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免疫組織化学染色 (IHC) とは

免疫染色は、抗体を用いて細胞や組織内の抗原を検出する手法です。免疫組織化学染色 (IHC) は免疫染色の一種で、組織サンプルにおける目的の標的分子を組織構造や空間的状況を保持したまま観察できることが大きな利点です。

免疫組織化学染色 (IHC) による染色:短い定義

染色の種類

免疫染色には、酵素や蛍光色素で標識した一次抗体で直接標的を染色する直接染色と、標識した二次抗体で一次抗体を検出する間接染色があります。CSTはアプリケーションごとに検証を行なった一次抗体を各種蛍光色素で標識したものも製品化しており、これらをご利用いただくことで直接染色を行うことができます。CSTの標識済み一次抗体製品一覧は、こちらからご覧いただけます。

抗原の発現量や抗体のアクセシビリティの問題で、直接染色では十分な感度が得られないことがあります。このような場合、二次抗体を使用して間接染色を行うことで、より高い感度が得られます。二次抗体を用いた染色にも、蛍光色素を用いる手法や、ビオチンベースの酵素標識法など、何通りかの方法があります。CSTはポリマーベースの高感度ワンステップステップ検出法を推奨しており、ラビットIgG、マウスIgGをそれぞれ検出するポリマーベース試薬をご用意しています。

IHC mIHCマルチプレックスオプション

 

IHC染色の例

CSTで行なったIHC染色の例を一部、下にご紹介します。ここで用いた抗体はすべて、目的の抗原を特異的に染色し、信頼性の高い結果が得られるよう、厳格な検証プロセスを経ています。

IHC 13684 PDL1

PD-L1 (E1L3N®) XP® Rabbit mAb #13684: パラフィン包埋ヒト肺がん組織を、PD-L1 (E1L3N®) XP® Rabbit mAbを用いてIHCで解析しました。

IHC 64326 CD133

CD133 (D2V8Q) XP® Rabbit mAb #64326: パラフィン包埋ヒト乳がん組織を、CD133 (D2V8Q) XP® Rabbit mAbを用いてIHCで解析しました。

Immunohistochemistry-IHC-19245-a-Smooth Muscle Actin.png

α-Smooth Muscle Actin (D4K9N) XP® Rabbit mAb #19245: パラフィン包理ヒト類内膜がん組織を、α-Smooth Muscle Actin (D4K9N) XP® Rabbit mAbを用いてIHCで解析しました。染色は、Leica Bond Rx自動染色プラットホームで行いました。

免疫組織化学染色 (IHC) の手順

組織サンプルの調製

組織の採取や保存、固定の方法は、サンプルや解析対象となる標的分子によって異なります。組織の収集と固定プロセスは、サンプルの完全性と実験結果に直接影響します。

ホルマリンなどクロスリンク固定剤は組織の構造的完全性を保存や維持に有効であるため、IHCのサンプル調製によく利用されます。もう1つの選択肢として、サンプルを凍結保存 (冷凍) することで組織サンプルを調製することもできます。リン酸化標的を検出しようとしている場合は、こちらの方が望ましいです。

抗原 (エピトープ) の賦活化

固定剤は、組織サンプルの構造的完全性を保持する一方、クロスリンクが形成されることで抗体のエピトープが覆い隠され、抗体の結合が妨げられることがあります。

固定操作の過程でマスキングされたエピトープを露出させる (抗原を賦活化する) 必要があり、このためにいくつかの方法があります。プロテイナーゼKのようなタンパク質分解酵素を用いた方法、熱処理でクロスリンクした化学結合を切断してタンパク質を解く方法 (HIER:heat-induced epitope retrieval) などです。どちらの方法もエピトープを露出させることで一次抗体のアクセスを助け、IHCによる染色が可能になります。

CSTで最も頻繁に行われる抗原賦活方法はHIERです。しかし、抗体ごとの最適プロトコールを作成する過程で、CSTの科学者は複数の賦活化法を試験しています。抗体ごとのCSTの推奨プロトコールは、IHC検証済み抗体のデータシートに記載されています。

抗体の結合

良好なIHCの結果を得るには、正しい抗体を選択することが最も重要なステップの1つです。CSTのIHC検証済み抗体はすべて、組織サンプルで強いシグナルが得られることが確認されているだけでなく、シグナルの特異性を確認するための厳格な検証プロセスを経ています。CSTのIHCチームの研究者が数多くの抗体を試験しており、IHCアプリケーションに最適な抗体のみを製品として推奨しています。

IHC検証済みの抗体の一覧は、こちらからご覧いただけます。

検出システム

免疫組織化学染色 (IHC) 染色には大きく2つの検出法があり、1) 発色基質を用いた検出、2) 蛍光色素を用いた検出がよく利用されます。発色検出では、CSTはポリマーベースの高感度検出法を推奨しており、この方法では、ビオチンベースの方法でみられる細胞内在性ビオチンの非特異染色を回避することができます。

一次抗体の宿主種に合わせて、SignalStain® Boost IHC Detection Reagent (HRP, rabbit) #8114またはSignalStain® Boost IHC Detection Reagent (HRP, mouse) #8125をお試しください。

IHCポリマーベースの検出

ポリマーベースの検出法は、ビオチンベースの検出法より高感度です。 パラフィン包埋ヒト肺がん組織切片に反応させたSox2 (D6D9) XP® Rabbit mAb #3579を、ビオチンベースの検出法 (左図) またはポリマーベースの検出法 (SignalStain® Boost IHC Detection Reagent #8114、右図) で可視化しました。ポリマーベースの方が感度が高く、より強いシグナルが得られることが分かります。

IHC DAB基質の性能

すべてのDAB基質が同じように機能するとは限りません。 パラフィン包埋ヒト乳がん組織をPhospho-Stat3 (Tyr705) (D3A7) XP® Rabbit mAb #9145を用いてIHCでか解析しました。発色検出には、SignalStain® DAB Substrate Kit #8059 (左図)、他社 (Competitor 1) のDAB (中央図)、またはもう一つ別の他社 (Competitor 2) のDAB (右図) を使用しました。Competitor 2のDABでは、SignalStain® DAB Substrate Kitに匹敵するシグナルが得られていますが、Competitor 1のDABでは、シグナルがかなり弱くなっています。

対比染色

多くの場合、細胞構造を視覚化し、特異的な染色像を明確化するために組織の対比染色を行います。CSTは、核を青色に染めるHematoxylin #14166を用いてサンプルを対比染色しています。対比染色を選択する際は、ご使用の発色剤に適したものを選定してください。例えば、対比染色の色が発色剤の色に酷似している場合、抗体のシグナルが見分けにくくなります。

免疫組織化学染色 (IHC) 染色プロトコール

下のリンクから、CSTの推奨プロトコールと、重要なステップごとにフォーカスした解説をご覧いただくことができます。CSTは検証済み抗体と試薬、製品ごとに最適化したプロトコールをご提供し、お客様が最小限の微調整を行うだけで再現性の高い結果が得られるように尽力しています。

IHCプロトコールビデオを視聴する。プロトコールを閲覧する。

#9を以下にリンクする:https://www.cellsignal.com/contents/resources/protocols/resources-protocols -->