! |
この!マークは、実施中のCUT&RUN反応の数に応じて量を変更する、重要なステップであることを意味します。 |
!! |
この!!マークは、操作を進める前にバッファーを希釈する、重要なステップであることを意味します。 |
SAFE STOP |
これは、実験操作を中断する必要がある場合に、プロトコールを安全に中断できるポイントを示します。 |
I. 細胞の調製と一次抗体の結合
注意:細胞調製の手順 (ステップ6 - 16) は、細胞へのストレスを最小限にするため、室温で連続して実施する必要があります。DNAの断片化を最小限にするため、細胞を再懸濁する際には、激しいボルテックスと気泡の混入を避けてください。
注意:このプロトコールは、反応あたり100,000個の細胞を使用するとしています。ただし、同じ反応条件は、サンプルあたり10,000 - 250,000個の細胞に対しても使用できます。
注意:細胞の透過化に推奨されたジギトニンの量は過剰であり、ほとんどの細胞株の透過化に十分です。ただし、すべての細胞株がジギトニンに対し同じ感受性を示すわけではありません。実験を開始する前に、APPENDIX Aに記載されたプロトコールに従って、使用する細胞株を試験することをお勧めします。ジギトニン処理により、90%以上の細胞が透過化されるはずです。
実験開始前の準備:
! すべてのバッファーの量は、実施するCUT&RUN反応の数に応じて比例的に増加させる必要があります。
- Concanavalin A Magnetic Beadsを、ビーズ懸濁液がチューブからこぼれないように注意深くピペッティングで上下させて再懸濁してください。CUT&RUN反応ごとに、ビーズ懸濁液10 µLを新しい1.5 mLチューブに移してください。
注意:ホルテックスを繰り返すとConcanavalin Aがビーズから外れてしまうことがあるので、Concanavalin A Magnetic Beadsはボルテックスしないでください。
- ビーズ懸濁液10 µLごとにConcanavalin A Bead Activation Buffer 100 µLを加えてください。ピペッティングで静かに上下させてビーズを混合してください。
- チューブを溶液が透明になるまで磁気ラックに置き (30秒間から2分間)、その後、液体を取り除いてください。
注意:ビーズの損失を避けるため、液体はピペットマンを使用して取り除いてください。真空吸引はしないでください。
- チューブを磁気ラックから外してください。ステップ2と3を繰り返して、2回目のビーズの洗浄を実施してください。
- ビーズ懸濁液の最初の量と同量 (サンプルあたり10 µL) のConcanavalin A Bead Activation Bufferを加えて、ピペッティングで上下させて再懸濁してください。活性化したビーズは、セクションI、ステップ13まで氷上で保管してください。
- 細胞のストレスを最小限にするため、室温で新鮮な細胞培養液を回収してください。各抗体/MNase反応あたり100,000個の細胞のほか、インプットサンプル用に100,000個の細胞を回収してください。ポジティブコントロールのTri-Methyl-Histone H3 (Lys4) (C42D8) Rabbit mAbと、ネガティブコントロールのRabbit (DA1E) mAb IgG XP® Isotype Control (CUT&RUN) に対する反応も、必ず含めてください。
- 細胞懸濁液を、室温、600 x gで3分間遠心分離して、液体を取り除いてください。
- 室温の1X Wash Buffer (+スペルミジン+ PIC) 1 mLを加えて、ピペッティングで静かに上下させて細胞ペレットを再懸濁してください。
- 室温、600 x gで3分間遠心分離して、液体を取り除いてください。
- ステップ8と9を繰り返して、2回目の細胞ペレットの洗浄を実施してください。
- 100,000個の細胞あたり1X Wash Buffer (+スペルミジン+ PIC) 100 µLを加えて、ピペッティングで静かに上下させて細胞ペレットを再懸濁してください。
- 細胞100 µLを新しいチューブに移して、セクションIVを実施するまで4°Cで保管してください。これがインプットサンプルになります。
注意:このインプットサンプルは後のプロトコールで55°Cでインキュベートするので、インキュベート中の蒸発を減少させるためセーフロックの付いた1.5 mLチューブを使用することを推奨します。
- (ステップ5からの) 活性化したConcanavalin A Magnetic Beadsを、ピペッティングで上下させて再懸濁してください。ステップ11で洗浄した細胞懸濁液に、100,000個の細胞あたり活性化ビーズ懸濁液10 µLを加えてください。
- チューブを室温で5分間転倒撹拌してください。
注意:Concanavalin A Magnetic Beadsは、塊になったりチューブの側面に付着したりすることがあります。ビーズはピペッティングで上下させて再懸濁できます。
- チューブを100 x gで短時間遠心分離して、キャップから細胞とビーズの懸濁液を落としてください。チューブを溶液が透明になるまで磁気ラックに置き (30秒間から2分間)、その後、液体を取り除いて破棄してください。
- チューブを磁気ラックから外してください。100,000個の細胞あたりAntibody Binding Buffer (+スペルミジン+ PIC +ジギトニン) 100 µLを加えて、氷上に置いてください。
- 細胞とビーズの懸濁液100 µLを、各反応に対して別々の1.5 mLチューブに分注して、氷上に置いてください。
- 各チューブに適量の抗体を加えて、ピペッティングで上下させて静かに混合してください。
注意:CUT&RUN反応に必要な抗体の量は異なりますので、それぞれ決定する必要があります。ポジティブコントロールのTri-Methyl-Histone H3 (Lys4) (C42D8) Rabbit mAbは、抗体2 µLをサンプルに加えてください。ネガティブコントロールのRabbit (DA1E) mAb IgG XP® Isotype Control (CUT&RUN) #66362は、抗体5 µLをサンプルに加えてください。ネガティブコントロール抗体は高いレベルの非特異的MNase消化と高いバックグラウンドシグナルをもたらすため、抗体なしのコントロールではなく、ネガティブコントロール抗体を使用することを強く推奨します。qPCR解析とNG-seq解析の両方で比較するため、インプットサンプルを使用することをお勧めします。
- チューブを4°Cで2時間転倒撹拌してください。このステップは一晩まで延長できます。
II. pAG-MNase酵素の結合
実験開始前の準備:
! すべてのバッファーの量は、実施するCUT&RUN反応の数に応じて比例的に増加させる必要があります。
- Digitonin Solutionを取り出して、90 - 100°Cで5分間温め、完全に解凍され溶液状になっていることを確認してください。解凍したDigitonin Solutionはすぐに氷上に置いてください。
注意:Digitonin Solutionは-20°Cで保管する必要があります。使用中は氷上に置き、使用が終了したら-20°Cで保管してください。
- 各反応に対して、ジギトニンバッファー (10X Wash Buffer 105 µL + 100X Spermidine 10.5 µL + 200X Protease Inhibitor Cocktail 5.25 µL + Digitonin Solution 26.25 µL +水903 µL) 1.05 mLを調製してください。
- 各反応に対して、ジギトニンバッファー (上記) 50 µLとpAG-MNase Enzyme 1.5 µLを新しいチューブに加えて、pAG-MNase溶液を調製してください。たとえば、10回の反応については、ジギトニンバッファー500 µLを新しいチューブに移し、pAG-MNase Enzyme 15 µLを加えます。ピペッティングで上下させて混合し、氷上に置いてください。
- セクションI、ステップ19からのサンプルを、100 x gで短時間遠心分離して、チューブのキャップから細胞とビーズの懸濁液を落としてください。
- チューブを溶液が透明になるまで磁気ラックに置き (30秒間から2分間)、その後、液体を取り除いてください。
- チューブを磁気ラックから外してください。ジギトニンバッファー (+スペルミジン+ PIC +ジギトニン) 1 mLを加えてください。ピペッティングで静かに上下させてビーズを再懸濁してください。
- チューブを溶液が透明になるまで磁気ラックに置き (30秒間から2分間)、その後、液体を取り除いてください。
- チューブを磁気ラックから外してください。各チューブにpAG-MNase溶液50 µLを加えて、ピペッティングで静かに上下させてサンプルを混合してください。
- チューブを4°Cで1時間転倒撹拌してください。
III. DNAの消化と分散
実験開始前の準備:
! すべてのバッファーの量は、実施するCUT&RUN反応の数に応じて比例的に増加させる必要があります。
- セクションII、ステップ6からのサンプルを、100 x gで短時間遠心分離して、チューブのキャップから細胞とビーズの懸濁液を落としてください。
- チューブを溶液が透明になるまで磁気ラックに置き (30秒間から2分間)、その後、液体を取り除いてください。
- チューブを磁気分離ラックから外してください。ジギトニンバッファー (+スペルミジン+ PIC +ジギトニン) 1 mLを加えて、ピペッティングで静かに上下させてビーズを再懸濁してください。
- ステップ2と3を、1回繰り返してください。
- チューブを溶液が透明になるまで磁気ラックに置き (30秒間から2分間)、その後、液体を取り除いてください。
- チューブを磁気ラックから外してください。各チューブにジギトニンバッファー (+スペルミジン+ PIC +ジギトニン) 150 µLを加えて、ピペッティングで上下させて混合してください。
- 消化の前にチューブを氷上に5分間置いてください。
- 各チューブに冷却した塩化カルシウム3 µLを加えて、ピペッティングで上下させて混合し、MNaseを活性化してください。
- サンプルを4°Cで30分間インキュベートします。
注意:消化は4°Cの冷却ブロック上か冷蔵庫内で実施する必要があります。氷の温度は0°Cまで下がることがあり、これによって消化が制限されシグナルが低減する可能性があります。
- 各サンプルに1X Stop Buffer (+ジギトニン+ RNAse A + spike-in DNA [オプション]) 150 µLを加えて、ピペッティングで上下させて混合してください。
- チューブを振盪せずに37°Cで10分間インキュベートして、DNA断片を溶液中に放出させてください。
注意:このインキュベートのステップは、30分間まで延長することができます。
- 4°C、16,000 x gで2分間遠心分離して、チューブを溶液が透明になるまで磁気ラックに置いてください (30秒間から2分間)。
- 上清を新しい1.5 mLチューブに移して、氷上に置いてください。これが濃縮クロマチンサンプルになります。
- すぐにセクションV (SAFE STOP) に進むか、あるいは、サンプルを‐20℃で保存してください。ただし、DNAの精製 (セクションV) の前には、サンプルを必ず室温まで温めてください。
IV. インプットサンプルの調製
! すべてのバッファーの量は、調製するインプットサンプルの数に比例して増加させる必要があります。
実験開始前の準備:
- DNA Extraction Bufferを取り出して温めてください。必ず完全に解凍してください。
- 各インプットサンプルに対して、Proteinase K 2 µL + RNAse A 0.5 µL + DNA Extraction Buffer (インプットサンプルあたり197.5 µL) 200 µLを調製してください。
- DNA Extraction Buffer (+ Proteinase K + RNAse A) 200 µLを、セクションI、ステップ12からの細胞懸濁液100 µLに加えてください。ピペッティングで上下させて混合してください。
- チューブを55°Cで振盪しながら1時間インキュベートしてください。
- チューブを氷上に5分間置いて、サンプルを完全に冷却してください。
- インプットサンプルをソニケーションすることにより、細胞を溶解してクロマチンを断片化してください。ソニケーション処理の合間は、サンプルを氷上に30秒間置いてください。
注意:ソニケーションの条件は、APPENDIX Bのプロトコールに従って、さまざまなソニケーターの出力設定やソニケーション処理期間を試験することで、経験的に決定する必要のある場合があります。最適なソニケーション条件では、100 - 600 bpのサイズのクロマチン断片が生成されます。VirTis Virsonic 100 Ultrasonic Homogenizer/Sonicatorを使用して、1/8インチプローブ、設定6、15秒パルスを5セットのソニケーションで、インプットクロマチンは十分に断片化されます。
- 18,500 x g、4°Cで10分間遠心分離して、溶解物を清澄化してください。上清を新しい1.5 mLチューブに移してください。
- すぐにセクションV (DNAの精製) に進んでください。(SAFE sTOP) あるいは、サンプルは-20℃で1週間まで保存できます。ただし、DNAの精製 (セクションV) の前には、サンプルを必ず室温まで温めてください。
V. DNAの精製
セクションAに記載されているDNAスピンカラム、あるいは、セクションBに記載されているフェノール/クロロホルム抽出とそれに続くエタノール沈殿によって、DNAはインプットクロマチンサンプルと濃縮クロマチンサンプルから精製できます。DNAスピンカラムを使った精製は簡単かつ迅速で、35 bp以上のDNA断片を良好に回収できます (図7A、レーン2)。フェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈殿による精製はより困難ですが、35 bp以下のDNA断片を回収できます (図7A、レーン3)。ただし、図7Bに示されたように、CUT&RUNアッセイで生成されるほとんどのDNA断片は、35 bp以上になります。そのため、DNAスピンカラムはCUT&RUN反応による全DNA断片の98%以上を精製する、迅速かつ簡単な方法です。
精製されたDNAは、PicoGreenによるDNA定量アッセイによって、NG-seq解析の前に定量できます。100,000個の細胞を用いたCUT&RUN反応から期待されるDNAの収量は、転写因子とコファクターでは反応あたり0.5 - 10 ng、ヒストン修飾では反応あたり1 - 20 ngになります。
図 7 DNA精製にスピンカラムを用いた場合と、フェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈殿を用いた場合を比較しました。(A) low range DNA ladder mix (レーン1、未精製) を、DNA Purification Buffers and Spin Columns (ChIP, CUT&RUN) #14209 (レーン 2)、あるいは、フェノール/クロロホルム抽出とそれに続くエタノール沈殿 (レーン3) により精製し、4%アガロースゲルでの電気泳動により分離しました。ここで示したように、フェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈殿はすべてのサイズのDNA断片を効率的に回収し、DNAスピンカラムは35 bp以上のDNA断片を回収します。(B) TCF4/TCF7L2 (C48H11) Rabbit mAb #2569を使用したCUT&RUNアッセイから得たDNAを、フェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈殿により精製しました。ライブラリーのDNA断片のサイズを、Bioanalyzer (Agilent Technologies) を用いて解析しました。ライブラリーの構築で付加されたアダプター配列とバーコード配列の断片の長さは140 bpです。したがって、35 bpのDNA断片から始めると、ライブラリーの調製後には175 bpになります (図では青の垂直線で表示)。ここで示したように、断片の長さが175 bp以下 (開始長は35 bp以下) なのはCUT&RUN反応による全濃縮DNA断片の2%以下で、これは、スピンカラムを用いたDNA精製により、CUT&RUN反応による全DNA断片の98%以上が得られることを示唆しています。
A. スピンカラムを用いたDNAの精製
注意:DNAは、Cell Signaling® DNA Purification BuffersとSpin Columns (ChIP, CUT&RUN) #14209 (このキットには含まれていません)、そして下記の改善されたプロトコールによって、インプットクロマチンサンプルと濃縮クロマチンサンプルから精製できます。インプットクロマチンサンプルと濃縮クロマチンサンプル300 µLにDNA Binding Buffer 5分量 (1.5 mL) を追加する点を反映させて、ステップ1から5までを修正しました。
実験開始前の準備:
- !! 使用前に、DNA Wash Buffer #10008にエタノール (96 - 100%) 24 mLを加えてください。このステップは、DNA精製の最初のセットの前に、1回だけ実施してください。
- 精製する濃縮クロマチンサンプルとインプットサンプルに対して、DNA Purification Collection Tube #10010を1つ取り出してください。
- DNA Binding Buffer 1.5 mLをインプットクロマチンサンプルと濃縮クロマチンサンプルに加え、軽くボルテックスしてください。
注意:サンプルに対して5倍量のDNA Binding Bufferを使用します。
- ステップ1のサンプル600 μLを、コレクションチューブにセットしたDNAスピンカラムに移してください。
- 18,500 x gで30秒間遠心分離してください。
- コレクションチューブからスピンカラムを取り外し、液体を廃棄してください。空になったコレクションチューブにスピンカラムを再セットしてください。
- ステップ1のサンプル全体をスピンカラムに供するまで、ステップ2 - 4を繰り返してください。空になったコレクションチューブにスピンカラムを再セットしてください。
- DNA Wash Buffer 750 μLを、コレクションチューブにセットしたスピンカラムに加えてください。
- 18,500 x gで30秒間遠心分離してください。
- コレクションチューブからスピンカラムを取り外し、液体を廃棄してください。空になったコレクションチューブにスピンカラムを再セットしてください。
- 18,500 x gで30秒間遠心分離してください。
- コレクションチューブと液体を廃棄してください。スピンカラムは廃棄しないでください。
- スピンカラムにDNA Elution Buffer 50 μLを加え、新しい1.5 mLチューブにセットしてください。
- 18,500 x gで30秒間遠心分離して、DNAを溶出してください。
- DNAスピンカラムを取り外し、廃棄してください。得られた溶出液が精製されたDNAです。(SAFE STOP) サンプルは-20℃で6ヵ月まで保存することができます。
B. フェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈殿を使用したDNAの精製
注意:以下の試薬は、フェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈殿に必要で、このキットには含まれていないものです。フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール (25:24:1)、クロロホルム/イソアミルアルコール (24:1)、3 M酢酸ナトリウム (pH 5.2)、20 mg/mLグリコーゲン、100%エタノール、70%エタノール、1X TEバッファーあるいはNuclease-free Water。
- フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール (25:24:1) 300 μLをインプットサンプルと濃縮クロマチンサンプルに加え、30秒間ボルテックスして十分に混合してください。
- 16,000 x gで5分間遠心分離して、層に分離してください。上部の水層の大部分を (中間層を避けて) 注意深く新しいチューブに移してください。
- クロロホルム/イソアミルアルコール (24:1) 300 μLを水層サンプルに加え、30秒間ボルテックスして十分に混合してください。
- 16,000 x gで5分間遠心分離して、層に分離してください。上部の水層の大部分を (中間層を避けて) 注意深く新しいチューブに移してください。
- 3 M酢酸ナトリウム (pH 5.2) 25 µL、20 mg/mLグリコーゲン1 µL、100%エタノール600 µLを水層サンプルに加え、30秒間ボルテックスして混合してください。
- -80°Cに1時間、あるいは、-20°Cに一晩置いて、DNAを沈殿させてください。
- 4℃、16,000 x gで5分間遠心分離して、DNAをペレットにしてください。
- 上清を注意深く除去し、70%エタノールでペレットを洗浄してください。
- 4℃、16,000 x gで5分間遠心分離して、DNAをペレットにしてください。
- 上清を除去し、ペレットを風乾してください。
- ペレットを1X TEバッファーあるいはNuclease-free Water 50 µLで再懸濁してください。これが精製されたDNAです。(SAFE STOP) サンプルは-20℃で6ヵ月まで保存することができます。
VI. qPCRによるDNAの定量
推奨事項:
- キットに含まれるSample Normalization Primer SetはS. cerevisiaeのACT1遺伝子に対するもので、サンプルの標準化のため、Sample Normalization Spike-In DNA (酵母) からのシグナルを定量化するのに使用できます (オプション)。
- キットにはコントロールプライマーとしてヒトあるいはマウスのRPL30遺伝子 (#7014あるいは#7015) が含まれており、Tri-Methyl-Histone H3 (Lys4) (C42D8) Rabbit mAbサンプルの定量的リアルタイムPCRに使用できます。他の動物種でCUT&RUNを実施する場合は、その種にて適切なコントロールプライマーを設計し、最適なPCR条件を決定してください。
- プライマーの設定は非常に重要です。CUT&RUN反応によるPCR増幅産物のサイズは、およそ60 - 80 bpになるはずです。プライマーは、最適融解温度は約60°C、GC含量は約50%としてデザインすることが望ましいです。
- ヒストン、転写因子、コファクターの標的遺伝子のqPCRによる定量には、2 µLの精製DNAで十分です。
- 非特異的なPCR産物を生じさせないため、ホットスタート用Taqポリメラーゼの使用を推奨します。
- コンタミネーションを防ぐため、フィルターチップ付きピペットを使用してください。
- 使用するPCR装置のモデルに対応するPCRチューブあるいはPCRプレートにラベルしてください。PCR反応には、ポジティブコントロールのTri-Methyl-Histone H3 Lys4サンプル、ネガティブコントロールのRabbit IgGサンプル、DNAのコンタミネーションを確認するコントロールとしてDNAを含まないチューブ、および、標準曲線の作成、増幅効率の決定、濃縮された各サンプルでのDNAの定量のためのインプットDNAの段階希釈サンプル (希釈なし、1:5、1:25、1:125) を含める必要があります。
注意:サンプルの標準化を実施する場合、CUT&RUNサンプルのみがSample Normalization Primer Setを使用して解析できます。インプットDNAにはNormalization Spike-In DNAを含めません。
- PCRチューブあるいはPCRプレートのウェルに、適切なDNAサンプル2 μLを加えてください。
- 以下のように、マスターミックスを調製してください。PCR反応ごとに2 - 3回分をセットアップしてください。分量の損失を考慮して、反応1 - 2回分を余計に準備してください。各PCRチューブあるいは各ウェルにマスターミックス18 μLを加えてください。
試薬 |
PCR反応1回分の分量 (18 μL) |
Nuclease-free H2O #12931 |
6 µL |
5 µMのプライマー |
2 µL |
SimpleChIP® Universal qPCR Master Mix #88989 |
10 µL |
- PCR反応を以下のプログラムで開始してください:
a. |
初期変性 |
95°Cで3分間 |
b. |
変性 |
95°Cで15秒間 |
c. |
アニーリングおよび伸長 |
60°Cで60秒間 |
d. |
ステップbとcを繰り返し、合計40サイクル |
|
- リアルタイムPCR装置に付属のソフトウェアを使用して、定量結果を解析してください。あるいは、Percent Input法により下記の公式を用いて、免疫沈降の効率を算出することもできます。この方法では、免疫沈降により回収された各シグナルは、インプットクロマチンの総量のパーセントとして表されます。
- Percent Input = 100% x 2(C[T] 100%Input Sample – C[T] IP Sample)
- C[T] = CT = PCR反応の平均閾値サイクル
- サンプルの標準化では、選択したサンプルとしてSample Normalization Primer SetのC[T]値が最も低いサンプルを選び (例えば、以下の表のサンプル1)、以下の式を使用してその他のサンプルの標準化係数を算出してください。それぞれの標準化係数を使用して、使用したプライマーセットからのシグナルを調整してください。
qPCRアッセイのサンプル標準化の例 (図8を参照)
|
Sample Normalization Primer SetのC[T] 値 |
**qPCRの標準化係数 |
標準化前のシグナル (ステップ5から算出したPercent Input) |
標準化後のシグナル |
サンプル1 |
23.31 |
2(23.31-23.31)=1.00 |
24.4% |
24.4%/1.00=24.4% |
サンプル2 |
24.24 |
2(23.31-24.24)=0.52 |
12.0% |
12.0%/0.52=23.1% |
サンプル3 |
25.08 |
2(23.31-25.08)=0.29 |
6.28% |
6.28%/0.29=21.7% |
サンプル4 |
26.30 |
2(23.31-26.30)=0.13 |
2.72% |
2.72%/0.13=20.9% |
**qPCRの標準化係数 = 2(C[T] 選択したサンプル – C[T] その他のサンプル)
図 8 Spike-In DNAを用いたqPCR解析でのCUT&RUNシグナルの標準化。異なる細胞数のHCT116細胞に対して、Tri-Methyl-Histone H3 (Lys4) (C42D8) Rabbit mAb #9751 (上のパネル) あるいはPhospho-Rpb1 CTD (Ser2) (E1Z3G) Rabbit mAb #13499 (下のパネル) を用いて、CUT&RUNを実施しました。濃縮されたDNAを、SimpleChIP® Human GAPDH Exon 1 Primers #5516、SimpleChIP® Human β-Actin Promoter Primers #13653、SimpleChIP® Human Β-Actin 3' UTR Primers #13669、SimpleChIP® Human MyoD1 Exon 1 Primers #4490を用いて、リアルタイムPCRで解析しました。各サンプルから回収されたDNAの量を、100,000個の細胞に対するインプットクロマチンの総量 (1に相当) に対する相対量で示しました。標準化されていない濃縮を左のパネルに示します。Sample Normalization Spike-In DNAを、最初の細胞数に比例して各反応に加えました。各サンプルのSpike-In DNAからのqPCRシグナルに基づき、CUT&RUNシグナルを100,000個の細胞のサンプルに標準化しました。標準化した濃縮を右のパネルに示します。
VII. NG-seqライブラリーの構築
CUT&RUNキットを用いて調製したDNAサンプルは、直接NG-seqに使用できます。下流NG-seq DNAライブラリーの構築には、下流シーケンシングプラットフォームに対応可能なDNAライブラリー調製プロトコールやキットを使用してください。Illumina®プラットフォームでのシーケンシングには、SimpleChIP® ChIP-seq DNA Library Prep Kit for Illumina® #56795と合わせて、SimpleChIP® ChIP-seq Multiplex Oligos for Illumina® #29580あるいは#47538を使用することを推奨します。
DNAライブラリーの調製に関するその他の推奨事項:
- DNA末端の調製 (SimpleChIP® ChIP-seq DNA Library Prep Kit for Illumina® #56795のセクションI、ステップ4) では、小さなDNA断片の変性を避けるため、サーマルサイクラーのプログラムを65°Cで30分間ではなく、50°Cで30分間に変更してください。変性したDNA断片はアダプターのライゲーションに適しません。
- アダプターをライゲーションしたDNAの精製 (SimpleChIP® ChIP-seq DNA Library Prep Kit for Illumina® #56795のセクションIII、ステップ1)、および、ライブラリーDNAの精製 (the SimpleChIP® ChIP-seq DNA Library Prep Kit for Illumina® #56795のセクションV、ステップ1) では、より小さなDNA断片の回収を増加させるため、0.9倍量ではなく1.1倍量のAMPure® XPビーズあるいはSPRIselect®ビーズをサンプルに加えてください。
- アダプターをライゲーションしたDNAのPCR濃縮 (SimpleChIP® ChIP-seq DNA Library Prep Kit for Illumina® #56795のセクションIV、ステップ3) では、アニーリングと伸長の時間を75秒間から15秒間に減少させて、1,000 bp以上の大きなライブラリーDNA断片の増幅を除外してください。
- CUT&RUNアッセイによるDNAの収量は、ChIP-seqライブラリーの調製で推奨される開始DNA量の5 ngよりも少ない場合があります。DNAの収量が5 ng以下の場合は、DNA濃度が10 - 30 ng/µLのライブラリーを作成するため、PCR増幅サイクルを12 - 15サイクルに増加させることを推奨します。
- CUT&RUNのバックグラウンドシグナルは非常に低いので、ヒストン修飾と転写因子では、通常、サンプルあたり500万リードのシーケンシング深度で十分です。シーケンシング深度がサンプルあたり1,500万以上になると、リードの重複率は大幅に上昇します。シーケンシング深度がサンプルあたり200万以下になると、S/N比は低下します。
- サンプルの標準化を実施するには、すべてのサンプルのCUT&RUNシーケンスデータを、ヒトなど試験するリファレンスゲノムと、サンプルの標準化に用いる酵母のゲノムの両方にマッピングしてください。選択したサンプルとして酵母でユニークなリードの数が最も少ないサンプルを選び (例えば、以下の表のサンプル1)、以下の式を使用してその他のサンプルの標準化係数を算出してください。それぞれの標準化係数を使用して、各サンプルのリファレンスゲノムを試験するためアラインメントされたユニークなリードの数をダウンサイズしてください。さらなるNGS解析には、ダウンサイズしたデータセットを使用してください。
NGSアッセイのサンプル標準化の例 (図9を参照)
|
酵母にアラインメントされたユニークなリードの数 |
NGSの標準化係数 |
標準化前に試験するリファレンスゲノムにアラインメントされたユニークなリードの数 |
標準化後に試験するリファレンスゲノムにアラインメントされたユニークなリードの数 |
サンプル1 |
219,275 |
219,275/219,275 = 1.00 |
5,077,747 |
5,077,747 X 1.00 = 5,077,747 |
サンプル2 |
411,915 |
219,275/411,915 = 0.53 |
9,896,671 |
9,896,671 X 0.53 = 5,268,306 |
サンプル3 |
816,235 |
219,275/816,235 = 0.27 |
17,842,773 |
17,842,773 X 0.27 = 4,793,320 |
サンプル4 |
1,120,826 |
219,275/1,120,826 = 0.20 |
23,836,679 |
23,836,679 X 0.20 = 4,663,339 |
NGSの標準化係数 = 選択したサンプルからの酵母のユニークなリードの数 / その他のサンプルからの酵母のユニークなリードの数
APPENDIX A:細胞のジギトニンに対する感受性の決定
CUT&RUNプロトコールでは、バッファーへのジギトニンの添加は、細胞膜の透過化および一次抗体とpAG-MNaseの細胞と核への進入を促進します。よって、バッファーが適量のジギトニンを含むことは、抗体と酵素の結合および標的ゲノム遺伝子座の消化に不可欠です。異なる細胞株は、ジギトニンの細胞透過化に対して異なる感受性を示します。このプロトコールで推奨されるジギトニンの量は、ほとんどの細胞株の透過化に十分なはずですが、使用する特定の細胞株に対し初期試験の実施を推奨します。過剰なジギトニンの添加はアッセイに対して有害ではないことが分かっていますので、濃度曲線を作成する必要はありません。むしろ、推奨されるジギトニンの量が使用する細胞株に十分かどうかを、簡単な試験により判断します。
実験開始前の準備:
- 100,000個の細胞を1.5 mLチューブに回収してください。
- 室温、3分間、600 x gで遠心分離し、液体を取り除いてください。
- 細胞ペレットをジギトニンバッファー100 µLに再懸濁して、室温で10分間インキュベートしてください。
- 細胞懸濁液10 µLを0.4% Trypan Blue 10 µLと混合してください。
- 血球計あるいは細胞カウンターを使用して、染色された細胞の数と細胞の総数を計数してください。十分な透過化により、Trypan Blueで細胞の90%以上が染色されます。
- 90%以下の細胞しかTrypan Blueで染色されなかった場合は、ジギトニンバッファーに加えるDigitonin Solutionの量を増加させて、90%以上の細胞が透過化され染色されるまで、ステップ1 - 5を繰り返してください。セクションI、II、IIIでは、この量のDigitonin Solutionを使用してください。
APPENDIX B:インプットサンプルのソニケーションの最適化
DNAスピンカラムを使用して精製できるのは、10 kb以下に断片化されたゲノムDNAだけであることから、インプットDNAサンプルのソニケーションを推奨します。さらに、1 kb以下に断片化されたゲノムDNAは、NG-seq解析でネガティブコントロールとして使用できます。インプットDNAの長さが100 - 600 bpになるように、ソニケーションを最適化する必要があります。
細胞のゲノムを便利でバイアスなく表記するため、NG-seqにインプットサンプルを使用することを推奨します。IgGのサンプルもNG-seqのネガティブコントロールとして使用できますが、非特異的な結合によりゲノムの特定領域の濃縮を示すことがあります。断片化されていないインプットDNAは、qPCR解析に使用できます。ただし、断片化されていないDNAは、フェノール/クロロホルム抽出とそれに続くエタノール沈殿により精製する必要があります。
実験開始前の準備:
! すべてのバッファーの量は、調製するインプットサンプルの数に比例して増加させる必要があります。
- DNA Extraction Bufferを取り出して、室温で温め、完全に解凍され溶液状になっていることを確認してください。
- 各インプットサンプルに対して、1X Wash Buffer (10X Wash Buffer 210 µL +水1.89 mL) 2.1 mLを調製して、細胞へのストレスを最小限にするため、室温に戻してください。このWash Bufferには、スペルミジンやProtease Inhibitor Cocktailを加える必要はありません。
- 各インプットサンプルに対して、Proteinase K 2 µL + RNAse A 0.5 µL + DNA Extraction Buffer (インプットサンプルあたり200 µLとなるよう) 197.5 µLを調製してください。
- 1.5 mLチューブに、各ソニケーション条件あたり100,000個の細胞を回収してください。
- 室温、600 x gで3分間遠心分離して、液体を取り除いてください。
- 1X Wash Buffer 1 mLを加えて、ピペッティングで静かに上下させて細胞ペレットを再懸濁してください。
- 室温、600 x gで3分間遠心分離して、液体を取り除いてください。
- ステップ3と4を繰り返して、2回目の細胞ペレットの洗浄を実施してください。
- 各100,000個の細胞に、1X Wash Buffer 100 µLを加えて、ピペッティングで静かに上下させて細胞ペレットを再懸濁してください。
- 細胞懸濁液100 µLを、各ソニケーション条件ごとに新しいチューブに分注してください。
注意:このサンプルは、ステップ9で55°Cでインキュベートするので、インキュベート中の蒸発を減少させるためセーフロックの付いた1.5 mLチューブを使用することを推奨します。
- 各サンプルにDNA Extraction Buffer (+ Proteinase K + RNAse A) 200 µLを加えて、ピペッティングで上下させて混合してください。
- チューブを55°Cで振盪しながら、1時間インキュベートしてください。
- チューブを氷上に5分間置いて、サンプルを完全に冷却してください。
- お使いのソニケーターの最適なソニケーション条件を決定するには、15秒間のパルスソニケーションのサイクル数を増加させながら、タイムコース実験を実施してください。ソニケーション処理の合間は、サンプルを氷上に30秒間置いてください。
- 18,500 x gで10分間、4°Cで遠心分離し、溶解物を清澄化してください。上清を新しい1.5 mLチューブに移してください。
- セクションVに従って、DNAスピンカラムあるいはフェノール/クロロホルム抽出とそれに続くエタノール沈殿によってDNAサンプルを精製してください。
- スピンカラムからDNAを溶出するか、DNAのペレットを1X TEバッファーあるいはNuclease-free Water 30 µLで再懸濁してください。
- 電気泳動でDNA断片のサイズを決定してください。100 bp DNAマーカーと共に15 µL以上のサンプルを、1%アガロースゲルにロードしてください。ゲル上のDNAスメアを観察するため、色素フリーのローディングバッファー (30% グリセロール) の使用を推奨します。
- 最適なサイズである100 - 600 bpのDNA断片が得られるソニケーション条件を選択して、セクションIII、ステップ4のインプットサンプルの調製を実施してください。最適なソニケーション条件が得られない場合は、ソニケーターの出力設定あるいはソニケーションのサイクル数を増減させて、ソニケーションのタイムコース実験を繰り返してください。
APPENDIX C: トラブルシューティングガイド
問題 |
考えられる原因 |
推奨される対処法 |
問題 |
考えられる原因 |
推奨される対処法 |
1. Concanavalin Aのビーズが実験中に凝集する。 |
ビーズの凝集は正常で、通常はアッセイに影響しません。 |
ピペッティングで静かに上下させて、凝集したビーズを再懸濁してください。 |
ビーズと細胞の室温でのインキュベート時間が長すぎます。 |
Concanavalin A Magnetic Beadsは4°Cで活性化し、細胞のインキュベート時間は5分以内にしてください (セクションI、ステップ14)。 |
調製中に細胞が溶解しています。 |
細胞のストレスを最小限にするため、細胞は室温でできるだけすばやく調製してください (セクションI、ステップ7 - 16)。 |
ジギトニンの濃度が高すぎるのかもしれません。 |
一部の細胞はジギトニンに対して感受性が高く、高い濃度では溶解する場合があります。ジギトニンの量を減少させてください。ただし、使用する量が細胞の透過化に十分であることを確認してください (APPENDIX Aを参照)。 |
2. 精製されたDNAサンプルからPicoGreenによるDNA定量アッセイでDNAが検出されない。 |
これは、10,000個以下の少ない細胞数から開始した場合は一般的ですが、推奨されている100,000個の細胞から開始した場合は、DNAは検出されるはずです。 |
PicoGreenによるDNA定量アッセイを使用してください。NanoDrop、Bioanalyzer®、Tapestation®を使用しても、通常、精製されたDNAは検出できません。 |
細胞が計数されてないか、細胞が調製中に損失あるいは溶解しています。 |
使用する細胞培養は60 - 90%がコンフルエントで、生細胞が90%以上の健康な状態である必要があります。 |
細胞のストレスを最小限にするため、細胞は室温でできるだけすばやく調製してください。 |
細胞の損失を最小限にするため、細胞の洗浄はすべて1つのチューブで実施してください (セクションI、ステップ7 - 16)。 |
ジギトニンが細胞を効果的に透過化していません。 |
Digitonin Solutionは-20°Cで保管してください (-20°C以上では不安定になります)。 |
ジギトニンの量が使用する細胞株の透過化に十分であることを、試験して確認してください (APPENDIX Aを参照)。 |
pAG-MNase酵素が適切に機能していません。 |
pAG-MNaseは非常に安定しており、適切に保管すれば長期間活性を維持できるはずです。 |
pAG-MNaseは活性にCa2+二価カオチンが必要です。酵素の活性化のため、塩化カルシウムを加えてください (セクションIII、ステップ8)。 |
30分間インキュベートして、酵素がクロマチンを十分に消化できるようにしてください (セクションIII、ステップ9)。 |
反応に十分な抗体が加えられていないか、CUT&RUNアッセイで抗体が機能していません。 |
すべての抗体がCUT&RUNで機能するわけではありません。可能であれば、CUT&RUN用に検証済みの抗体を使用してください。ChIP用あるいはIF用に検証済みの抗体の一部も、CUT&RUNで機能します。 |
ポジティブコントロールのTri-Methyl-Histone H3 (Lys4) (C42D8) Rabbit mAbを含めることで、アッセイが機能していることを確かめてください。 |
3. qPCR解析あるいはNG-seq解析でシグナルがない。 |
考えられる原因として、問題2を参照してください。 |
推奨事項は、問題2を参照してください。 |
酵素消化の温度が低すぎる可能性があります。 |
酵素消化を氷上 (0°C) で行うと、標的クロマチン断片の回収が有意に減少し、qPCRやNG-seqの’シグナルも減少する結果になることが分かりました。酵素消化は冷却ブロック上または冷蔵庫内で、4°Cで実施してください。 |
qPCR反応に加えたDNA量が十分ではありません。 |
PCR反応により多くのDNAを使用するか、サイクル数を増加させてください。 |
NG-seq DNAライブラリーの調製に十分なDNAが加えられていません。 |
PicoGreenによるDNA定量アッセイによって精製されたDNAを定量して、推奨された量の開始DNAおよびPCR増幅サイクル数を使用してください (セクションVIIを参照)。 |
PCRの増幅領域が、ヌクレオソームのない領域に及んでいる可能性があります。 |
CUT&RUNアッセイで生成されるDNA断片は、通常、ChIPアッセイで生成されるDNA断片よりも小さくなります。そのため、60 - 80 bpの増幅産物を生成するプライマーをデザインすることが重要です。 |
4. qPCR解析あるいはNG-seq解析でバックグラウンドシグナルが高い。 |
サンプルの過酷な処理によって、ゲノムDNAが高度に断片化されています。 |
CUT&RUNアッセイでのバックグラウンドシグナルを決定するため、Rabbit (DA1E) mAb IgG XP® Isotype Control (CUT&RUN) #66362をネガティブコントロールとして常に使用してください。 |
DNAの断片化を最小限にするには、細胞を再懸濁する際に、激しいボルテックスと気泡の混入を避けてください。 |
細胞のストレスと溶解によって、ゲノムDNAが高度に断片化されています。 |
細胞のストレスを最小限にするため、細胞は室温でできるだけすばやく調製してください。細胞の損失を最小限にするため、細胞の洗浄はすべて1つのチューブで実施してください (セクションI、ステップ7 - 16)。 |
酵素消化の温度が高すぎる可能性があります。 |
酵素消化は冷却ブロック上または冷蔵庫内で、4°Cで行う必要があります。。高温での消化は、バックグラウンドシグナルを大幅に増大させる可能性があります。 |
酵素消化を開始する前に、事前にサンプルと塩化カルシウムを氷上で冷却してください。 |
大きな非特異的ゲノムDNAが上清に拡散し、標的の消化によって放出されたより小さな断片とコンタミネーションする可能性があります。 |
サンプルは37°Cで10分以上はインュべートしないでください。インキュベート中は振盪しないでください (セクションIII、ステップ11)。消化された断片が上清に拡散するには、10分間で十分です。 |
qPCR解析の前に、AMPure® XP BeadsあるいはSPRIselect® Reagentキットを使用してサイズ選択をすることで、大きなゲノムDNA断片を除去できます。 |
NG-seq解析では、ライブラリーの構築にてPCR増幅時間を10 - 15秒間と短くして、大きなDNA断片に対する増幅を除外します。 |
使用する抗体が多すぎるため、非特異的な結合と消化が生じています。 |
可能であれば、CUT&RUN用に検証済みの抗体を、推奨された希釈率で使用してください。ChIP用あるいはIF用に検証済みの抗体は、多くの場合、ChIPあるいはIFに推奨された希釈率でCUT&RUNに使用できます。お使いの抗体は、タイトレーションする必要のある場合があります。 |