微小管は、細胞の極性形成、極性移動、細胞内における小胞輸送、そして有糸分裂における染色体分離に必要です。微小管 (Microtubule:MT) は、α/β-Tubulinのヘテロ二量体からなる非平衡性のポリマーで、二量体の集合に続いて、β-Tubulinサブユニット上でGTPの加水分解が起こります。微小管の多くは、重合中心を核としています。最も広く認められている微小管の特性は、動的不安定性です。ゆっくりとしたプラス端の伸長と、急速な脱重合 (伸長から短縮:カタストロフ)、さらにそれに続く短縮から伸長への変化 (レスキュー) が共役したプロセスです。微小管のマイナス端も動的不安定性を示しますが、プラス端ほどではなく、通常キャップされてMT重合中心に固定されているため、多くの場合、微小管の動態には関与しません。
微小管の動的に不安定な状態と安定な状態のバランスの維持は、多くの場合、Tubulin二量体あるいは重合した微小管に結合するタンパク質によって制御されています。Tubulin二量体に結合するタンパク質には、カタストロフの頻度を増してTubulinを隔離しMTの運動性を高めるStathminと、微小管のプラス端上へのTubulin二量体追加を促進させてMTの伸長速度を増加させるCRMP2 (collapsin response mediator protein) などがあります。重合したMTと結合する他のタンパク質には、MTを束ねるもの (例:MAP1c)、MTを安定化するもの (例:Tau)、およびMTを動的な状態に保つもの (MAP1b) などがあります。MTの動態を制御する主要なシグナル伝達経路に、GSK-3βが関与します。これは、基底レベルの成長条件では一般的に活性化しているキナーゼですが、MTの伸長や動きを促進するようなシグナルに応答して、局所的に不活化します。
上記の因子に加えて、多くのMTのモータータンパク質や非モータータンパク質の中にも、MTの動きを助けるものがあります。Xenopus microtubule associated protein 215 (XMAP215) のようなタンパク質は、Tubulinの二量体に結合し、伸長しているプラス端への取り込みを促進することによってMTの重合を促します。XMAP215はまた、いくつかのMTプラス端結合タンパク質 (+TIPS) と競合することがあり、その中心的なオーガナイザーは、末端結合タンパク質のEB1ではないかと考えられています。Adenomateous polyposis coli (APC) タンパク質とプラス端結合タンパク質の複合体は、MTの伸長期を長期化させることによってMTを安定化します。他方、MTの不安定性は、Kinesin-13ファミリーに属するいくつかの非運動性のKinesinによって促進されます。MCAKは、Kinesin-13ファミリータンパク質の中でも最も研究が進んでいるKinesinで、有糸分裂期のセントロメアに結合します。in vitroでは、MTのプラス、マイナス両端に結合します。MCAKのMT末端への結合は、プロトフィラメント間の側部の相互作用を弱めることによって、カタストロフへの移行を加速させます。
Tubulinは、アセチル化、ポリグルタミル化、ポリグリシル化などの様々な翻訳後修飾を受けますが、これらは、特定のMTモーターやその他のタンパク質との結合を変化させ、MTの安定性や動態に影響を及ぼすことが明らかにされています。
コロラド州立大学 (コロラド州、フォート・コリンズ) のJames Bamburg教授に図表をレビューしていただいたことを感謝いたします。
作成日:2008年9月
改訂日:2012年9月