細胞内フローサイトメトリー解析では、抗体が細胞膜を透過し、標的へ結合するために、細胞の固定と透過化処理を細胞形態を破壊することなく行う必要があります。
特に翻訳後修飾 (PTM) の解析をする際、良好な結果を得るために重要項目を、以下で説明します。
フローサイトメトリーでリン酸化などのPTMを解析する場合、パスウェイが活性化しているタイミングで細胞を固定する必要があります。4%のホルムアルデヒド (メタノールフリー) による固定操作で、細胞内タンパク質やそれに付加された修飾が適切にクロスリンクされます。また、この固定操作で、ホスファターゼなどの脱修飾酵素の活性の一部は低下すると考えられます。一部の標的では、クロスリンクの程度によってエピトープがマスクされることがあり、低濃度のホルムアルデヒドで固定する場合もあります。
氷冷した90%メタノールを滴下する透過化処理で、アルデヒドで固定したPTMエピトープは変性することなく、細胞構造を維持しながら抗体の透過性を上げることができます (1)。
全血のEx vivo刺激モデルでは、血液マトリクスにおける末梢血細胞の大きな変化がみられ、生理的に関連するシグナル伝達経路やその他細胞プロセスの解析モデルとして利用できます。4%ホルムアルデヒド処理でタンパク質相互作用を安定化し、続いて0.1% Triton X-100で赤血球細胞 (RBC) の溶解処理をします (1)。これによって、50%メタノールによる浸透化処理で細胞表面マーカーが保持されるようになり、細胞表面と細胞内の両方の標的を同時解析できるようになります。
Btk (D3H5) Rabbit mAb #8547: CSTのFlowプロトコールに従い、ヒト全血を固定および透過化処理した後、#8547を用いて免疫染色しました。前方散乱光 (FSC)、側方散乱光 (SSC) のデータからゲートを設定し、リンパ球細胞を選別しました (A)。また、リンパ球の中からT細胞とB細胞の集団をを区別するため、これらの細胞はCD3-PEとCD19-APCで同時に染色してあります (B)。B細胞 (赤) とT細胞 (青) の細胞集団にそれぞれゲートを設定し、Btkの平均蛍光強度をヒストグラムとして示しました (C)。
実験を計画する際には、細胞システムの複雑さを常に考慮する必要があります。一つの例として、基底状態の修飾レベルが高い場合、目的のパスウェイを刺激したとしても、それを上回る強度の検出シグナルが検出されにくいため、結果的に偽陰性として解釈される可能性があります。これはリン酸化タンパク質ではよくある現象です。この問題に対処するために、まず標的タンパク質の基底リン酸化レベルを予備実験で確認します。固定、透過化したサンプルをホスファターゼ処理することで、シグナルの低下が観察される場合は、基底リン酸化レベルが高いと考えられます。生細胞の内在性のリン酸化レベルは、血清飢餓やキナーゼ阻害剤処理によって低下させることができます。逆に、一過性のリン酸化イベントは、内在性ホスファターゼ活性が原因で検出することが困難となることがあり、この場合は、ホスファターゼ阻害剤処理を加えることで、上昇したリン酸化レベルが保持されることがあります。
A | B | C |
Phospho-S6 Ribosomal Protein (Ser235/236) (D57.2.2E) XP® Rabbit mAb (Alexa Fluor® 488 Conjugate) #4803によるフローサイトメトリー解析: ヒト全血サンプルをCST Flow Alternate Protocolに従って固定、浸透化処理しました。これらを未処理のまま (A)、あるいはλ phosphatase処理 (B)、TPA #4174処理 (C) した後、#4803で染色し、フローサイトメトリーで解析しました。
コントロールを準備することで、そのアッセイが適切にワークしているかどうかを判断できます。フローサイトメトリー実験の結果を解釈するためには、考慮されるべき要因の数を検討して、コントロールを注意深くデザインすることが特に重要です。これを念頭に置き、CSTは、ワークフロー内に以下のタイプのコントロールを組み合わせることを推奨しています。
以下の表は、上の3つのカテゴリのそれぞれに関連する適切なコントロールの一覧です。
コントロール | なぜ必要なのですか? |
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未染色細胞 |
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完全染色された細胞 |
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一種類の蛍光マーカーだけで染色された細胞サンプル/ビーズ |
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アイソタイプコントロール |
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Fluorescence Minus One (FMO) 染色 |
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未刺激または未処理サンプル |
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ポジティブ細胞 (刺激済み) |
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生死判別色素で染色された細胞 (例、Propidium Iodide) |
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