免疫細胞マーカーガイド (ヒト)
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免疫系は、自然免疫系および適応免疫系によりがん細胞を特定し排除しますが、このような抗腫瘍応答は、免疫抑制として知られるプロセスを介して、微小環境により阻害されます。がん免疫療法の目的は、免疫抑制および免疫刺激の両方のメカニズムを操作し、抗腫瘍免疫応答を高めることです。したがって、腫瘍の増殖と抑制における、腫瘍浸潤性免疫細胞の役割を理解することが重要です。悪性細胞と免疫細胞の相互作用は発がんに動的に作用し、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子のシグナルネットワークが密接に関わるため、組織の環境も重要になります。ここでは、主な免疫系のエフェクター細胞とその確立された細胞表面マーカー、またそれらのがんの進行における機能について総説します。
T細胞は適応免疫で中心的な役割をもつ細胞の一つで、通常CD3の発現を指標に特定できます。T細胞は自身の細胞表面に発現するT細胞受容体 (TCR) を介して、主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) によって提示された抗原ペプチドを認識します。循環している腫瘍細胞抗原はリンパ節に送られ、CD4+ T細胞 (ヘルパーT細胞) とCD8+ T細胞 (細胞傷害性T細胞) に提示されます。T細胞は抗原を認識することで活性化され、活性化されたヘルパーT細胞はIFNγなど多様なサイトカインを分泌します。活性化された細胞傷害性T細胞は、腫瘍特異的抗原を発現している細胞を認識し、PerforinあるいはGranzymeを介したアポトーシスを誘導します。
様々な分子の発現が、T細胞機能の指標として利用されています。CD69とCD25はともにTCRの下流で発現が上昇しますが、そのタイミングは異なり、CD69はTCRによる抗原認識の数時間後に検出されますが、CD25の発現はそれより遅れてみられます。慢性的な感染やがんの環境下では、T細胞のエフェクター機能が低下する「T細胞の疲弊」がみられます。このような細胞ではPD-1、TIM-3、LAG3の発現がみられますが、これらの分子はT細胞の活性化においても発現が増加します。ナイーブT細胞、メモリーT細胞、エフェクターT細胞などその他のタイプのT細胞は、CD45RA、CD45RO、CD62L (またはCCR7) の発現の組み合わせをもとに、互いに区別することができます。CD4+T細胞には、異なるサイトカインを分泌して異なる免疫応答を誘導する複数のサブタイプがあります。これらは転写因子の発現パターンを解析することで区別することができます。例えば、抗腫瘍機能をもちIFNγの産生を行うTh1細胞は一般にT-Betを発現しています。一方、サイトカインの産生やその他の機構を介して腫瘍免疫応答を抑制し、腫瘍を促進する機能をもつ制御性T細胞 (Treg) は、FoxP3を発現しています。
樹状細胞 (DC) は自然免疫系を構成する細胞で、ナイーブT細胞に抗原を提示して適応免疫を開始し、T細胞の活性化とサイトカインの産生を誘導する機能を持ちます。DCは従来型DCと形質細胞様DCのサブクラスに大きく分類されます。形質細胞様DCはI型IFNの大量産生に特化した細胞であり、Siglec-HとCD317と共発現するのが特徴です。一方、従来型DCはT細胞への抗原提示に特化した細胞であり、CD11cとHLA-DRを共発現するのが特徴です。従来型DCはさらに、CD1cを発現しCD4+ T細胞の活性化を促進するものと、CD141、XCR1またはCLEC9Aを発現しCD8+ T細胞をクロスプレゼンテーションによって活性化するものに分類されます。
マクロファージもまた自然免疫系の細胞であり、CD68とMHCIIの発現およびCD11cの欠乏により特定されます。ファゴサイトーシスに特化しており、また免疫反応に影響を与えるサイトカインを分泌します。マクロファージは、一般的に炎症促進性 (M1型) または抗炎症性 (M2型) に分類されます。M1型マクロファージはCD80、CD86またはiNOSの発現により特定され、悪性細胞のファゴサイトーシスとT細胞を活性化するリガンドの産生により、抗腫瘍免疫反応を促進します。逆に、M2型マクロファージはCD163またはCD206の発現により特定され、IL-10など免疫抑制性サイトカインの分泌とTh2反応の促進により、腫瘍の成長を促進することができます。M2型マクロファージは免疫抑制性酵素であるArginaseも発現することができます。これは腫瘍微小環境からのアルギニンを枯渇させ、その結果T細胞の増殖と機能を低下させます。
ナチュラルキラー (NK) 細胞は自然免疫の主要機能を担う代表的な細胞です。これらはがん細胞を認識して傷害する細胞で、がん細胞におけるMHCクラスIの発現低下や、腫瘍リガンドの発現上昇をNK細胞上の受容体で感知しています。NK細胞は通常CD56とCD16を発現し、CD3を発現しないことを利用して特定されます。
骨髄由来抑制細胞 (MDSC) は多様な未成熟の免疫抑制細胞集団で、様々な腫瘍でみられます。これらはNOS2やArginase 1の発現を介してCD8+ T細胞の活性化阻害し、Tregの発生を誘導します。また、M1/M2型マクロファージの比率をM2型に傾けることが知られています。MDSCには単球性MDSCと多形核細胞性MDSCの2つのの大きなグループがあります。これらの細胞には、1) 本当に単球や好中球とは異なるのか、2) どのようなメカニズムで分化して蓄積するのか、3) 抗がん治療に対する抵抗性にどのように貢献するか、など不明な点が多く残されています。MDSCに特異的なマーカーは現在活発に研究されていますが、現在のところCD11bを発現し、HLA-DRを発現しないことを利用して特定されています。また、単球性MDSCの場合はさらにCD14、多形核細胞性MDSCの場合はさらにCD15の発現を利用して特定されます。
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本パスウェイ図の作成にご協力くださいました、マサチューセッツ・メディカル・スクール大学のKate Fitzgerald博士、オレゴン健康科学大学のCourtney Betts博士、マサチューセッツ総合病院がんセンターおよびハーバード大学メディカルスクールのShadmehr (Shawn) Demehri博士に深く感謝いたします。
作成日:2019年3月