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神経細胞マーカーとグリア細胞マーカー

ニューロン (神経細胞) は神経系を構成する細胞であり、電気信号 (活動電位) を化学物質に変えて情報の授受を行う性質を持っています。ニューロンは導電性で、この情報を近傍あるいは遠隔の細胞に送信します。MAP2NeuNニューロフィラメント-Hニューロフィラメント-L、ニューロフィラメント-Mなどの発現を観察することで、成熟したニューロンを特定することができます。

いくつかの研究成果から、凝集したタンパク質や長期間の刺激が細胞にとって有害な慢性炎症の原因となり、アルツハイマー病 (AD)、パーキンソン病 (PD)、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) などの神経変性疾患の発症に関与すると考えられています。

ニューロンのほか、アストロサイト (星状膠細胞)、オリゴデンドロサイト (乏突起膠細胞)、ミクログリア (小膠細胞) といったグリア細胞 (膠細胞) が神経系を構築しており、これらによって適切な脳機能が保たれています。

MAP2免疫蛍光染色

ラット小脳凍結切片を、MAP2 (D5G1) XP® Rabbit mAb (緑) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。DRAQ5 #4084 (蛍光DNA色素) は、青の疑似カラーで示しています。

NeuN免疫蛍光染色

マウス海馬 (左)、大脳皮質 (中央)、小脳 (右) の各組織を、NeuN (D4G4O) XP® Rabbit mAb (緑) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。アクチンフィラメントは、DyLight 554 Phalloidin #13054 (赤) で染色しました。DRAQ5 #4084 (蛍光DNA色素) は、青の疑似カラーで示しています。

ニューロフィラメント-H免疫蛍光染色

マウス小脳組織を、Neurofilament-H (RMdO 20) Mouse mAb (緑) とCalbindin Antibody #2136 (赤) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。DRAQ5 (蛍光DNA染料) は、青の疑似カラーで示しています。

ニューロフィラメント-L免疫組織化学染色

パラフィン包埋マウス脳組織を、Neurofilament-L (C28E10) Rabbit mAbを用いて免疫組織化学染色し、解析しました。

ミクログリア

ミクログリアは骨髄由来の細胞で、発生中に中枢神経系に遊走する免疫細胞です。ミクログリアは多機能で、胚発生期に形成される複雑な神経ネットワークの剪定、シナプス可塑性の補助、神経伝達物質の放出に応答することで、興奮毒性を抑制する機能などがあります。また、マクロファージ様の性質を持ち、神経系に急性感染や外傷に対する炎症反応を備える機能もあります。ミクログリアを特定する特異的なマーカーには、Integrin alpha M (ITGAM/CD11b)、細胞表面糖タンパク質F4/80CD45、iba1、TMEM119があります。

疾患状態では、疾患関連ミクログリア (DAM) と呼ばれる特徴的な遺伝子発現パターン (分子署名) を持つミクログリアがみられる場合があります。DAMは二段階を経て成熟し、それぞれの段階に異なる特徴的なバイオマーカーの発現があります。第1段階では、TREM2 (triggering receptor expressed on myeloid cells 2)、ApoEDap12が高発現し、P2ry12やTMEM119 (transmembrane protein 119) の発現が低く抑えられます。第2段階では、Osteopontin (Spp1)、CST7 (cystatin 7) が高発現します。

ApoE免疫組織化学染色

パラフィン包埋ヒト皮膚組織を、コントロールペプチド (左) および抗原特異性ペプチド (右) の存在下で、ApoE (pan) (D7I9N) Rabbit mAbを用いて免疫組織化学染色し、解析しました。

オリゴデンドロサイト

オリゴデンドロサイトは中枢神経系に存在するグリア細胞であり、軸索の髄鞘 (ミエリン鞘) を形成し、神経シグナルの伝導速度を促進します。オリゴデンドロサイトは、以下のようなミエリンファミリータンパク質の発現によって特定することができます:MOG (myelin oligodendrocyte glycoprotein)MAG (myelin-associated glycoprotein)MBP (Myelin Basic Protein)

オリゴデンドロサイトの前駆細胞は脳に存在し、神経回路に損傷を受けた場合に速やかに増殖してオリゴデンドロサイトを補充し髄鞘を修復します。ミエリンの破損やオリゴデンドロサイトの補充が途絶えることで、ミエリンが量的に不足した場合や、質的に機能不全のミエリンが存在した場合に、AD、PD、ALSおよび多発性硬化症 (MS) などの神経変性疾患の発症率が亢進するという知見もあります。

MOG免疫組織化学染色ヒト小脳

パラフィン包埋ヒト小脳組織を、MOG (E5K6T) XP® Rabbit mAbを用いて免疫組織化学染色し、解析しました。

MAG免疫蛍光染色

ラット小脳組織を、MAG (D4G3) XP® Rabbit mAb (緑) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。DRAQ5 #4084 (蛍光DNA色素) は、青の疑似カラーで示しています。

アストロサイト

アストロサイトは、CNSに生じるもう1つの免疫担当グリア細胞であり、脳内に存在します。アストロサイトの特異的なマーカーとして、GFAPS100βがよく利用されます。

神経系におけるアストロサイトの機能には、神経回路の形成と発生の支持 (構造的な支持)、血流の制御 (血液脳関門中の内皮細胞の支持)、シナプス伝達とシナプス機能の支持、エネルギー供給と代謝 (ニューロンへの栄養の供給や、特定の神経伝達物質の合成) などがあります。

アストロサイトの欠損や異常機能は、様々な神経変性疾患プロセスに関与しています。アストロサイトの慢性的な活性化は、ADやHDで見られる病変と類似した病変をもたらします。

神経細胞とグリア細胞の種類と関連マーカー表

神経幹細胞マーカー Musashi Notch1 SSEA1              
神経上皮細胞 E-cadherin HES1 Nestin Notch1 Sox2 Sox10        
シュワン細胞 EAAT1 (GLAST-1) EAAT2 (GLT-1) GAP43 GFAP Myelin Basic Protein NCAM p75NTR S100B    
放射状グリア BLP (FABP7) N-cadherin GFAP EAAT1 (GLAST-1) Nestin Sox2 Tenascin C Vimentin    
ミクログリア F4/80 Iba1 PU.1 TMEM119 ASC CD11b (ITGAM) CD40 CD45 CD68  
恒常性ミクログリア C1qA/B CX3CR1 Cystatin 3 (CST3) P2RY12            
DAM (第1段階)  ApoE DAP12 (TYROBP) TREM2              
DAM (第2段階) Axl Cystatin F (CST7) Dectin-1 (CLEC7a) CD11c (ITGAX) Spp1          
オリゴデンドロサイト A2B5 CnPase MAG MOG Myelin Basic Protein NG2 Olig2 Sox10    
アストロサイト A2B5 ALDH1L1 EAAT1 (GLAST-1) EAAT2 (GLT-1) GFAP Notch S100B      
中間前駆細胞 EOMES (Tbr2) Neurogenin 2 Pax6              
未成熟ニューロン Doublecortin NeuroD1 TBR1 β3-Tubulin            
成熟ニューロン MAP2 NeuN Neurofilament-H Neurofilament-L Neurofilament-M Neuron Specific Enolase (NSE) Tau Thy1 β3-Tubulin UCHL1
神経伝達物質                    
グルタミン酸作動性ニューロン VGLUT1/2                  
GABA作動性ニューロン Neuropeptide Y Penk ADORA2A DARPP-32 GAD1/2          
ドーパミン作動性ニューロン ALDH1A1 FOXA2 GIRK2 Lmx1B Tyrosine Hydroxylase          
セロトニン作動性ニューロン FEV SERT TPH2 Tryptophan Hydroxylase            
コリン作動性ニューロン ChAT                  
神経細胞サブタイプ                    
介在ニューロン Calbindin-Parvalbumin receptors Calretinin-Somatostatin receptors 5-HT3A VIP            
運動ニューロン ChAT HB9 Neurogenin 2 Islet -1/2            
神経上皮細胞 E-cadherin HES1 Nestin Notch1 Sox2 Sox10        
シュワン細胞 EAAT1 (GLAST-1) EAAT2 (GLT-1) GAP43 GFAP Myelin Basic Protein NCAM p75NTR S100B    
放射状グリア BLP (FABP7) N-cadherin GFAP EAAT1 (GLAST-1) Nestin Sox2 Tenascin C Vimentin    
ミクログリア F4/80 Iba1 PU.1 TMEM119 ASC CD11b (ITGAM) CD40 CD45 CD68  
GFAP免疫蛍光染色

ラット小脳組織を、GFAP (D1F4Q) XP® Rabbit mAb (緑) とNeurofilament-H (RMdO 20) Mouse mAb #2836 (赤) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。DRAQ5 #4084 (蛍光DNA色素) は、青の疑似カラーで示しています。

NeuN免疫蛍光染色

マウス海馬 (左)、大脳皮質 (中央)、小脳 (右) の各組織を、NeuN (D4G4O) XP® Rabbit mAb (緑) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。アクチンフィラメントは、DyLight 554 Phalloidin #13054 (赤) で染色しました。DRAQ5 #4084 (蛍光DNA色素) は、青の疑似カラーで示しています。

β3-チューブリン免疫蛍光染色

マウス小脳組織を、β3-Tubulin (D71G9) XP® Rabbit mAb (緑) とTau (Tau46) Mouse mAb #4019 (赤) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。DRAQ5 #4084 (蛍光DNA色素) は、青の疑似カラーで示しています。

ASC/TMS1免疫蛍光染色

マウス脳組織を、ASC/TMS1 (D2W8U) Rabbit mAb (Mouse Specific) #67824 (緑) とAPP/β-Amyloid (NAB228) Mouse mAb #2450 (黄)、GFAP (GA5) Mouse mAb (Alexa Fluor® 647 Conjugate) #3657 (赤) とHoechst 33342 #4082 (青) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。

ミエリン塩基性タンパク質免疫蛍光染色

ラット脳組織を、Myelin Basic Protein (D8X4Q) XP® Rabbit mAb (緑) とSynaptophysin (7H12) Mouse mAb (IF Formulated) #9020 (赤) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。DRAQ5 #4084 (蛍光DNA色素) は、青の疑似カラーで示しています。