. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 12(2), 104–17.
- Baselga J, Swain SM (2009) Novel anticancer targets: revisiting ERBB2 and discovering ERBB3. Nat. Rev. Cancer 9(7), 463–75.
- Ferrer-Soler L, Vazquez-Martin A, Brunet J, Menendez JA, De Llorens R, Colomer R (2007) An update of the mechanisms of resistance to EGFR-tyrosine kinase inhibitors in breast cancer: Gefitinib (Iressa) -induced changes in the expression and nucleo-cytoplasmic trafficking of HER-ligands (Review). Int. J. Mol. Med. 20(1), 3–10.
- Moasser MM (2007) The oncogene HER2: its signaling and transforming functions and its role in human cancer pathogenesis. Oncogene 26(45), 6469–87.
- Tebbutt N, Pedersen MW, Johns TG (2013) Targeting the ERBB family in cancer: couples therapy. Nat. Rev. Cancer 13(9), 663–73.
- Yarden Y, Pines G (2012) The ERBB network: at last, cancer therapy meets systems biology. Nat. Rev. Cancer 12(8), 553–63.
- Yarden Y, Shilo BZ (2007) SnapShot: EGFR signaling pathway. Cell 131(5), 1018.
この図の作成にご貢献下さった、Merrimack Pharmaceuticals Inc. (マサチューセッツ州、ケンブリッジ) のJinyan Du博士に感謝いたします。
作成日:2004年10月
改訂日:2016年9月