細胞は、その状況やトリガーとなる刺激に応じて、さまざまな方法で細胞死することがあります。
細胞死のメカニズムとしては、以下のものがあります。
様々なアッセイを利用して、細胞死のメカニズムを特定したり、細胞集団内において特定の細胞死メカニズムを除外したりすることができます。
アポトーシスは、プログラム細胞死の高度に制御された一形態のことで、多細胞生物の発生において生涯を通じて、および細胞ストレスに応答して起こります。アポトーシスは、カスパーゼと呼ばれるタンパク質分解酵素ファミリーによって仲介されます。アポトーシス促進タンパク質や抗アポトーシスタンパク質など、その他のタンパク質も重要な役割を担っています。
アポトーシスの制御異常は、自己免疫疾患、神経変性疾患、がんなどの病態で発生します。
アポトーシス細胞は、表現型の変化や特定のタンパク質の活性によって生細胞とは区別することができます。細胞集団内のアポトーシスのレベルを解析し測定するのに、いくつかの異なる方法が使用できます。このようなアッセイとしては、以下のものがあります。
アッセイ | 測定対象 | |
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Annexin Vアッセイ | アポトーシスの初期に、脂質二重層に起こる変化を検出します | |
Annexin V-FITC Early Apoptosis Detection Kit #6592: 10 μM Camptothecinで4時間処理したJurkat細胞 (右) と未処理コントロール細胞 (左) を、Annexin V-FITC Early Apoptosis Detection Kitを用いて、フローサイトメトリーで解析しました。 |
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TUNELキット | アポトーシスの特徴であるDNAの断片化を検出します | |
アポトーシスの特徴であるDNAの断片化を検出します |
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カスパーゼの切断 | Caspase-3の切断、カスパーゼ活性アッセイ、その他のカスパーゼやPARPの切断は、アポトーシスの測定によく使用されます | |
Cleaved Caspase-3 (Asp175) Antibody - #9661: 未処理、10 μM Staurosporineでin vivo、3時間処理、0.25 mg/mL シトクロムcでin vitro、1時間処理した、HeLa細胞、NIH/3T3細胞、C6細胞の抽出物を、Caspase-3 Antibody #9662 (上) あるいはCleaved Caspase-3 (Asp 175) Antibody (下) を用いて、ウェスタンブロッティングで解析しました。 |
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クロマチンの凝縮 | DAPIやHoechst33342などの核染色色素で染色した後、クロマチンが凝縮したアポトーシス細胞を検出します | |
Hoechst 33342 #4082: HeLa細胞を、α-Tubulin (DM1A) Mouse mAb #3873 (赤) およびPhospho-Histone H3 (Ser10) (D2C8) XP® Rabbit mAb #3377 (緑) を用いて、免疫蛍光染色で解析しました。Hoechst 33342を用いてDNAを染色し、青の疑似カラーで示しました。 |
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シトクロムcの放出 | ミトコンドリアから細胞質へのシトクロムcの放出は、アポトーシス細胞の特徴の1つです | |
Cytochrome c (6H2.B4) Mouse mAb #129638: 未処理 (左) あるいは1 μM Staurosporine #9953と50 μM Z-VADで3時間処理 (右) したHeLa細胞を、Cytochrome c (6H2.B4) Mouse mAb (緑) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で観察しました。DRAQ5 #4084 (蛍光DNA色素) は、青の疑似カラーで示しています。 |
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ミトコンドリア膜電位アッセイ | 脱分極とそれに続くミトコンドリア膜電位の低下は、アポトーシス細胞の特徴の1つです | |
Mitochondrial Membrane Potential Assay Kit (II) #13296: HeLa細胞 (3x105細胞/ml) を、様々な濃度のCCCPで15分間処理し、その後 200 nM TMREでラベルしました。 |
ネクローシス (壊死) は、急性傷害や感染症に続いて起こる受動的な非プログラム細胞死の一種で、アポトーシスが阻害された場合に発生し、細胞の腫脹と溶解によって特徴づけられます。壊死した細胞は細胞の内容物を周囲の環境に放出しますが、これにより炎症応答が活性化され、食細胞が動員されて死細胞が除去されます。しかし、制御されていない場合、壊死は壊疽などの深刻な組織損傷を引き起こす可能性があります。
ネクローシスは、受動的でありプログラムされない細胞死であると考えられてきましたが、近年の研究により、異なる種類である調節されたネクロプトーシス経路の存在が明らかになりました。
ネクローシスに加え、その他の溶解性細胞死のメカニズムとして、以下のものがあります。
ネクロプトーシスのマーカー | ネクロプトーシスマーカーの説明 | |
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RIP | 炎症や細胞死を調節するSer/Thrキナーゼ | |
RIP (D94C12) XP® Rabbit mAb #3493: RIP (D94C12) XP® Rabbit mAb (緑) を用いた、OVCAR8細胞の共焦点免疫蛍光染色による解析。DRAQ5 #4084 (蛍光DNA染料) は青の疑似カラーで示しました。 |
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RIP3 | ネクロプトーシスに必要なSer/Thrキナーゼ | |
RIP3 (D4G2A) Rabbit mAb #95702: L-929細胞を、RIP3 (D4G2A) Rabbit mAb (緑) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で観察しました。DRAQ5 #4084 (蛍光DNA染料) は青の疑似カラーで示しました。 |
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Phospho-RIP | 活性化したRIPはRIP3と連携し、ネクロプトーシスを誘発します | |
Phospho-RIP (Ser166) (D1L3S) Rabbit mAb #65746: 未処理 (-)、あるいは、次に示す処理の組み合わせを施したHT-29細胞を、ウェスタンブロッティングで解析しました。Phospho-RIP (Ser166) (D1L3S) Rabbit mAb (上) または β-Actin (D6A8) Rabbit mAb #8457 (下) を使用した、Z-VAD (20 μM、その他の化合物の30分前に追加、+)、ヒトTNF-α (hTNF-α、20 ng/ml、7時間、+)、SM-164 (100 nM、7時間、+)、ネクロスタチン-1 (Nec-1、50 μM、7時間、+)。 |
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Phospho-RIP3 | RIP3の活性化が、MLKLのリン酸化を誘導します | |
Phospho-RIP3 (Ser227) (D6W2T) Rabbit mAb #93654: 未処理 (-)、あるいは、次に示す処理の組み合わせを施したHT-29細胞を、ウェスタンブロッティングで解析しました。Phospho-RIP3 (Ser227) (D6W2T) Rabbit mAbを使用した、Z-VAD (20 μM、その他の化合物の30分前に追加; +)、Human Tumor Necrosis Factor-α #8902 (hTNF-α、20 ng/ml、7時間; +)、SM-164 (100 nM、7時間; +) リン酸化特異性を確認するために、転写膜は未処理 (左) またはCIP (calf intestinal phosphatase、右) で処理しました |
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MLKL | RIP3下流のタンパク質標的 | |
モックをトランスフェクトされた (-) 、またはMycタグが付いた全長ヒトMLKLタンパク質 (hMLKL-Myc; +)を発現するコンストラクトををトランスフェクトされた (+) 293T細胞の抽出物を、MLKL (E7V4W) Mouse mAb (上) またはGAPDH (D16H11) XP® Rabbit mAb #5174 (下) を用いてウェスタンブロッティングで解析しました。 |
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Phospho-MLKL | MLKLのリン酸化は、ネクロプトーシス細胞のマーカーであり、細胞膜に小孔を形成します | |
Phospho-MLKL (Ser345) (D6E3G) Rabbit mAb #37333: 20 μM Z-VADで事前に30分間処理し、その後、100 nM SM-164とMouse Tumor Necrosis Factor-α (mTNF-α) #5178 20 ng/mLで2.5時間処理したL-929細胞を、Phospho-MLKL (Ser345) (D6E3G) Rabbit mAb (緑) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で観察しました。DNAをPropidium Iodide (PI)/RNase Staining Solution #4087 (赤) で染色しています。 |
パイロトーシスのマーカー | パイロトーシスマーカーの説明 | |
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インフラマソームの形成 | パイロトーシスは、インフラマソームの形成によって特徴づけられます。インフラソームのマーカーはNLRP3です | インフラマソームシグナルのインタラクティブパスウェイ >> |
Caspase-1の活性 | Caspase-1の切断は、活性化のマーカーとなります。活性化したCaspase-1が、IL-1βとGasdermin Dを切断します | |
Gasderminの切断 | パイロトーシス中にGasdermin-Dの切断が生じ、小孔の形成に至ります |
パイロトーシスのマーカー | パイロトーシスマーカーの説明 | |
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インフラマソームの形成 | パイロトーシスは、インフラマソームの形成によって特徴づけられます。インフラソームのマーカーはNLRP3です | |
Caspase-1の活性 | Caspase-1の切断は、活性化のマーカーとなります。活性化したCaspase-1が、IL-1βとGasdermin Dを切断します | |
Cleaved Caspase-1 (Asp296) (E2G2I) Rabbit mAb #89332: Cleaved Caspase-1 (Asp296) (E2G2I) Rabbit mAb (上)、あるいはCaspase-1 (E2Z1C) Rabbit mAb (下) を用いて、未処理 (-) あるいはLipopolysaccharides (LPS) #14011 (50 ng/ml、4時間) で処理した後、Nigericin (15 μM、45分) (+) で処理した、マウス骨髄由来マクロファージ (mBMDM) からの細胞あるいは培地からの細胞抽出物wを、ウェスタンブロッティングで解析しました。 |
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Gasderminの切断 | パイロトーシス中にGasdermin-Dの切断が生じ、小孔の形成に至ります | |
Cleaved Gasdermin D (Asp275) (E7H9G) Rabbit mAb #36425: パラフィン包埋ヒト乳管がん組織を、Cleaved Gasdermin D (Asp275) (E7H9G) Rabbit mAb を用いて、免疫組織化学染色で解析しました。 |
ネクローシスのマーカー | ネクローシスマーカーの説明 | |
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HMGB1 (High mobility group protein B1) | アポトーシス性ではなく壊死性の細胞死の際に細胞外環境に放出される核タンパク質 | |
HMGB1 (D3E5) Rabbit mAb #6893: 様々な細胞株からの抽出物を、HMGB1 (D3E5) Rabbit mAbを用いて、ウェスタンブロッティングで解析しました。 |
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乳酸デヒドロゲナーゼA (LDHA) | 壊死性の細胞死の際に細胞外空間に放出される細胞質酵素 | |
LDHA (C4B5) Rabbit mAb #3582: LDHA (C4B5) Rabbit mAbを用いた、様々な細胞株からの抽出物のウェスタンブロッティング解析。 |
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Interleukin-1β (IL-1β) | 壊死の際に放出される炎症促進性サイトカイン | |
IL-1β (D3U3E) Rabbit mAb #12703: 未処理 (左) あるいは500 ng/ml LPSで2時間処理 (右) した THP-1 細胞を、IL-1β (D3U3E) Rabbit mAb (緑) を用いて、免疫蛍光化学染色で解析しました。アクチンフィラメントは、DY-554 phalloidin (赤) で染色しました。 |