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免疫組織化学染色を用いた解析

免疫組織化学染色 (IHC) 実験の目的は、組織構造の空間的状況を維持しつつ、組織内の目的の標的分子を視覚化することです。IHC結果の解析は目視、またはソフトウェアを利用して行うことができます。

サンプルを視覚化する

抗体で標的分子を可視化することで、IHCのサンプルは光学顕微鏡または蛍光顕微鏡で観察することができます。

標的を蛍光色素で可視化した場合、特別な制限が無ければ共焦点イメージングシステムやマルチスペクトルイメージングシステムで観察することができます。解析対象の標的の種類が少ない (すなわち抗体パネルサイズが小さく、1-3種程度) の場合、従来のカメラで良好なイメージが得られます。パネルサイズか大きい (解析対象の標的が4種以上ある場合​) には、マルチスペクトルカメラが必須です。マルチスペクトルイメージングシステムの支援ソフトウェアで、励起/蛍光スペクトルにオーバーラップのある複数の蛍光色素 (および色素原) を区別して検出し、優れた分解能を持つ多重解析が可能になります。

下に示したマルチスペクトルシステムと従来のカメラで撮影された広視野イメージの比較をご覧ください。

IHCマルチスペクトル vs. 従来型

PD-L1, CD3ε, CD8α Multiplex IHC Panel #65713: PD-L1 (E1L3N®) XP® Rabbit mAb #13684 (緑)、CD3ε (D7A6E™) XP® Rabbit mAb #85061 (黄)、CD8α (C8/144B) Mouse mAb (IHC Specific) #70306 (赤) を用いた、パラフィン包埋乳がんサンプルの3重蛍光mIHC解析。青の疑似カラー = DAPI #8961 (DNAを染色する蛍光色素)。

IHCの結果を理解する

免疫組織化学染色における標的に対する特異性を確認するためには、複数の検証ステップが必要です。CSTの科学者は、お客様に特異的な染色像を観察していただけるように、IHC抗体を様々な方法で検査し、個々の抗体に必要な検証を実施しています。

検討すべき項目にはシグナルの強さ、バックグラウンド、適切な局在性が挙げられます。これらは陽性染色と陰性染色の評価に役立つ情報源となります。

CSTのIHC推奨抗体の特異性・正確性の検証方法の詳細は、こちらをクリックしてください。

シグナル強度とバックグラウンド

IHC実験でのシグナル強度とバックグラウンドに影響を与え得るパラメーターは、サンプルの保管から試薬の品質まで多岐に渡ります。

良好なIHC結果を得るために、検証済みの高感度で特異性の高い一次抗体が必要なのは、いうまでもありません。しかし、一次抗体以外の試薬の選択も、IHC実験でのシグナル強度に大きな影響を与えます。それぞれの抗体の最適プロトコールで使用されている、SignalStain® Antibody Diluent #8112、SignalStain® Boost Detection Reagents、HRP標識二次抗体 (ラビット#8114、マウス#8125)、SignalStain® DAB Substrate Kit #8059などをご利用いただくことで、シグナル強度が改善されることがあります。

強力な陽性シグナルを得ることに加え、バックグラウンドシグナルを低減することも重要です。SignalStain® Boost Detection Reagents, HRP (ラビット#8114、マウス#8125) など、ポリマーベースの検出試薬をご利用いただくことで、細胞内在性ビオチン由来のバックグラウンド染色を顕著に低減することができ、結果を改善することができます。また、5% Normal Goat Serum液を、1X TBST #9997、Normal Goat Serum #5425で調製し、一次抗体反応前に30分間、適切なブロッキングを行うことでバックグラウンドが低減することがあります。

IHC PLK1

PLK1 (208G4) Rabbit mAb #4513: #4513を用いたパラフィン包埋ヒト結腸がん組織のIHC解析において、図に示した通り、段階的な試薬の変更によってIHCの結果に大きな差が生じることが示されました。

適切な局在性

IHC解析の主な利点の1つは、適切な細胞の種類や細胞内区画中の局在性など、組織の空間的構造を維持しつつ、標的を見ることができる点です。

適切な細胞や細胞内区画に局在した染色がみられることが抗体の特異性を検討する上では重要であり、CSTはあらゆるIHC検証済み抗体で試験すべき項目であると考えています。適切な局在性が不明な場合は、The Human Protein Atlasなどのリソースや、RNAデータなどの直交アプローチが有効な場合があります。

陽性と陰性結果の判断について

陽性結果または陰性結果を自信を持って評価するためには、シグナルの強度、バックグラウンドおよび局在性など染色から得られる情報を統合して考えることが必要となります。染色の試薬や方法が適切に機能していることを評価するために有効な手段の一つに、IHCコントロールスライドを用いることが挙げられます。

CSTは免疫組織化学染色のコントロールとして、ホルマリン固定/パラフィン包埋細胞ペレットのコントロールスライドをご用意しています。各スライドにはネガティブおよびポジティブペレットが含まれており、各セットには5枚のスライドが含まれています。

CSTのIHCコントロールスライドは、こちらからご覧いただけます。