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SignalStar Multiplex IHCを用いた空間プロファイリング

 

CSTが提供するSignalStar Multiplex IHCアッセイキットは、空間生物学研究用の、カスタマイズ可能で柔軟性のある高度に検証された抗体パネルを提供します。

高い感度と特異性をもってFFPE組織内の複数のバイオマーカーを同時に増幅し、わずか2日間で最大8種類のバイオマーカーの結果を作成できます。

SignalStar Multiplex IHCとは?

SignalStar Multiplex IHC技術は、抗体やオリゴヌクレオチド、蛍光色素を用いて、細胞内における標的の存在量や局在、機能、バイオマーカーとの共発現パターンを調査する技術です。SignalStarアッセイは、組織内の空間的配置と構造を保持しつつ、表現型や機能に関する複数のマーカーの同時検出を可能にします。細胞が、どのようにして組織化し、疾患進行や治療への応答を制御する組織の微小環境にどのような影響を与えるかを理解するためには、空間生物学におけるこれらの知見が不可欠です。

マルチプレックスIHCが空間プロファイリングを可能にする方法

マルチプレックスIHC (mIHC) は、汎用性のある、空間生物学用の強力なツールであり、幅広い研究に用いられます。未変性状態のバイオマーカーや細胞の理解、取得するデータ量の最大化、細胞機能の理解、RNA情報だけでは不十分な研究でのタンパク質の検出などを行う際に、mIHCは理想的なソリューションとなります。

未変性状態における標的の生物学と機能の理解を促進

マルチプレックスIHCは、標的の本来の空間的配置や細胞内での状態を維持しつつ、1つの組織内に含まれる複数のタンパク質や修飾バイオマーカーの同時検出を可能にするため、細胞や組織の未知の機能に関する知見が得られます。

取得するデータ量の最大化が可能

マルチプレックスIHCでは、FFPEサンプルから得られるデータ量を最大化できるため、組織サンプルを追加する必要性が低減します。

翻訳後修飾に関するより深い知見を取得可能

RNA解析では、遺伝子発現に関する情報を得ることはできても、リン酸化やグリコシル化、アセチル化といったタンパク質の翻訳後修飾を捉えることはできません。マルチプレックスIHCにより、複数のタンパク質修飾の同時検出が可能となり、その背景にある生物学をより包括的に理解できます。

原理

FFPE組織解析のためのSignalStar Multiplex IHCアッセイのワークフロー手順。

SignalStar mIHCアッセイは、FFPE組織内の最大8種類のバイオマーカーの同時標識が可能です。FFPE組織切片の脱パラフィン、再水和、抗原賦活化を行い (A)、希望のプレックスサイズ (3から最大8種類のオリゴ標識抗体) のすべての抗体を、1回の一次抗体インキュベーションステップの際に同時に添加します (B)。蛍光色素 (チャンネル:488、594、647、750) 標識済みの相補的なオリゴヌクレオチドを用いて構築したオリゴ - 蛍光色素のコンストラクトを抗体に結合させて、1回目のイメージングラウンドで最大4種類のオリゴ標識抗体のシグナルを増幅させます (C - D)。プレックスサイズが4より大きい場合は、1回目のオリゴヌクレオチドと蛍光色素を穏やかに除去し (E)、2回目のイメージングラウンドで、最大4種類の追加のオリゴ標識抗体のシグナルを増幅させます (F)。その後、お手持ちのソフトウェアまたはオープンソースのソフトウェアを用いてコンピューター上で2つの画像を結合し、8プレックスの完全な画像を作成します (G)

組織サンプルの調製

  • 組織の採取と固定のプロセスは、サンプルの完全性や実験結果に直接影響するため大変重要です。組織の採取や保存、固定の方法は、サンプルや解析対象となるマーカー分子によって異なります。
  • マルチプレックスIHCのサンプル調製では、組織の構造や完全性を保持するために、ホルマリンなどのクロスリンク固定剤がよく利用されます。

抗原賦活化

  • 固定剤は、組織サンプルの構造的完全性を保持する一方で、抗体が認識するエピトープをマスキングする恐れがあります。
  • 固定によりマスキングされたエピトープを露出させる方法には、タンパク質分解酵素を用いた方法や熱処理 (HIER:heat-induced epitope retrieval) などがあります。

一次抗体のインキュベーション

  • ますます拡大する、弊社の手動または自動プロトコールにおいてあらゆる組み合わせで機能することが検証されている抗体リストから、使用する一次抗体をお選びいただけます。これらのプロトコールは完全に検証されているため、パネルの再設計は簡単であり、すぐに使用可能です。
  • 一度にすべての抗体を添加するため、抗体の染色サイクルを削減し、複数回のイメージング中に生じるエピトープの損失やマスキングを心配する必要はありません。
  • 抗体の添加後に10%中性緩衝ホルマリン液で短時間固定することにより、抗体増幅やイメージング中も抗体をスライド上に維持することができます。

オリゴの増幅

  • オリゴを用いて蛍光シグナルを増幅させるため、組織の自家蛍光をしのぐダイナミックレンジで幅広いバイオマーカーの検出が可能です。
  • 1ラウンド目の4種類の各オリゴ標識抗体に特異的かつ相補的なオリゴヌクレオチドを添加し、その後蛍光標識済みのオリゴを追加することにより、シグナルを指数関数的に増幅できます。
  • スペクトル分離の必要性を低減するために、蛍光色素はスペクトルが明確に異なるものを使用します。
  • 蛍光色素が結合したオリゴを穏やかに除去することにより、各抗体は無傷のままを保持した状態で、2ラウンド目の増幅とイメージングを行うことができます。
  • どの抗体も、お客様固有の実験に適合するように、おおよそすべての蛍光色素と組み合わせることができます。

SignalStar Multiplex IHCでできること

わずか2日間でデータを作成

空間プロファイリング用のその他のマルチプレックス技術では、パネルの最適化と検証に数週間から数か月を要することがあります。SignalStar技術では、最適化されたready-to-goパネルにより、これらにかかる時間を省略できます。FFPE組織ですぐに使用可能なIHC検証済み抗体のリストから、ご希望のバイオマーカーを選択してください。

SignalStarアッセイでは、1つの組織で最大8種類のタンパク質の蛍光シグナルを増幅します。これらの感度の高いアッセイでは、初回から必要なシグナルが得られるため、躊躇うことなく限られた貴重なFFPE組織サンプルを解析できます。

パラフィン包埋ヒト肺扁平上皮がんのSignalStar mIHC解析

パラフィン包埋ヒト扁平上皮肺がん組織を、Pan-Keratin (C11) & CO-0003-488 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #63566 (シアン)、CD68 (D4B9C) & CO-0007-594 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #77318 (オレンジ)、SIRPα/SHPS1 (D6I3M) & CO-0034-647 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #80150 (ピンク)、CD163 (D6U1J) & CO-0022-750 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #71043 (マゼンタ)、CD206/MRC1 (E2L9N) & CO-0035-488 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #99626 (緑)、CD11c (D3V1E) & CO-0017-594 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #85384 (黄色)、CD45 (Intracellular Domain) (D9M8I) & CO-0013-647 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #32740 (赤)、HLA-DRA (E9R2Q) & CO-0023-750 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #58446 (白) を用いてSignalStar免疫組織化学染色して解析しました。すべての蛍光色素に対し、記載した疑似カラーを割り当てています。マルチプレックス染色は、Leica Biosystems社のBOND RX自動染色装置で行いました。

パネルの再設計が簡単

空間生物学に用いられるソリューションの多くは、絶えず変化する研究ニーズに対する柔軟性がありません。SignalStarパネルは、ニーズの変化に応じて、簡単にバイオマーカーを変更してパネルを再設計できる柔軟性を備えています。SignalStar技術は、SignalStar Multiplex IHCパネルビルダーで設計したあらゆるパネルにおいて、一貫性のある染色を行うことができます。また、これらのパネルはすぐに使用可能です。

プロトコールの検証および最適化はすでにCSTが行っているため、抗体の組み合わせや実験方法、イメージング装置が異なっていても、再現性のある結果が得られます。

組織マイクロアレイ内のパラフィン包埋ヒト甲状腺髄様がんの連続切片のSignalStar mIHC解析。

組織マイクロアレイ内のパラフィン包埋ヒト甲状腺髄様がん組織を、SignalStarマルチプレックス免疫組織化学染色して解析しました。パネル1: PD-L1 (E1L3N®) & CO-0005-647 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #52085 (黄色)、PD-1 (Intracellular Domain) (D4W2J) & CO-0008-594 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #35347 (非表示)、CD68 (D4B9C) & CO-0007-488 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #73071 (非表示)、CD3ε (D7A6E) & CO-0001-750 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #51754 (非表示)。パネル2: PD-L1 (E1L3N®) & CO-0005-647 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #52085 (黄色)、PD-1 (Intracellular Domain) (D4W2J) & CO-0008-594 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #35347 (非表示)、CD68 (D4B9C) & CO-0007-488 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #73071 (非表示)、CD8 (D8A8Y) & CO-0004-750 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #62750 (非表示)。パネル3: PD-L1 (E1L3N®) & CO-0005-647 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #52085 (黄色)、PD-1 (Intracellular Domain) (D4W2J) & CO-0008-594 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #35347 (非表示), Ki-67 (8D5) & CO-0014-488 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #89034 (非表示)、CD8ɑ (D8A8Y) & CO-0004-750 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #62750 (非表示)。すべての蛍光色素に対し、記載した疑似カラーを割り当てています。マルチプレックス染色は、Leica Biosystems社のBOND RX自動染色装置で行いました。連続切片の、同じ領域におけるPD-L1陽性細胞の割合を、3種類の異なるSignalStar 4プレックスパネルを用いて定量し、PD-L1 (E1L3N®) & CO-0005-647 SignalStar Oligo Antibody Pair #52085 (黄色) を用いたSignalStarシングルプレックスSignalStar染色とPD-L1 (E1L3N®) XP® Rabbit mAb #13684を用いた発色染色と比較しました。

シグナルを増幅

他の多くのソリューションとは異なり、SignalStar mIHCパネルはシグナルを増幅させるため、発現レベルの低いバイオマーカーも検出できます。そのため、従来よりも多くのバイオマーカーを調査できます。

パラフィン包埋ヒト扁桃腺のSignalStarマルチプレックス免疫組織化学染色解析

パラフィン包埋Oヒト扁桃組織を、PD-1 (Intracellular Domain) (D4W2J) & CO-0008-647 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #56837 (赤) およびProLong Gold Antifade Reagent with DAPI #8961 (青) を用いてSignalStarマルチプレックス免疫組織化学染色して解析し、anti-rabbit IgG (H+L)、F(ab')2 Fragment (Alexa Fluor® 647 Conjugate) #4414、PD-1 (Intracellular Domain) (D4W2J) XP® Rabbit mAb (Alexa Fluor® 647 Conjugate)、PD-1 (Intracellular Domain) (D4W2J) XP® Rabbit mAb #86163を用いて検出した結果と比較しました。すべての蛍光色素に対し、記載した疑似カラーを割り当てています。マルチプレックス染色は、Leica Biosystems社のBOND RX自動染色装置で行いました。SignalStarアッセイに用いた連続切片の同等の関心領域内におけるPD-1陽性細胞の平均蛍光強度を定量し、間接蛍光法および直接蛍光法と比較しました。

いつでも再現可能

CSTは、SignalStarアッセイで抗体を検証しており、これらの抗体が期待通りに機能することを保証しています。すべてのSignalStar抗体は、発色法のゴールドスタンダードで検証済みであり、異なる同様のサンプル間でも一貫した再現性を示します。

弊社の検証プロセスでは、まずIHC-Pの検証を行い、その後にSignalStar Multiplex IHC用の抗体検証を行います。

パラフィン包埋ヒト結腸直腸がんのSignalStarマルチプレックス免疫組織化学染色解析。

パラフィン包埋ヒト大腸腺がん組織を、Pan-Keratin (C11) & CO-0003-488 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #63566 (緑)、PD-L1 (E1L3N®) & CO-0005-594 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #28249 (黄)、CD20 (E7B7T) & CO-0011-647 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #36775 (赤)、CD8ɑ (D8A8Y) & CO-0004-750 SignalStar™ Oligo-Antibody Pair #62750 (シアン) を用いてSignalStarマルチプレックス免疫組織化学染色して解析しました。各マーカーの個別の染色像および結合した4プレックスの染色像を示しています。すべての蛍光色素に対し、記載した疑似カラーを割り当てています。マルチプレックス染色は、Leica Biosystems社のBOND RX自動染色装置で行いました。連続切片を用いたSignalStarアッセイ (n=2) を行い、同等の領域における陽性細胞率を定量して発色法と比較しました。

既存の蛍光イメージング装置が使用可能

SignalStar mIHCパネルは、明確な発光ピークを持つ安定した蛍光シグナルを示すため、お手持ちのイメージング装置との互換性があります。

3から8プレックスのアッセイを行うために、各チャンネル (488、594、647、750 nm) を持つ顕微鏡を用いてスライドをイメージングします。プロトコールの実行にかかる時間は6時間であり、4プレックス解析は1日で、8プレックスは2日間で染色とイメージングが完了します。自動プロトコールの場合は、一晩で染色を完了できるため、作業時間を大きく削減できます。

マルチプレックスIHCパネルを自分で設計する際の注意事項

抗体の染色サイクルを削減

エピトープの損失やマスキングを心配することなく、一度にすべての抗体を添加できます。

実験計画を迅速化

弊社が提供する、使いやすいSignalStar Multiplex IHCパネルビルダーが設計作業を行うため、お客様が作業をする必要はありません。

信頼性の高い実験データを取得

SignalStarパネルに用いられる個々の抗体は、すべてのCST®抗体と同様に、使用を予定しているアプリケーションごとに独立して検証されており、信頼性と再現性のある結果を初回ならびに毎回提供する期待通りに機能することが保証されています。また、市場で最も引用された抗体を利用できるという利点があります。*

*査読付き論文で最も引用された10抗体のうち、6種類がCST抗体です。 また、最も多く引用された一次抗体と二次抗体を含む、最も引用された上位100抗体のうちの3分の1以上がCST抗体です。出典:CiteAb社のブログ「What were the top 100 research antibodies of 2022?」 (2023年7月)

Cell Signaling Technology, CST, and SignalStar are trademarks of Cell Signaling Technology, Inc. Cy is a registered trademark of GE Healthcare. All other trademarks are the property of their respective owners. Visit cellsignal.com/trademarks for more information.

U.S. Patent No. 10,781,477, foreign equivalents, and child patents deriving therefrom.